青竹踏み/230724
私はひたすら愛想が良い
愛想が良いし話も上手い
いや口が上手い
※ただし表面上のみ
この愛想の良さと口のうまさでここまで来たと言っても全く過言ではない。
ていうかむしろそれしかない。
中身は特に何も無いし、自分が求めていることなんて、ひとつくらいだ。
最近、自分に課していることは「自然体でいること」で、その自然体が他人からすると「え?」と思うものとはもうわかっている。
だからずっと抑圧してきたし我慢して頑張ってきた。
ちなみにそれは間違った努力なのでそうされている方は一刻も早くやめた方がめちゃくちゃ幸せになれるのでそれは伝えたい。
なんならここまで読んで辞めてもらってもいいくらい大切なことだ。
もう大切なことは言っちゃった。
よく色々悟るけれど、少し前にそれがまたあって、けっこう大きかった。
実践するのはまだ完全にはできてないし、哲学的すぎるのであまり言いたく無い。
まだそこまで変な人とは思われたく無い私もいて、それはそれで社会で生きていくには大切な感覚だともわかった。
ま、そんなこんなでデスクでも落ち着きがない。
動き回らない多動らしく、落ち着いてちゃんと座るととてもしんどくなると気づいた。
だからパニック持ちになったんだとわかる。
学校みたいにずっと座ってる、が致命的にできないらしいとわかったのだ。
居心地の悪さの正体はそれだった。
だらっと座りたいし、足を上げたい時もあるし、ちゃんと座りたい時もあれば、頬杖をつきたい時もあるし、座りながら怠い脚をストレッチもしたい。
自由にしていたい。
みんなそうしたい。
私もそうで、そうしないと具合が悪くなることに気づいた。
どうやって会社を居心地の良い場所にしようか、を課題にしている。
一日の大半を過ごすところはできるだけ快適でなくてはならない。
ストレス源を削ぎ落としたいのだ。
人間関係、無問題
職場環境、無問題
業務内容、無問題
一体何が問題かというと、もう「人がいることそのもの」なのだ。
大前提が問題。
だけどそれでも居心地良くしたい。
みんな良い人だし何も危害を与えないし、むしろ仲良くしてくれようとしてくれるし、とにかく何も問題が無い。無さすぎるほど無い。
あとは私が居心地良くするだけ。
そう思って青竹踏みを先日買った。
ベビースモーカーでもあり健康マニアでもあるのでとにかく健康を大切にしたいわけで、脚がだるくなるのを阻止するのはまず青竹踏みがマストというわけだ。
何時間かすると、スッと立って踏む。
座っていても靴を脱いで脚を青竹の上に。
少し前に出社してから踏んでいると先輩に言われた。
隣だし。
「わ、青竹踏みですか」
「…青竹踏みなんですよ。
乗ってみます?」
「良いんですか!?」
先輩のこういうとこ、大好き。
「先輩は健康だから痛くないですよ」
「…ほんとだ、あんま痛くない。
あ、でもずっと乗ってるときますね」
「そーなんすよ」
今日、昼休みを終えて踏んでいると、別の女性に声をかけられた。
「何してるんですか笑」
「…青竹踏みです。
乗ってみます?」
わざわざ紐のサンダルを脱いで乗ってくれた。
「え、私これ平気かも笑
あ、でもずっと乗ってると痛い」
「そーなんすよね。
地上に降りると気持ちいいですよ」
「…わーほんとだ笑」
冷え性だから、と話しながら首には凍った保冷剤を巻いていたのも指摘されて「いやぁ忙しいですよね、我ながら」と話していた。
なんやかんや喫煙所の知り合いも増えて、「行けば誰かはいる」場所になり、出張から帰ってきた人に「おかえりなさい」と言って、「ただいま」と言ってもらえて、少しずつ居場所を作り始めた。
そしてついに、名刺ができた。
惚れ惚れして眺めてしまう。
人生で初めての名刺。
こんなに嬉しいとは思わなかった。
私はやっと、社会の一員になれた。
40年かかったけど、その分喜びもひとしおだ。
「人生で初めてなんです、名刺」
「えっそうなんですか?
今までは無かったんですか?」
「…無いですね笑」
2年半前まで生活保護だったことも誰も知らない。
障害年金受給者とも誰も知らない。
ちゃんとした会社のまともな仕事が初めてということも、誰も知らない。
知っているのは多分、物怖じひとつせずに突然立ち上がってイヤホンをしてモニターを眺めながら青竹踏みを踏む私くらいだ。
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