2021.7.31. 溺れていくときの詩と歌

2021.7.31.(土)


海底


私を離さないでと
私が言っている
es でもエゴでもない私が
それは無理な話で
もう離れてしまって
そこにないものをどうやって
離さないでいられるのか
それでも歩みだすことが
それでも生きようとしなければ
それでも動き出さなければ
必死になっても
滑り落ちてゆく


深海の底で息の泡沫を吐いて


空の青さに混ざり解けてゆくように


意識を手放すように


私は離れて行ってしまった


私を留めていて
電子音と壊れかけの空調と高架道路の猥雑な音の森
卑猥な雑踏と胡乱な人込みの音の壁
光 光 光 光 で頭をくらますモニタの世界
それでも歩みだす
それでも生きようと
それでも動き出さ
必死に
滑り落ちて


私よさらば
脳と髄の身体の綱引きに
上と下は綺麗に裂けて
目の血走りは光の刺し傷
音によって脳は震えて
言いようのない脱力に疲弊する
それでも
それでも
それでも
必死に
滑り


私を愛して
甘さに体を浸して
白の中に身を漬け込み
細胞を完備に浴して
枯渇に苦しみ
空しさに泣きはらし
求めることに固執する
それでも
それでも
それでも


どこかでなくしたものを拾い上げて
どこかで失った私は
またどこかで拾える
そんな慰めの言葉でごまかしたい


海の上の太陽の光が見える
私は其処に在るのだろうか
それとも沈んでゆくのだろうか
今はただ
漂うだけ
手を伸ばすことを
やめていないだけ




一人称の空虚さは
es の可変性に埋められただろうか
エゴの語の持つ es の名は
どこかへ行った私の心



衝突と眩暈のダンス


ふるえる足の千鳥足
ふるえるのんどのビブラート
ふるえる脳みそ置き忘れ
酒を呷った日のように
衝突眩暈に脳震盪
いちにっさんいちにっさんいちにっさん
いちにっさんいちにっさんいちにっさん
息も絶え絶え足はフレフレ脳は今にも破裂しそう


チカチカ小鳥とチャチャチャの午後は
ゲロ吐く味の唾液と胃液
目ン玉抉れた紳士のダンス
どこかに忘れた日のように
激突骨折脳震盪
アン・ドウ・トロワ アン・ドウ・トロワ アン・ドウ・トロワ
アン・ドウ・トロワ アン・ドウ・トロワ アン・ドウ・トロワ
息は吸えない足はもうない脳はそろそろ啜り終え


クラックラのヘドロのワルツ
蕩けた脳みそこぼしながら
首無し男の素敵なダンス
いつかの栄光最期の輝き
消滅爆発脳漿散る
ワン・ツー・スリー ワン・ツー・スリー ワン・ツー・スリー
ワン・ツー・スリー ワン・ツー・スリー ワン・ツー・スリー
息はなく 脚も無く 脳も無く
塵は塵に 灰は灰に

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