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そういう様式美/230702



目の前にご馳走があるとして、お腹が減っていて良い匂いがして、手を伸ばせば食べられるのに、まるでそこに何も無いように話すことは可能なのか。

「美味しそうだね」

「良い匂いだね」

「お腹減ったね」

「食べていい?」

そう言いたくなるのが人の常だけど、それをまるで何も無いように振る舞ってくれる男性を好きになる。

すごくお腹が減っても、
すごく良い匂いがしても、
すごく食べたくても、

何も言わないでいて欲しいのだ。



面倒な大人たち


大人の恋愛は面倒で複雑でおかしなものだ。

昔、ドラマを観ていていつもいつも「そこで素直に好きって言えば終わる話じゃん!なんなのこの人たちは!」とよく苛々していた。

まさか自分がそうなるとは思わない30年前の初心(うぶ)な保留。

面倒だと思われるのはそこそこ積み上げた恋愛経験と、そこから学んだ自分なりの教訓があるからだ。
これで経験値が低ければ相手の態度を「そういうものか」と思えるけれど、そうではない場合「あーこの人もこれを言う/やるのね」と自分の過去の情報と一致していく。

そうなると「この人はこういう傾向なんだろうな」とわかってきてしまう。
NGワードや行動ができてしまうのだ。
その琴線が大人の男女には沢山できてしまうから、面倒で複雑になる。

様式美


良い女も悪い女も、良い男も悪い男も知っているということはある意味良くない。
自分の「大丈夫ゾーン」がどんどん狭まる、そうなるともっと選択肢が狭まる。

男性のどこが好きか?と聞かれて最初に出てくるのが「ずっと何もしないこと」に尽きる。

下心を封印する、これに尽きるのだ。

激しい下心は敢えて隠してくれることにとても意味があると思っている。
元々薄いのではなく、激しいのに敢えて隠してくれることを望んでいるのだ。

それが私にとって一番大きな愛情となる。

こちらもわかっている。
この人は激しい下心を持つ人だなぁと思うことがまず大切で、そうしないと好きになれないから、それを持っていてくれることは大切ではある。

だけどそれを敢えて隠して、なんなら全く無いことにしてくれるのが一番求めている状況なのだ。
あるけど、無い。
見えてるけどそこには敢えて触れない。
そんな話もそんな素振りもおくびにも出さない。

そういう様式美。

やな女


あるものを無いように振る舞い、だけど大切だ、好きだという気持ちを伝えるのは正直、経験値の高い男性にとって難易度がとてもとても高い。

なぜなら楽な方法もよく知っているし、それならすぐにどうにかできるということもよく知っているからだ。
合理的で効率的であればあるほど難しい。
それを敢えてしない。
恋愛経験が豊富なのに敢えてしないことが愛情だと思うようになった。

これが紳士、というやつだと思っている。

激しい下心を無いものにしてくれること。

素振りを見せないこと。

だけど、なんとなくお互いわかっていること。

目の前にご馳走があるのに無いように話す、その光景こそ、求めているものだ。

そして、後からその答え合わせをするのも好きだ。

「どうやってまるで何も無いようにしてたの?できたの? 
 ねえ?ねえ?」

シンプルにやな女だ。

大人ってやだ。

だけど、大人にしかできないものかもしれないと思うと、まぁ悪くもない。
今更戻れないし。

世の中には怖い女も怖い男も沢山いるから。

みんな気をつけて。




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