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世界のビッグバンドを巡る旅、今日はドイツ、スイス、オランダ、ロシアに行ってみたいと思います。それぞれに歴史もあり特徴もあり学ぶべき点も多いですよ〜

 はい、ビッグバンドファンです。最近コロナで旅行どころか外にも出られていない、そんな方もいらっしゃいませんか?私はそうです、お腹周りがひどいことになってきてどうしようか悩んでます。というわけで、今日はそんな気分を少しでも変えようと、世界のビッグバンドをリストアップしている「International BigBand Directroy」というサイトがありまして、ここにリストされているビッグバンドを眺めながら旅行気分を味わいましょう、という内容です。

International BigBand Directroyについて

 そもそも「世界にビッグバンドってどれぐらいあるのか?」これ実は正確に把握する術が今のところないんですよね。各国にそれなりに協議会とか団体とかそういうものはあるにはあるのですが、必ずしもそれらが全てオーソライズされているかというとそうでもなかったりして。なので、結局この手のリストアップを試みているサイトはそれなりにあるものの、どうしても漏れがあるというのが現状です。

 例えば、wikipediaにも「List of bigbands」なんてページもあり、
A-Zで並んでいてなかなか網羅されているように見えますが、それでも
「Roy Hargrove BigBand」も「Christian McBride Big Band」も「JAZZ ORCHESTRA OF THE CONCERTGEBOUW」も入っていないとか、そんな感じです。

 逆に言うと、そういう状況なのでマニアな人間にとっては発掘する楽しみみたいなものが残っているとも言えます。それこそ見たこともない聞いたこともないバンドを見つけるだけで「www」と草が生えてしまう、そんな感じです。

 といった前提を踏まえ、「International BigBand Directroy」も漏れは大いにあり、リストにはアマチュアもプロも含めて全部で94バンド上がっていますが、到底そんな数でおさまるわけないので、あくまで一部という話です。ただしこのサイト、国でフィルタをかけて検索することが出来、国毎にどんなビッグバンドがあるのかというのをみれるのは面白いと思いました。というわけでここからは個人的に行ってみたい・見てみたい・聞いてみたい国「ドイツ」「スイス」「オランダ」「ロシア」、この4カ国を巡ってみたいと思います。

ドイツのビッグバンド

まずはドイツです

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Countryのところを「Germany」に設定すると出てきます。

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全部で16バンド出てきました。よく見るとアマチュアバンドやセミプロバンドなんて書かれているものもあります。プロフェッショナルバンドは数えてみると7つですね。SWR Big Bandhr Big BandNDR Big BandWDR Big Bandの4つはいずれも放送局付きのビッグバンドです。それからBig Band der Bundeswehrは「ドイツ連邦軍ビッグバンド」、Airmen of noteと同じように軍のビッグバンドですね。残り2つは首都ベルリンにあるで、一つはそのままBerlin Big Band、もう一つもDeutschen Oper Berlin「ベルリン・ドイツ・オペラ」とベルリンのビッグバンドとなっています。

スイスのビッグバンド

続いてはスイスでございます。

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Countryは「Switzerland」です。全部で18バンドありますね。

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ただ、アマチュアやセミプロの登録が多く、プロフェッショナルは3つです。首都ベルンで活動するそのものSwiss Jazz Orchestra、チューリッヒで活動するZurich Jazz Orchestra、ルツェルンで活動するLucerne Jazz Orchestraと、なんかご当地ビッグバンドみたいな名前になってますね。日本でもTokyo BigBandというプロフェッショナルバンドがあって、ここにも登録されていますが、どうせならFukuoka BigBandとかOsaka BigBandとか、それこそAKBもSKEとかNMBとか出来てご当地アイドルといった形で出てきてましたし、ご当地ビッグバンドいいかも、なんて思ってしまいますね。

オランダのビッグバンド

 3カ国目はオランダでございます。

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 検索で出てくるのは2つでプロは1つ、Northern European Jazz Orchestraだけです。

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 ただ、オランダのビッグバンドといえば日本から見れば少なくともあと3つは無いとマズいですね。1つはブルーノート東京にも来日、早稲田大学ハイソサエティーオーケストラとも共演したJAZZ ORCHESTRA OF THE CONCERTGEBOUW

 それから狭間美帆さんが常任指揮者に就任したメトロポール・オーケストラ

 そして、2009年の東京JAZZにも出演、その後日本を題材にしたアルバムPachinkoをリリース、クラブ界隈でも人気ベンジャミン・ハーマンが率いるNew Cool Collectiveのビッグバンド編成New Cool Collective BigBand

少なくともこの3つは外せないかなと思います。

 そもそもオランダは歴史的にも日本との交流があるのは歴史の教科書にも出てくる通りです。1598年ロッテルダム港を出港した5隻の船団のうち、生き残ったたった1隻、有名なリーフデ号、これが日本に漂流してきた。その船に乗っていたヤン・ヨーステンとウイリアム・アダムス、この2人が地図や航海術、造船術の知識、さらには西洋諸国の戦況に関する情報など、非常に役立つものを持っていたため、時の権力者である徳川家康は彼らを重用、漂着から9年後の1609年にはオランダ船が平戸に入港し、日蘭貿易が本格的に始まることになります。その後は平戸商館の設立や出島の話、蘭学が盛んになったりというのも有名ですよね。
 さらにタイムリーな話で言えば、先週から始まった大河ドラマ「渋沢栄一」、ここでもキーパーソンとして出てくる玉木宏が演じる「高島秋帆」
彼は長崎生まれの砲術家で、長崎でオランダ語や西洋砲術を学び高島流砲術を創始したという人物です。このように実は幕末から明治においてもオランダの存在感は強く、それこそ海外との交渉に当たって当初はオランダ語が
使われていたぐらいだったわけです。その後は特に第二次世界大戦を契機に
日米の関係が強くなり、日蘭の関係を語る機会は少なくなりましたが、
それでも家電メーカーで有名なオランダ企業「フィリップス」ここが松下電産成功の基礎を作ったのをはじめ、長崎の「オランダ村」そして「ハウステンボス」の開園と今でも様々な形で繋がりはあります。

 ジャズという観点でも2001年に行われた日蘭ジャズ週間という企画でオランダのジャズミュージシャンJESSE VAN RULLERをはじめとしたミュージシャンが来日していたり

 そうした下地もあって先ほど紹介した3つのバンド、JAZZ ORCHESTRA OF THE CONCERTGEBOUWは公演だけでなく日本の学生バンドと共演、New Cool Collective BigBandも東京JAZZ出演だけでなく日本を題材にしたアルバムを作ったり

メトロポール・オーケストラに関しては日本人が常任指揮者に就任しています。

 というわけで、オランダはジャズやビッグバンドというところでも日本とは縁浅からぬ関係だということは覚えておいた方がいい気はします。

ロシアのビッグバンド

4カ国目、最後は大国ロシアでございます。

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ビッグバンドは一つあるみたいですね、その名もMoscow Jazz Orchestra。そのままだなぁ。

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 ロシアやその周辺諸国というと、ジャズよりもクラシックの印象が強いですよね。ショパン、チャイコフスキー、亡命はしましたがラフマニノフなんかもそうです。また歴史的に第二次世界大戦以降の冷戦体制の中ではアメリカと当時はソ連ですね、この対立において、文化的な側面、例えばアメリカのそれこそハリウッドの有名な映画でもことある毎に東側の諸国を悪者にするケースは多かった。何かの陰謀が提示されると大抵バックの組織はソ連や西ドイツの組織みたいな、そんな描かれ方が多かったような気がします。

 そういう中で特にジャズやビッグバンドの文脈で忘れてはならない作曲家、それが昨年亡くなられたニコライ・カプースチンだと思います。wikipediaから経歴を抜粋すると生まれは1937年で、1961年にモスクワ音楽院を卒業、その後は1972年まで11年間にわたりオレーク・ルントストレム(英語版)が率いる国立ジャズ音楽室内管弦楽団の一員として旅行する。1972年から1977年までヴァジーム・リュドヴィコフスキーのソビエト連邦テレビラジオ軽音楽管弦楽団に、1977年から1984年までロシア国立映画交響楽団に参加、1980年にはチャイコフスキー記念コンサートホールで自作のピアノ協奏曲第2番を演奏、1984年に映画交響楽団を退いてからは、自作のレコーディングを除いて作曲活動に専念し、多数の作品を生み出し続けた。

 ということで、冷戦真っ只中のソ連で国立のジャズ楽団の一員として演奏旅行したり、その後も軽音楽楽団や映画楽団などに参加したりと、モスクワ音楽院を卒業していながら一貫してジャズを意識した活動をしてきた人です。ビッグバンドとの関係に関してはジャズ評論家「富澤えいち」さんが2019年にヤマハのブログ「Web音遊人」に論評を書かれていますので、そちらから抜粋をさせていただきます。

ニコライ・カプースチンは、1961年にモスクワ音楽院を卒業してから11年間、ジャズ・オーケストラのメンバーとして活動していたという経歴の持ち主だ。つまり、彼のプロとしてのスタートは“ジャズ・ミュージシャン”だったということだ。例えば1964年に発表している「Toccata」(Op. 8)は、ジャズのビッグ・バンドのために彼が作曲したもので、彼自身がビッグ・バンドの一員として演奏しているようすをYouTubeで観ることができるのだけれど、ピアノがジャズをはるかに凌駕するテクニックでプレイされていることを除けば、アメリカのジャズ・シーンに照らしてまったく遜色のない“出来映え”であることに誰もが驚くだろう。ビッグ・バンドといえば、1986年発表、すなわちカプースチンが作曲活動に専念するようになってからの曲「Big Band Sounds」(Op. 46)もそうだ。もともと彼が前記のようにビッグ・バンドで活動していた1961年に書かれたものがベースになっていて、1973年にビッグ・バンドと弦楽器用、さらに1986年にピアノ・ソロ用に編曲されている。これがみごとにディキシーランド・ジャズの香りを漂わせながら、1930年当時のスウィングを彷彿とさせる“ジャズ・ナンバー”に仕上がっている。ちなみに、冷戦時代のソ連では西側音楽に対する統制も厳しかったようだが、スウィング以前のものは許容されていたとのこと。彼のジャズ的な作品にディキシーランドやスウィングの要素が多いのも、そうした時代背景が影響しているのだろう。

 というわけで、カプースチンの紹介が長くなりましたが、 Moscow Jazz OrchestraもMusic of Nikolai Kapustinと題したコンサート、紹介にもありました「Big Band Sounds」を演奏した動画も上がっています。

 ちなみに上記動画は2本とも、中国のピアニストでありジャズミュージシャンとして活動している「A Bu」さんが上げている動画です。

 今、アメリカと中国も政治的対立が激化しているのは既報の通りですが、そういう中にあっても国境を越えて価値を伝えていく、A Buさんももしかしたらカプースチンに自分を被せている部分があるのかもしれないですね。実際チャンネルにアップされている動画を見ますと、ジャズの演奏動画の合間に結構カプースチンの楽曲を演奏している動画もあがっているので。

 というわけで、まだまだ沢山の国のビッグバンドが出てきますが、今日はここまでにしたいと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。よろしければフォローよろしくお願いします。以上、ビッグバンドファンでした。バイバイ〜

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