見出し画像

エッセイその77.  着物の話(2)海岸で成人式の前撮りの巻

同居していた父方の祖母は、家で仕立て物をする昔の人でしたので、
鯨尺の物さしとか、へらとか、洗い張りの板とか、
そのほか様々、「昭和の暮らし博物館」に入るようなものが揃っていました。
ですので、ウールのアンサンブルなどは 祖母が縫ってくれました。
私が着物にはまる前に早く亡くなってしまい、残念です。

私の母は着物を着ませんので、私は一人で着物を買いに行き、
そのあと着付けを習いに行きました。
最初に習った方法は、器具をたくさん使うもので、
いずれは紐だけで着られるようになりたいなぁと思っていました。

子供が出来てから 全く着物を着ることもなくなっていましたが、
あるとき、娘さんにいかがですかと、友人が振袖を譲ってくれました。
今では珍しい、総絞りのもので、帯もプレゼントしてくれました。

その後何年もしてから長女が、
自分は成人式には振袖は着なくてもいいから、
次の帰省のときに、ニュージーランドで着て、前撮りしたい。
ばあちゃんにも見せたいし、
と言い出しました。

そこで以前からお世話になっていた先生に
恐るおそる 個人レッスンをお願いしたのでした。

それまで私は、なかなか綺麗に着られないことを、
後ろ手に帯を絞めたり、手探りでいろいろやるからと思っていました。

人に着せるなら、その人の周りをぐるぐる回って直せるので、
練習を積めば、振袖の方もいけるかな、というふうに思ったのです。

それは、すごく甘い考えでした。
習い始めてみたら、着物はつるつる滑りますし、
帯は固くて重く、緩まないように締めるのが大変でした。
先生が 毎晩練習しなさいと言って、練習用のボディを貸してくれて、
それをナナちゃんと名づけ ほぼ毎晩練習しました。

最初のうちは、おはしょりはブクブク、
総絞りの帯揚げは もったりして、なかなか決まりません。
やっとできたと思ったら、帯がとんでもなく下の方にあったり、
襟は抜きすぎや詰まりすぎになり、また、つんつるてんに着せていたり。

6回ぐらいの個人授業で何とか着せられるようになりたいなぁ、
と思っていましたが、なかなかうまく着せられるようになりません。

最後には飛行機に乗る数日前に 先生の方から、

心配なのでこれから行きます。

と自宅まで来てくださり、冷や汗をかきながら最後のレッスンを受けました。

先生が、「次女さんの方にも着せてあげたら? おばあちゃんも喜ぶわよ」

と、ご自分の振袖をもう一着貸し出してくださったので、
我が家で一番大きいスーツケースは、振袖関係でいっぱいになりました。

さて、念願の成人式前撮りですが、
親戚に見られながら着せましたので、汗をかき、手も震えました。

見物衆は、義母をはじめとして 当たり前ですが異国の人々です。
なので、手際が悪いのはまあ許されるかなと思いましたが、
それでも写真はあとに残りますので、とても緊張しました。





オークランド市のミルフォードビーチ。
ここが、長女が前撮りをしたいところでした。


画像2

海風が強くて、袂が出ています。


画像3

あちこちの親戚で振袖も姉妹で取り替えながら何回かやってみたので、
一回ごとに少しずつ、なんとかなっていきました。

その3年後、もう2年前になってしまいますが、次女の成人式がありました。
次女は、着物の好きな友達がいまして、お祭りや初詣は着物です。
また、名古屋で有名なリサイクルショップの系列でバイトをしていますので、
自分で見つけて買ってきた、19000円の振袖(新品)を着ました。
髪は本人が自分でなんとかしました。



画像3



会場の小学校が自宅の隣にありますので、朝もゆっくり着せられてよかったです。
意外と忘れていなかったものの、欲を出して立て矢結びに挑戦したら、
なんだか出来損ないのおでんの昆布のような形になり、慌てました。
何回も椅子を使って練習して、なんとか当日に漕ぎつけた感じです。
でも とても楽しかったです。

できればこの後 友達の結婚式などに、どんどん着てもらいたいです。
練習しないとどんどん出来なくなってしまうと思いますので。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
着物のことはまた書いてみたいと思っています。




サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。