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千葉一周旅行記_0/2300601




千葉県は広かった。

母なる海



千葉も広いし海も広い。
私は水が怖いくせに海がとてつもなく好きで、誰かに「どこ行きたい?」と聞かれたら「海!」と元気よく即答できるほどに海が好きだ。

この「何したい?」「何が欲しい?」「何が好き?」さらには「誰が好き?」みたいな、主体性を問われる質問が本当に苦手だ。
シンプルに答えが無いから。
即答できるようにあらかたの答えは用意しているけれど、会話が円滑に進むためのもので実はなんとも思っていない。
当たり障りが無い、会話が広げやすいワードであればなんでもいい。

その姿は幼稚園の誕生日会で「将来の夢は?」と聞かれて「ケーキ屋さん!」と答えていた4歳の私と変わっていない。
当たり障りなく大人もほっこりする答えが必要だと思ったからだろう。

私には主体性が全く無いのだ。
私がどう思うかなんてどうでもいい。

ケーキ屋さんになりたいと言いたかった頃


2023年5月24日夜

決まっているわけではないけれど、いつも海に連れて行ってくれる友達がいる。
「海!」と連絡すると忙しくなければ海に行けるシステムになっている。
オールだったり、昼だったりだったけれど、今回は前乗りらしい。

友達は釣りガチ勢で、前日も泊まりで釣りに行っていたらしく、本人からすると散歩するような感覚だった。
行き先も館山あたり、くらいの情報でざっくりとしていた。

私は悩んだ。

私からすると館山だってグレイトジャーニーなのだ。
2年前に働いていた美容院の社員旅行で九十九里は行ったけれど、途中で発作も出たし、すごく疲れたし。
24時間前くらいに突然決まったし、何も心の準備ができていなかった。
ホテルだって探していない。
友達は車中泊するらしいけれど、私は嫌だし、そもそも恋人とだって眠れないのにそんなことはできないししたくない。

何よりも、私には恋人がいる。
一ヶ月会ってないけど一応、いる。

なので一度、断った。
すごく葛藤した。

でも海に行きたい。
全てを洗い流してしまいたい。

何もなくてもサシで男性と会わないポリシーなのに、割り切れなさすぎるこの気持ち。
自分のポリシーに反する判断を迫られて悩んだ。

親友に話すと

「とりあえず行け。
 とりあえず行って釣ってこい。
 雑念が取り払われるから。
 今のまま家にいたらもっと精神的に悪化する。
 宿とか心配事とかとりあえずどーでもいいから釣りしてこい」

当日、親友に背中を押されたことを友達に伝えると、友達は「相変わらずさすがだなぁ笑」と笑っていた。

この2人がここまで私をどうにかしようとする連携プレイには今回色々と驚かされた。
それくらいに私は弱っていたんだと思う。
自分のポリシーを曲げてまで、そして頑固な私のポリシーを友達が捨てさせるほどにどこか危なかったのかもしれない。

自覚が無いのが一番危ない。

しかしこの2人は本人ら曰く水と油なので交わらないらしい。
お互いの存在もよく知っていて、仲良くなれそうなのに私はそれがとても寂しい。

温度調節の上着、着替えの服に下着、スマホのバッテリー、最低限の化粧品、あれこれ。

普段の荷物はとても少ないのに泊まりになると増える。
おそらく「旅先でも同じ暮らしをしたい」が強いから。

旅ってもっと計画立ててワクワクするやつじゃなかったっけ…?
こう、突然決まるものなの…?

発作は怖いし準備したい性格だし、ポリシーだって曲げたくない。

考えれば考えるほど、考えすぎてどうでもよくなってきた。
よくある。
よくあるし、沢山考えてこうなる瞬間を待ってもいる。
論理的に考えて考えて、最後はその中から感情で選ぶのだ。

発作?
知らん。

準備?
最悪スマホのバッテリーさえあればどうにかなるじゃん。

ポリシー?
役に立たない上にそれが私を苦しめているとしたらそんなもの、クソくらえだわ。

「わかった、いく」

もうどうにでもなれ、と本気で思った。

想像と現実はだいぶ違うという教訓を40歳にして再び学んだ日だった。

旅のInstagram→ @zangyo66

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