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日本語教師日記44.法則がわかれば怖くない(5)人称代名詞②二人称「あなた」の続き


YOUについて、もう少し考えてみました。

前回は、

・日本語には二人称、外国語の  YOU その他に当たるものがない
・で、「そっちの方の人」を意味する言葉のバリエーションを使っている

という話でした。

日本語は、YOUを言わないために、さまざまな言葉を使っていますよね。

「あなた」と言うと、改まり過ぎ・距離感がある、その他の理由もあり、会話の中では、「名前+さん・ちゃん・様」、また、「先生・お母さん」などの、役割を使うこともごく普通です。

面白いのは、その人がいない場面でも、この呼び方は引き続き使われますよね。

娘:お母さん。お母さんも行く?
母:そうねぇ、お母さんは今日はやめておくわ。(一人称でもある!)

あとで娘たちがお母さんについて話しています。

娘1:今日お母さんも行くって?
娘2:行かないって。お母さんにはお土産を買って来てあげればいいかな?
娘1:そうだね。お母さんの好きな色はわかる?

間違っても、お母さんのことを「彼女」とかは言いません。
もちろん、母娘の関係が不穏だと、「あの人」とか「あいつ」などと、吐き捨てるように言うでしょうが(^_^;)

いつか、すごく面白いものを見ました。
NHKの「おかあさんといっしょ」を見ていたときのことです。

番組の終わりの方で、「おねえさん」が、

(そういえば、どの子のお姉さんでもないのに、
「お姉さん的な、年上女性」であるところから使うこの呼び方。
これも外国人から見ると不思議です)

一人の男の子をつかまえて話しかけました。

お姉さん:ねえ、お姉さんの好きなおにぎりの中身はツナなの。
           「お友達」は?

これは新しかった!

昔から、男の子には、「僕」という一人称を、そのまま「君」に変わる二人称に使って来ました。

男の子が泣いています。
知らないおばさん:あらあら、僕、一人でどうしたの?
男の子:えーんえーん。
知らないおばさん:困ったわねぇ.僕、一人で来たの?

というふうに。

方言ですが、一人称の「ワレ」や 、一人称ではないかもしれませんが、「自分」を、YOUの代わりに使うこともありますよね。

河内のおじさんが友達に:ワレ、達者で暮らせよ。

関西の人(でいいのかな?):
      自分、なにうじうじしとるねん。はよ決めんか自分。

話し手の目の前にいる「その人」のことを、「自分」と呼んでいます。


でですね、話が戻りますが、このときの「お姉さん」は、
「僕」に変わる二人称(として使われる一人称)の代わりとして、
新しく採用されたらしい「お友達」を使いました。

ほら、番組に出演している一般キッズは男の子と女の子がいます。
「君」「僕」に対応する、女の子の呼称に悩んだのでしょうか。

「あなた」では改まりすぎだし、
たまに言われる、「アタシ」はちょっと庶民的すぎる?


経緯はわからないけど、そこにわらわらといるのは、
結局「お友達同士」設定なので、いっそということで、

「あなた」じゃなくて「アタシ」じゃなくて「僕」じゃなくて、

ひとまとめにして、「お友達」と呼ぶことにしたと思うのです。


お姉さん:ねぇねぇ、お姉さんの好きなおにぎりの中身はツナなの。
          お友達は?

(察しの悪い)男の子:(黙っている)

お姉さん:ねぇお友達〜、お友達の好きなおにぎりの中身は?

男の子:(誰のことかと思ったらしく、きょろきょろ見回している)

お姉さん:えとあの、お友達の・・

男の子:え?

周りでは「きょ〜の・おにぎりのなかみは!」という歌が続行中で、
もたもたしていると「間奏部分」が終わってしまいます。

お姉さん困った。

しょうがない、

お姉さん:君の〜、好きなおにぎりの中身はなあにっ?

男の子:・・・う、うめぼし・・・


いやぁ、ハラハラしました。

あの時のお姉さんは確か、茂森あゆみお姉さん。
私は、速水けんたろうお兄さんではなくて、
体操の佐藤弘道お兄さんの方が好きでした。
卒業後、既婚者でいらしたことが報道され、かなりショックでした。

まさか始末書にはならなかったでしょうが、あのあと、
「お友達」に代わる二人称は、NHK「お母さんと一緒」チームでは、
どのように決まったのでしょうか。

大変気になるところです。
今日これからの放送で確認してみようかしら。


次回は、三人称です。




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