エベレストより高い山

 エベレストより高い山、というタイトルから何を連想しただろうか。常識として世界で最も高い山はエベレスト、という知識は多くの人々に共有されている。だがエベレストより高い山が存在しないわけではない。
 まずは火星のオリンポス山。ふもとからの高さは27,000mでエベレストの3倍以上ある。地球でも海抜ではなくふもとからの高さで言うと、ハワイ島のマウナケア山が10,000mを超える。ハワイ島全体が火山で、山体の大部分は海面より下にあるからである。また地球は赤道の方がほんの少し膨らんでいるので、地球の中心からの距離で見ると、エクアドルのチンボラソ山が最も高くなる。

 ところで僕がここで語りたかったのは、それらの山のことではない。子どもの頃に読んだ本に出てきた山のことである。
 小学2年生の時、世界の不思議に関する本を読んだ。モアイが超古代文明の産物だとか、ナスカの地上絵は宇宙船の発着基地だったとか、そんな話が載っていたのだと思うのだが、その中で他の類書では読んだことのない記事があった。
 中国の奥地にエベレストより高い山がある。それが最初に発見されたのは、飛行機がその上空を飛んだ時だ。雲の中を飛行していたパイロットは、充分な高度をとっていたにも関わらず、突然あらわれた山肌にぶつかりそうになった。慌てて10,000mまで上昇したパイロットが確認すると、すぐ下に山頂が見えた。
 その後、政治的、地理的な障害を乗り越えて、測量を目的とする探検隊が山のふもとまで辿り着き、測量を開始。1回目、2回目とも9,000mを超える数値が出たが、悪天候のため3回目以降の測量を断念。少なくとも3回は測量しなくては公式の記録とならないため、確実にエベレストより高いと思われる山が、中国の奥地で多くの人には知られないまま眠っている。
 以上が記憶にある内容である。

 大人になってからこのことをふと思い出し、少し気になった。この手の本は同ジャンルの類書からの引用が多く、何冊も本を読んでも同じ話ばかり書いてある場合も多い。ところが好きで結構この手の本を読んでいるにもかかわらず、この話は他の本で見かけることがなかった。
 ところが何かのまとめサイトで、世界の高峰についての解説記事があり「かつてはエベレストより高い可能性があると考えられていた」という記述を見かけた。確かにエベレストより高いかもしれないと考えられていた山はあったのだ。
 そこで少し検索してみると、なんとWikipediaには「世界最高峰と考えられていた山」という項目がある。その項目で中国にあるのは2つ。それを両方見ると・・・。

 間違いありません。僕が子どもの頃に読んだ記事の山は、アムネマチンという山です。

 細部はだいぶ違いますが、飛行機のエピソードもあります。

 印象的な飛行機のエピソードが作り話の可能性が高いとか、実際の高さは6,282mだとか少々がっかりする情報もあったが、子どもの頃の印象的な記憶に再び出会って確認できたのは、なかなかに感動的な体験だった。それと同時に子供向けのオカルト本だと思っていた本が、もう少し真面目な本だったのではないかと、書名も著者名もわからない本の著者に申し訳ないような気分になったりもした。

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