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日本語教師日記124.そりゃやめてあげての教材

いつも新しい教材に挑戦している生徒がいまして、
見つけた教材を持ち込み、

この日本語は自然ですか?  使うに値しますか?

と訊いてきます。


ものすごく申し訳ないのですが、

うーむ。

外国の人が作りましたかね?

と、訊くことになります。

あまりにも不自然だからで、日本人なら書けない文章です。

外国人の手による、主に外国や、インターネットで売り捌かれる教材。
日本人によるネイティブチェックを通していないのは、ほぼ確実です。

私にチェックを頼んでくれるなら、片端からお直しをしますが、
そんなことに貴重な時間を費やすことは嫌です😅


今日Sさんが持ち込んだのは、インターネットの無料アプリ。

すごかったです。


翻訳者の間で「原文の透けて見える翻訳は悪い翻訳」と言われています。

これなんか、まさにそれ。

こういうのがありました。

「いくつかは落ちたが、いくつかは立っていた」


わかりませんね。


これは、Some fell, but some still stand.

という英文を訳したものです。

fallは、倒れる、であります。

それを、「落ちる」と訳していますが、私から見たら明らかに、

Some fell, but some still stand.

の、堂々たる誤訳です。


落ちるものは、上から下に落ちてくるもの。

りんごは木から落ちます。

地震の時、天井のパネルも落ちます。


 倒れる  は、根本が地面に固着していて、かつ、立っている状態から地面に向けてフラットに倒れ込むものです。

このツールの例文の、

「いくつかは落ちたが、いくつかは立っていた」

意味をなしていません。

二つの違うものが、いっしょくたにされています。

落ちるに統一して、

・落ちたものもあるが(その同種のもので) まだ落ちていないものもあった。

または、倒れるに統一して、

・倒れたものもあるが、まだ立っているものもある。


ならば良いです。


これ作った人、drop と fall の違い、わかってませんが。


こういうのもありました。


「ホールの上部は明るかった」

はい?

「ホールの上部は明るかった!」

・・・何をおっしゃっているのでしょうか。

わかりません。

天井近くが明るかったと言いたいのでしょうか。

外から見て、建物の天辺近くが明るかった、と言いたいのでしょうか。


「ホールの上部は明るかった」と言われて、

どの辺が明るいのか、どの辺から見ているか、
日本人で、わかる人はいないし、不自然に感じない人もいないでしょう。


なぜこういうことをする?

私が英語を教えるのをやめたのも、ネイティブではないために、
微妙な違いがわからないことがあったからです。


よく、日本の英語の教科書の英語がおかしいとか言いますが、
逆もまた真、全然負けていませんでした。



以前にお話ししたトンデモ教材もそうなのですが、
学習者がわからないからといって、そういうことしていいの?
と思いたくなるような教材がいっぱい。

しょっちゅう、生徒のとんでもない質問に対し、

「それ、誰に言われました? ごめんね、違います」

「それ、外国の人が作った教科書かな?」

と、確認しなくちゃいけないのは、本当に辛いです!



こういうことを教える(在外の、外国人の)日本語教師がいました。

生徒の質問:なぜ、「小さな」「大きな」と、「大きい」「小さい」がありますか?

答え:昔の日本には「な形容詞」がなかったためです。

・・・・先生しっかりしてください!


日本語学校で働く同僚が、

母国でとんでもない教科書や先生に習って、基礎から間違ってから来日する人がいて、直すのに大変です。

と言っていました。
私たちが思う以上に、こういうことが広く行われているのですね。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。