もぐら?

幼稚園の園庭はコンクリートだった。しかし、木の近くの地面に横穴があった。コンクリートなのにだ。私が住んでいた地域は、基本はコンクリートの地面で、公園の地面が土であっても、すぐにコンクリートに当たる。土としてほれるところは、公園の砂場か木が生えている土くらいだった。それらでもスコップで掘れば、必ずコンクリートに当たった。

コンクリートに穴が開いている。私には不思議で仕方がなかった。幼稚園の園児も私と同じように穴を不思議がった。この園児は、私は全く知らない。園児が穴に木の枝を入れると、「食べられた!」と叫ぶ。しかし、私には食べられたようには見えない。次にその園児は穴に手を入れた。すると「何かいる!」と叫ぶ。そのまま園児は、その場から去った。

残された私はやはり不思議を感じる。「本当にこの穴に何かいるのだろうか?もぐらかな?」を思った。そこから私の中では、コンクリートの穴にはもぐらがいると考えるようになった。近くに幼稚園の先生が通った。「先生、この穴にもぐらがいるよ」と私は言ったが、先生は「ハイハイ、面白いね」と言われた記憶がある。

私は小さい頃は会話が苦手だった。何かきっかけを作っては話をしていた。そのきっかけは、本当でも嘘でも良かった。今でもコンクリートに横穴が開いているときは子どもに「あそこにもぐらがいるよ」と言う。しかし、子どもは本当のもぐらの穴を知っているので「ちがうよ」と言われてしまう。やはり話のきっかけは、今でも本当でも嘘でも良い。

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