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多様性の野球~身体障がいとテクノロジー”課題と懸念”

どんどんと野球とはかけ離れた話となってきましたが、ご了承ください。

今回も前回からの続き第3弾、今まで紹介した身体障がいとテクノロジーである”人工神経接続”と”サイボーグ”に関する【課題と懸念】をまとめてみました。


皆さんも”人工神経接続”と”サイボーグ”のお話を聞いて、「えっ、すごい!」と未来への期待感を持つとともに、「えっ、大丈夫なの?」という疑問点も持ったのではないでしょうか。

もちろん私も同じく「う~ん、それってどうなんだろう・・・」という懸念点のようなものを抱きながら番組などを観たりしていました。


そこで私がみたテレビ番組内で、テクノロジーを開発研究している当事者が、私たちが抱く疑問に対してどのように答えていたかのかを今回まとめさせていただきました。


最先端技術やら未知のテクノロジーなどと出会ったとき人は「知らないから怖いもの」と決めつけてしまうところがあります。

そのため、まずは”知ること”から始めて、これらのテクノロジーが普及する未来に対して、私たちはどのような社会を築き上げていくべきなのかを検討することが大事だと思います。


人工神経接続の”課題と懸念”


人工神経接続は、別名「ブレイン・マシン・インターフェイス(Brain-machine Interface:BMI)」とか、「ブレインテック」と呼ばれております。

人工神経接続が目指している世界のひとつに『新たな”脳力”開発の研究』があります。

脳が直接機械を操るといったSFや漫画でみた世界を現実のものとさせようとする研究です。

そして脳を解明するのがAI、つまりAIで脳の力を引き出そうという研究分野なのです。


”脳力”の拡張をどうとらえるべきか?


「AIで脳の力を引き出そうという研究分野である」と聞くだけで、私たちの脳をAIが開発することとは何なのか?何が危惧されているのか?そんな疑問がわきませんか?

<質問>
私たちはどのようにそれをとらえるべきか?

<回答>
牛場潤一さん(慶応大学准教授)

「なかなか難しいところがある。利益安全性についてしっかりと議論する必要がある」

「果たしてこの技術はユーザー・社会に与えるベネフィット(利益)があるのかどうかを真剣に考えないといけない。」

「長期的に使うことで本来の脳が使っている機能に影響が生じるのではという、”安全性の問題”についても考えないていかないと」

NHK番組『クローズアップ現代』「まひした手が動いた!リハビリと脳科学・うつにも」


テクノロジーが心をも左右する?


「人工神経接続で精神をもコントロールすることが可能になる」としたら、どう思いますか?
気分を意図的にあげるテクノロジーによって、心をコントロールすることができるとしたら、あなたはどう思いますか?

<質問>
それって、もはや”私”なのでしょうか?

<回答>
西村幸男さん(東京都医学総合研究所)

それは”私”です。

人工神経接続とは、自分の神経活動から信号をとってきて自分に戻すのが特徴、どうつなごうとも”自分”である。
勉強して頭が良くなる、化粧をしてきれいになる、人工神経接続をつける、これが同じベースで考えられる世の中がきてもいいんじゃないか。

NHK番組『ヒューマニエンス』「"サイボーグ"遺伝子進化との決別か?」


人工神経接続の悪い使われ方とは?


心をコントロールすることができる人工神経接続、誰もが真っ先に思い浮かべてしまうのは、このテクノロジーが悪い使われ方をすることはないのか?そんな疑問に専門家はどう答えるのか?

<質問>
人工神経接続の悪い方向とは?
誰かを思い通りに動かせる、兵士にしてしまうとか。
この研究を進めるにあたって、気を付けていることとは?

<回答>
西村幸男さん(東京都医学総合研究所)

人間が持っている能力と、持っていない能力がある。

持っている能力は自分の意思で自分の体を動かすこと、自分の体に何が起こっているのかを感じること、運動と感覚。
一方、心を制御する能力はもっていない。

自分で元気がないときに元気にする、悲しくなったら元気にしたくてもできない、そういう能力が制限されているということを考えなければいけない。

人工神経接続はそれをやってしまえるが、考えながら迷いながら慎重に研究を進めている。

皆さんがやっている気分転換、そういう感じで人工神経接続を使えたらいいなと。

NHK番組『ヒューマニエンス』「"サイボーグ"遺伝子進化との決別か?」


サイボーグの”課題と懸念”


身体障がいを持った方がテクノロジーによって元の体に戻るといったことはある程度まで想像することはできますが、本来の人間が持っている身体機能よりも、更に機能拡張を目的としたテクノロジーの使い方をしたいと思っている方は、どのような考えを持っているか、知りたくはありませんか?


やはり身体の機能拡張を目指すのですか?


自分自身をサイボーグ化させることを楽しみにしていたピーターさんに、元に戻りたくはないか?という気持ちがあるのか、それとも、やはり機能拡張を優先したいのか?当事者の気持ちを知りたくはないでしょうか?

<質問>
「ピーターさん自身にはどうテクノロジーを使っても、やはり元のようには生きられないというもどかしさはありませんか。」

<回答>
ロボット工学博士のビーター・スコット・モーガンさん

元のように生きたいとは思っていませんよ。10代に戻った気分です。

当たり前と思っていた「常識」を打ち破れるのですから。
例えば、眠りながら食事ができます。夜中にトイレに起きることもない。どんな言語も話せるでしょう。プロの歌手より音域も広い。

つまり、私の生活の質は変わったのです。さらに、わくわくすることがあります。

コンピューターやAIの性能が上がれば、私のパワーも上がるからです。コンピューターは2年で2倍進化します。たった20年で1000倍の進化を遂げているでしょう。
私の生活の質はどんどんよくなっていくでしょう。

NHK番組『クローズアップ現代』「ピーター2.0 サイボーグとして生きる」


サイボーグ化への挑戦に対して反論されたら・・・


ピーターさんの挑戦に疑問や批判の声はきっとあることでしょう。
その場合、ピーターさんはどう反論されていらっしゃるのか気になりませんか?

<質問>
その挑戦が常識からかけ離れていることで、疑問や批判の声も届いているのではないかと思うのですが。

<回答>
ロボット工学博士のビーター・スコット・モーガンさん

「常識は変わります。女性の役割や老い、障害や同性愛についても常識は進化してきました。
常識を打ち破る存在、それが人間です。
そしてどの常識を守るのか、その合意こそが文明社会を作るのです。」

NHK番組『クローズアップ現代』「ピーター2.0 サイボーグとして生きる」


でも、やはり脳をAIが管理する社会になることへの不安を感じませんか?
そのことについてピーターさんはこのように回答しました。

<質問>
わくわくする一方で、不安も感じます。
AIとつなぐことで、脳にダメージはないのでしょうか?
思考がAIに操られるなど倫理的な問題もあるかと思いますが、どう考えますか?

<回答>
ロボット工学博士のビーター・スコット・モーガンさん

私とAIとの関係は、パートナーとの関係に少し似ています。
支配される関係ではありません。あくまでパートナーです。
AIが私をよりよい方向へ導いてくれるなら何の問題も感じません。

むしろ物忘れが改善するならありがたい。
もちろん、AIに意思を無視されたくはありません。

パートナーのようであってほしい。でも自分の意思を、ある程度手放してでもAIと協調したいのです。

NHK番組『クローズアップ現代』「ピーター2.0 サイボーグとして生きる」


進化したサイボーグの未来とは?


SF映画のように考えると、サイボーグによって人間は脳も体もなくなっている未来を思い浮かべてしまいますが、ピーターさんはどのような未来を描かれているのでしょうか?

<質問>
「未来の話をさせてください。AIの劇的な進化によって、自分自身のコピーまで作れる可能性が現実のものとなってきています。たとえ脳や体がなくなっても、あなたをコピーしたAIは生き続けることになります。そのAIは「あなた」だと言えるんでしょうか。」

<回答>
ロボット工学博士のビーター・スコット・モーガンさん

もしあと20年私が生きたなら、AIは私の活動の大部分を担っているでしょう。
認知症の私を助けてくれているかもしれない。
私の肉体が死を迎えても、驚くほど小さな違いしかないと思います。
残されたAIのピーターは、本物の人間と同じです。
慈しむ心や、常識を打ち破ること、そして愛。これらがあれば、生物かAIかなんて、ささいな問題です。

NHK番組『クローズアップ現代』「ピーター2.0 サイボーグとして生きる」


身体障がいとテクノロジーの可能性とリスクについて


”人工神経接続”、そして”サイボーグ化”について課題と疑念をまとめてきましたが、私たちが知らないことや、思い浮かべないことを言う方が異質なわけではなく、その考えをしっかりと聞いたうえで、未来はどのように作ればよいのかを議論すべきなんだなと思っております。


最後に、世界的な理論物理学者ミチオ・カクさんがこのようにおっしゃっております。

可能性とリスクについて、私たちはまずは”知ること”から始めましょう。


理論物理学者ミチオ・カクさん
「将来、危険な宇宙に進出したときも考えるだけでロボットを動かすことができます」
「病気が治るだけでなく、人の減の能力が強化され”スーパーヒューマン”になれるんです」

<質問>
私たちはこの技術をどのように扱えばよいのでしょうか?

<回答>
理論物理学者ミチオ・カクさん

「機械と脳をつなぐこの技術はもろ刃の剣です。例えば独裁者は脳とつながる機械を使って人々の心をコントロールし意のままに操れる兵士を作るかもしれません。さらに社会が分断される危険性もあります。能力が強化された人間とそうではない人間の間で格差が生まれてしまいかねません。実用化される前に倫理的な規制を議論するのが理想的です。」

「技術の進歩は早く予測不可能です。鍵は民主主義的なプロセスです。この技術がどのようなものか可能性と規制の在り方を共有していくべきです」

人間の脳が機械にだんだん慣れてくる、適応してくるが、長期化すると脳を書き換えするわけですから、安全性面での検証は必要。

科学者だけでなく、研究開発が先に進むだけでなく、市民や法律家と一緒に議論すべき。

NHK番組『クローズアップ現代』「まひした手が動いた!リハビリと脳科学・うつにも」

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