千葉一周旅行記_2/2300601
2023年5月25日23時頃
ホテルの廊下が監獄のようなそれ。
暗いからわからないけどだいぶバブリーな大きなホテルで、古いけど悪く無い。
ただ、こわい。
普段、夜中3時だろうと散歩するけれど実はめちゃくちゃ怖がりだ。
ホテルに一人は平気だけど、ホテルそのものが広いし廊下は監獄だし、オフシーズンだからか客も少なく廊下は監獄。
部屋は広すぎるだけで平気だけど外がまじこわい。
「意識したら怖いから意識しないようにしないと!」と強く意識していた。
やはり田舎は暗い。
物理的に暗いし、そもそも田舎自体の閉塞感がとても苦手だ。
その度に友達は「日本の8割はこんなもんだぞ」と嗜める。
波の音は聴こえるけど何も見えないし蛙らしきものがずっと鳴いている。
しかもなぜかホテルはリゾート仕様の天井の高いツイン。
余っていたらしくシングルで予約したのに気を利かせてくれたのか、ツイン。
こわい。
露天風呂と展望風呂があるけれど時間的にギリギリだし、何より外が怖い。
あと廊下が監獄。
さながら夜の学校の廊下。
私は3階、喫煙所は1階。
だだっ広い部屋に一人、
だだっ広いホテルは人がおらず暗い。
こういう時はこうするしかない、と思って電話した。
「なんだよあいつどーしたんだよ」
親友である。
「は?ツインであいつは車中泊なの?
入れてやれよ。
何もなくても一晩過ごせば親睦が深まって仲良くなれるだろ」
その、小学校の先生みたいな発想やめてくれ。
私もそうだけどどうして君も妙なところが純粋なのだ。
それに充分仲は良いのでこれ以上仲良くならなくていい。
「恋人とも眠れないのに友達と眠れるわけないし部屋にいると気を遣うからやなの。
それに友達でも密室はむり」
死ぬほどわがままなので可及的すみやかに殺してほしい。
親友は私が異常に怖がりなのを知っている。
知った上で本気で怖がらせてくるので絶対に怖いということは言わなかった。
悟られたら最後。
これだから人は信用できぬ。
2時頃、最後にタバコを吸おうと思って電話をしながら喫煙所に向かった。
3階から1階。
廊下は監獄。
少し開いたドアからは暗い階段。
廊下は監獄。
エレベーターだけ妙に明るい。
廊下は監獄。
だだっ広くて、人がいない。
でも、話していれば大丈夫なのだ。
話していてさえすれば怖くなんかないのだ。
話していれば防御も攻撃もカンスト。
こんなに怖がりの癖に大胆なことをしたがる。その上、迂闊で呑気で愚かだから、電波が悪くて電話が切れる可能性なんて考えない。
イヤホンが大きい音を立てて電話が切れた時に初めて、その可能性に気づく。
カンスト装備を取ると赤子になる。
静寂が走った。
静寂がうるさい。
怖い。
心臓がバクバクする。
エレベーターに乗るから電話もできない。
人一人いない。
おちつけ
おちつけ
おちつけ
深呼吸
深呼吸
中身は赤子だけど外身は熟成の40だからがんばりたい
1階に着いて電話をかけると「おう」と気の抜けた返事が帰ってきて心底安心したけど、怖さを気づかれないように平静を装った。
その刹那、隣の棟に続く廊下、隣の棟にある目的地であった喫煙所、そもそも隣の棟そのものの電気が全て消えていることに気づいた。
「…電気消えてる吸えない。
…でも誰もいない」
「だからってそこで吸うなよ、絶対吸うなよ。
そーゆーことする奴だからダメなんだからな保留は。
吸うなよ、そこで。
そーゆー奴のせいで世の中は厳しくなる」
言い当てられたのと怖いのとで「ははっ」と言った瞬間、上ずった声で私の恐怖を見抜かれた。
「…そーいやさぁ笑
俺この前観たホラー映画でさぁ笑
あの…笑 首がさ…笑
「やだ!やだ!
本気で怒るから!
やだ!!!!」
「いや、この前の…笑
血液が…笑」
「いやだぁ!!!!!
やだ!やだ!いうな!」
ハイエナかよ。
電話の向こうから高笑いが聞こえる。
そう、こいつはそういう奴。
普段全く笑わないのに私のこういう時にめちゃくちゃ笑う。
爆笑ってこれなんだ、の爆笑。
「まじで怒るからまじで怒るからそしたらもう電話しないし会わないしもう怒るから絶対なにもいうな!!!!!!
なにも言うなよ!
まじでおこるからこわいからいうなよほんとにふざけんな!!!!」
目に涙が溜まるほど怒った。
笑い声が聞こえている。
部屋に着いて安心していると
「毎回毎回それだったら行くなよ笑」
わかっている。
でも、挑戦してみたいのだ。
挑戦するのは自由だから。
旅のInstagram→@zangyo66
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