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軒先きのベーコンと田舎のパパド

塩とスパイスそして砂糖を混ぜ合わせて固まりの豚バラ肉にすりこみ、何日間も置いた後に塩抜きをして乾燥させる。自家製のベーコンの完成である。ふとした時に作りたくなる。様々なスパイスで味付けを変えることによっていろいろな風味のベーコンができるのでそれも楽しい。

はるか昔、紀元前1,500年ほど前に中国が起源といわれているベーコンは大陸を渡りヨーロッパに伝わり 「bacoun」、「bako」や「bakko」などと呼ばれ方が変わりながらbaconに落ち着き広く食べられるようになったそうである。もともとは動物の背中を意味するものが転じてベーコンになったそうである。中世のヨーロッパではベーコンを各家庭で作り軒先きにぶら下げていたそうである。16世紀の終わり頃にはイングランドのウィルトシャーで大量にベーコンが製造されるようになり次第に世界中で食べられるようになり肉の加工品の代名詞となっていったそうである。

ヨーロッパの田舎の軒先きにベーコンがぶら下がっていたようなものをインドに置き換えて想像してみると田舎のパパドを思い出す。豆などをペーストにして円形に薄く伸ばし干したものである。それを油で揚げたり、焼いたりしてパリパリな状態にして食べるのである。よくインド料理の定食などの上に乗っていたりするので食べたことがある人も多いのではないだろうか。インド全土で広く食されていて地域によってはパパド、パパール、パパダムなどと呼び方も異なる。もともとはベーコンのように各家庭で作られていたものが時代の流れとともに市販やたくさん作られたものを買うようになっていったそうである。パパドの歴史を見てみると紀元前500年くらい前には作られていたといわれている。そしてたくさん作られ流通していく過程には田舎から都市部に出てきた女性たちの活躍があったそうである。各家庭で細々と作っていたパパドをムンバイに住む7人の女性たちが集まり手作りのパパドをたくさん作り、売り始めたのが評判を呼び3ヶ月後には25人になり創業から約70年経つ今では43,000人の人が働いているというから驚きである。

昔から各家庭などに伝わる食の保存方法が新たな仕事に結びつくことはパパド以外にもたくさんあるのであろう。当たり前に機械で作られた食品をスーパーなどで買っているが、人々が都市部から地方に動いている現在、地方の家に古くから伝わる食の保存方法や食べ方が新たに発見され化学変化を起こし新しい商売や職が生まれるかもしれない。保存食は人々の記憶や思いも保存してくれているのかもしれない。


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