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海外のナッジ実践事例②:ウィルス対策(手洗い促進ナッジ)

このシリーズでは、海外のナッジ実践の最新事例をお伝えします。今回は、ウィルス対策のナッジ事例を3回に渡って紹介します。

2回目の今回は、「手洗い促進ナッジ」をご紹介します。

ナッジとは、自分からその行動をやりたくなる環境づくりをすることで行動の変化をサポートする手法です。ウィルス対策として求められる社会的距離(ソーシャルディスタンス)をとるためには、人々の行動変容が不可欠ですが、人との距離をあけたり、外出しないようにするというのは、平常時にはなかなかないこともあり、規範が明確に共有されていません。つまり、周りの状況をうかがって、やっている人がいれば自分もやるけど、周りがやっていなければやらない、という心理に陥りやすい状況でもあります。その壁を越えるために、ナッジが役に立ちます。

テーマ2:手洗い促進ナッジ

手洗いはウィルス対策の基本。それも、ちょっと手を水で濡らす程度では効果がなく、ウィルスをしっかり洗い流すための適切な洗い方や時間があります。また、手洗いと一言で言っても、行動プロセスを考えるといくつかのステップに分けられます。そのそれぞれに働きかけるナッジの例をご紹介します。

今回は、手洗いの一連のプロセスを、次の3ステップに分類しました。

Step 1:手洗い場に行く → Step2: 石鹸で隅々まで洗う → Step3: 20秒以上洗い流す

①手洗い場に行ってもらうためのナッジ

手を洗うためにはまずは手洗い場に行ってもらう必要があります。外出先から帰ってきて、あるいは食事の前に、本当なら手を洗わなくてはいけないけど面倒でつい素通り・・・。そんなときにはこのように自然に導くナッジはどうでしょうか。

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奥は子供用のトイレ。トイレから出てきてそのまま手洗い場である水のタンクに続く黄色い足跡がペイントされており、手洗い場に自然と足が向くナッジです。

そしてこちらは、本来見えないウィルスを可視化するシールをドアノブ等に貼ることで、なんとなくこのドアを触った後に手を洗いたい気持ちにさせます。どちらも視覚的なナッジです。

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上記2点の画像出典 https://www.forbes.com/sites/alineholzwarth/2020/03/25/handwashing-with-behavioral-science

また、こうした嫌な気持ちを起こさせるナッジは男性に効果的で、女性には石鹸でウィルスに効果があることを伝えるナッジが効果的であったというエビデンスもあります。つまり、対象者によって何がより効果があるかは異なる場合もあるので、使い分けすることでさらに効果を高めることもできます。


②石鹸で隅々まで洗うためのナッジ

無事に手洗い場まで来たら、次は、石鹸を使って隅々まできれいに洗ってもらう必要があります。

イギリスのナッジユニットが世界各国から7つのポスターを選んでオンライン調査により比較し、どのようなポスターがきちんと手洗い方法を伝え、見た人に記憶させることができているのかを検証した結果、最も正しい手洗い方法を伝えていたのが下のポスターです。他のものよりも、イラストが大きく、字が少ないことが特徴だったそうです。

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画像出典 https://www.bi.team/wp-content/uploads/2020/03/BIT-Experiment-results-How-to-wash-your-hands-international-comparison.pdf

この調査では、さらに属性別に効果検証をした結果、高齢者よりも若い世代が、女性よりも男性の方が指示を記憶していなかったという結果になっています。

このように、改善のための効果検証を迅速に行い、次の展開のためのエビデンスにするという取組がイギリスでは行われています。


③20秒以上洗い流すことを思い出させる(リマインドする)ナッジ

ただ20秒をカウントするのは味気ないので、ハッピーバースディの歌を2回歌う、と覚えてもらう。そうするとちょうど20秒くらいになるそうです。それをリマインドするため、洗面台にハッピーバースデイの飾り付けをして、思い出すための手掛かりにするナッジが紹介されていました。


手洗い促進については、すでにある程度さまざまなターゲットを対象とした研究や調査が行われており、そのエビデンスを現在の状況に合わせて活用することも考えられます。その一方で、ウィルス対策の真っ只中にいるという現在の状況がどのように影響するのか、また、対象者のウィルス対策への関心の程度や普段の生活習慣が多様であること、手洗いに伴う行動プロセスが複数にわたっていてボトルネックが異なることが予想されることから、効果のある働きかけを行うには、まずはスモールスタートで迅速に実施及び検証を行い、試行錯誤しながら展開していくのが結局は近道なのかもしれません。

次回は、外出を抑制するナッジについてご紹介します。

この記事は、2020/4/8のYBiT研究会での発表をもとに構成しています。
文責:植竹香織(横浜市行動デザインチーム)

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