エッセイその61. 家族と英語 ①夫編
我が家は、ニュージーランド人の夫、ミックスの、
もう大人になった娘二人の四人家族です。
一人はもう独立して、近県に移り、現在は三人暮らしです。
夫も夫の友達も、自分(自分たち)のことを「外人」と言い、
娘らも自ら「ハーフ」と平気で言いますが、外では私は気をつけています。
「ハーフ」という映画もありますし、
「ハーフが美人なんて幻想ですから」という本も読みました。
日本の公教育をずっと受けてきた娘たちには、
このへん、いろいろ言いたいことがあるようで、微妙なところですが、
私もいろいろな子供達に日本語を教えてきた立場上、
近年は、まだ座りの悪い「ミックス」を使うことが多くなりました。
夫のハイボールのお供がミックスナッツであるため、
ミックスというたびに、ナッツのことを思ってしまうのが困りどころです。
(外人という言葉ですが、日本語教師としては、「がい・こく・じん」ぐらいに長い?言葉は、出来てほどなく「外人」に縮まったのではないかと思っています。
でも、言われて嫌がる人が多い以上、言わないほうがいいでしょう)
さて、家の中で何語を話しているかという質問をよくいただきますが、
我が家では夫がまあまあ日本語が話せますので、日常語は日本語です。
話題や緊急度によって、英語との間を行ったり来たりします。
子供を叱ったり子供と喧嘩するときは、夫の日本語は丁寧で迫力に欠けます。
娘と衝突して、
「そう言うことは言わないでくださいよ!」
と日本語で言っていましたが、それはたぶん、
「親に向かってその口のききかたはなんです!」
と言いたいのだと思います。
が、めったに怒らないこともあり、なかなかその方面が自然に出てきません。
子供の方から、
おとん! うざいから英語で言え!
(花恥ずかしい乙女ですが)
とか言われて、英語に切り替えたりしています。
夫婦間で経済や、子供がぐれているとか、深刻な話は英語です。
話題により、日常語にあまり登場しない難しい言葉がありますので、自然そうなりますが、夫は在日30年以上、日本語でも、知らない言葉以外の「地の文」は、普通に通じる長い文章が喋れますので、あと一歩なんだけどなぁ、と残念に感じます。
でも、フルタイムの仕事でいつも忙しくしていて、コロナ時代になってからは残業、早い始業はもちろん、土日も仕事をしている夫なので、気の毒で、もっと勉強しなさいとは言いにくい。
私はもともと、夫のグループレッスンの担任の教師だったため、どの辺が弱いとか、つぶさにわかってしまうので、ついシラバスを作りそうになりますが、パートナーに言葉を教えるって、教師であってもできないんですよね。
お互い歳をとり、覚えるより忘れる方が多くなっているので、今からの日本語の勉強はかわいそうかもしれません。
老後の楽しみにとっておきます。
ところで私が初めて夫が英語を話すのを聞いたのが、まだ付き合う前、
夫が催したワイン試飲会でのことでした。
ワインティスティングと言っても、昔ですから、
我が国には、ワインを買う前に味見ができたりするのですが、
今度、好きなワインを持ち寄ってそういうのをしませんか
というお誘いに乗り、数人が集まった中に私もいたのでした。
夫はゆで卵が大好きな男で(その話はまた今度します)、宴が盛り上がったときに、すっくりと畳から立ち上がり、ホームステイのお母さんの妹さんに向かって、
Do you have any more eggs?
と訊いた、それが初めての夫の口から出た英語でした。
学校では英語圏でない人もクラスにいますので、日本語禁止です。
生徒同士も丁寧な日本語で会話しています。
だから夫の英語も聞いたことがなかったのです。
さてその、
えみちゃん、もっと卵ある?
と言っただけの英語ですが、私は
発音いいね。
ということと、
卵が好きなんだね。
ということのほかに、何か、あれ?と 琴線に触れるものがありました。
素敵とか、思っちゃったんでしょうか。
もう忘れてしまいました。
まさか、卵好きの羊くんみたいな生徒と結婚することになるとは。
神ならぬ身の知るよしもないことでした。
おかげさまで、学校で習う英語から もうちょっと先へ、進むことができましたが、
英語と日本語チャンポンの日常は、疲れることもいっぱいあります。
そんなことについては、また書いてみたいと思います。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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