占いは、1位か12位の時だけ信じて生きてきた

僕は割と「運がいい」人間だと思う。努力と揉め事が、パクチーとカリフラワーと同じくらい嫌いな、か弱い少女の僕が20年間、なんだかんだで有意義な人生を送ることができたのは、運が良かったからだと思っている。

ちなみに親ガチャだとか地頭だとか、最近話題のシビアな問題ではなく、ガチャガチャの欲しいやつがいっぱい出たとか、テストで勉強したところが丁度出たとか、そういう類の薄っぺらい運の良さだ。

そんな自称 “神様に、愛されてはいないけどおそらく好感は持たれている僕” だが、今年、20年の人生の中で初めておみくじで凶を引いた。待ち人は来ないし、健康は最悪だし、勝負事も勝たなければ、財産も殆ど失くす。
酷すぎて、これ以上に悲惨だと思われる大凶がとても心配になった。なんて心優しい人間であろうか、僕は。

『おみくじは、引き直してもいい。最後に引いたものが今年の運勢だ。』と誰かから聞いたような気もしたので、もう一回引き直して、今年の運勢を中吉に上書きした、つもりだった。


しかし今年は本当にツイてない。

これまでの人生で、「今年はなんかツイてないな〜」と思ったことは、記憶がある限りではない。

電車は全部目の前で行く(気がする)。朝珍しく、2限に間に合う電車に乗れると思ったら、遅延していて来ないし、しっかり2限にも遅れる。乗ってる電車が人身事故に合ったこともある、縦揺れがすごかった。本当にツイていない。

極め付けは、一月の暮れ。僕は図書館でレポートの参考文献を探していた。僕の通っている大学には図書館が複数あり、自分が今いる所ではない図書館に、探している本の在庫があるとのことだった。歩いて15分もかからないので、その図書館に本を借りにいくことにした。


ない、ない、いくら探してもその本が見つからない。僕が借りようとしているのは、FACTFULNESSではない、田中みな実の写真集でもない。日本のサブカルチャーの変容をつついた、いかにも薄汚そうで、陽の当たらないような本だ。15分で借りていく人がいるのか!?

見事に借りられていた。教授が推薦していたわけでもない、「サブカルチャー」と検索して8ページ目に出てくるようなマニアックな本が、15分の間に借りられていた。

よくあるアメリカ映画なら、「oh...shit!」と悪態をついていただろうし、スターウォーズのカイロ・レンなら、ライトセイバーをブンブン振り回してキレていただろう。そして小峠なら「なんて日だ!」と、司書さんから注意されるレベルの音量で叫んでいたに違いない。

しかし僕は普通の大学生なので、帰りの電車でSuikaをかざす力が若干強めになったくらいだった。本当に若干だよ。

他にも、神様に愛想を尽かされたエピソードを並べたらきりがない。しかし僕は意外にも論理的な男だ、まさに女に嫌われそうな男である。ツイてないと思うから、悪いことが目に付くのではないのか?バーナム効果というものではないのか?色々考えた。


桜が咲き乱れる中、僕はひたすら掻き乱れた

世間はコロナウイルスで大騒ぎ。まだ緊急事態制限は出ていない時だった。発熱した。40度近くまで上がった。発熱して二日目、とりあえず病院へ行った。この世で嫌いなものランキングベスト100があったら70位台にはランクインするであろう、インフルエンザの検査をした。そして、生まれて初めてインフルエンザでありますようにと願った。

「コロナは嫌、コロナは嫌。」「そんなにコロナが嫌か?お前は…インフルエンザー!」とハリーポッターの組み分けの場面のような展開を期待した。

世は無情、神はいない、帽子は喋らない。インフル陰性だった。「コロナ、コロナかもしれない。両親の仕事に迷惑をかける、バイト先にも迷惑をかける、賠償金請求されたらどうしよう。」朦朧としている意識の海から福沢諭吉の顔が大量に浮き上がってきた。

幸いなことに、肺炎らしき症状は全く見られなかった。熱は三日目の夜に下がり、医師もコロナではないという判断を下した。念のため僕は、自分の部屋に十日間は隔離。僕が使ったトイレ、洗面所はアルコール消毒、リビングへの立ち入り禁止と、割と快適な軟禁生活を強いられた。

リビングで談笑していると思われる楽しそうな声を聞きながら、一人でご飯を食べるのだけはとても淋しかったため、iPadに映し出される大食いYouTuberと一緒にご飯を食べた。食べる量が、気持ち増えた気がしたし、体重はちゃんと増えていた。

そんな軟禁生活も終わり、普通の自粛生活に戻った。


ところで皆さん、どのような自粛生活を送っていましたか?僕は普段は学生ですが、授業は春学期は全面オンライン授業が決定、バイト先も無期限で休店とのことで、電車に「ツイてないなぁ」と思わせられる人生から、かけ離れた生活を送ってきました。外に出ると言ってもファミマにジャンプとお菓子を買いに行くだけ。それ以外にも、トッポが安くてルマンドが売ってるから、とファミマから50メートルほど遠いスーパーに行くだけの日々を送っていました。


タンポポが綿毛になって飛んでいく中、僕もまた空を飛んだ

発熱した。

おかしい、ずっと家にいた。アクティブに活動している、インスタグラムのストーリーで見るだけの、下の名前も思い出せない小学生の時の友人は元気そうなのに。確かに発熱する前日はドラッグストアにも寄った、日焼け止めを買うために。でもそれだけで?

戦争、コロナ、差別、この世の全てを憎んだ。元より、熱が出ているときは思考が退廃的、暴力的になる人間なのだ。勿論、看病してくれる家族へは感謝の念しか見せていないが。

二日目は熱が39度台まで上がったが、僕は少しバッファを持っていた、普段使わない横文字を使うくらいには。この苦しみ、経験済みである。インフルエンザの苦しみなどは、一年経つと案外忘れているものだが、何せ一ヶ月ペースである。

前回同様三日目の夜に熱が下がり、四日目の朝には、何もありませんでしたと言わんばかりの平熱に戻っていた。

今回は病院へ行っていない。もしかしたらコロナかもしれないし、違う病気かもしれない。念のために僕はまた隔離されている。自室なのか城なのか最早、分からない場所に。十日間は、ドアの前に食事が置かれて、食べて返却するという、絵に描いたような引きこもりを体験し、youtuberと一緒ご飯を食べる。

とりあえず、今自分ができることは、風呂から出た後、すぐに体を拭いて服を着ることを習慣づけることしかない。多分湯冷めしたんだと思うんだよね。家族もみんなそう思っている。しかし、これまでの人生、風呂から出た後はいつも半裸で過ごしていたのに、湯冷めして風邪をひくなんて、2020年は本当についていない。早く2021年になって欲しい。


やっぱりツイてない

発熱したせいで、二週間前から計画していたオンライン飲み会は参加できなかったし、授業は六コマ分初回から飛ぶことになった。あと一日熱が出るのが遅かったら飲み会はできたし、一日早かったら授業を大量に休まないで済んだ。そもそも、三ヶ月以上もあった春休みの最終日に高熱なんて。もっと何もない日に出てくれ。やっぱりツイてない。

しかし、この「ツイてない」と自己完結することで、何らかの不利益を被った際に感じる、苛立ちや悲しみなどの負の感情を、自然と昇華できていることに気がついた。さすがに二度の高熱の時は昇華するどころか、自分が空に昇りそうだったけどね。

とは言っても、今年は本当にツイていない。
いや、逆に何かが憑いているのかもしれない

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