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-第2部,エヴァートンのオーナーシップとリーダーシップ:劣悪なリクルートの代償- 月刊NSNO 増刊号 / エヴァートンFC ブログ


「Part II, Everton’s ownership and leadership, the cost of poor recruitment」
-第2部, エヴァートンのオーナーシップとリーダーシップ:劣悪なリクルートの代償-

月刊NSNO 増刊号 / エヴァートンFC ブログ
 (2021年) 
Written by the esk
Translation by BF

第1部はこちらから↓

the esk氏によるシリーズ連載の第2弾は、エヴァートン・フットボールクラブの採用コスト、財政面や今後の競争についてフォーカスされたものです。

前回の記事ではチームの現状を紐解くため、「優れたガバナンス」とは何かを明確にし、オーナーとそのリーダーシップという観点から、エヴァートンの姿を露わにするものでした。

私たちの愛するクラブは何故躓いているのか、うまく発展できないのか…。クラブの財政を分析し続けてきたthe esk氏の記事を今回も翻訳させていただき、第1部と合わせて一緒に勉強していきましょう。

第2部の原文は下記Twitterリンクより↓


💙

-第2部,エヴァートンのオーナーシップとリーダーシップ:劣悪なリクルートの代償-
2021年11月14日 by the esk


劣悪なリクルートの代償

エヴァートンのオーナーシップとリーダーシップシリーズの第2弾として、財政面に焦点を当てたいと思っているが、通常とは少し違う方法となった。なぜ私たちが投資に見合うだけの発展を遂げていないのか、その理由を明らかにしたいと考えている。

私は、投資家の目を通して財政を見てみたかった。最初に資産の半分を購入し、途中で多額の資金を投入して、最終的にクラブの90%以上を所有する投資家だ。

(モシリは2016年2月にエヴァートンFCの株式およそ半分に当たる49.9%を購入。現在は92%を超える株式を保有している。)

投資家がビジネスを購入するとき、何を買うのか?そう、彼らはビジネスの資産と負債を買っている。会計用語ではないが…
資産とは、製品やサービスを提供することで収入を得るための手段である。
負債とは、その製品やサービスを生み出すための既存、過去、場合によっては将来の未払い費用のことだ。

前オーナーが投資を怠った結果により、クラブは開発のチャンスを得た…かつてプレミアリーグを席巻したクラブにとって、大きな開発を行う最後のチャンスといっても過言ではない。5,400万ポンドの負債、マイナスのバランスシート、貧弱な施設など、資本面で不足していたが、ピッチ内外での人的資本面でも不足していたのだ。

このチャンスを生かすためには、以下のような場面で投資が必要だった。

バランスシートの改善 
- 負債の削減と運転資金の確保

固定資産 
- 最大限の商業的価値と株主価値を実現するためには、新しいスタジアムへの移転が必須となった。また、トレーニングやその他の付帯サービスへのさらなる投資も不可欠であると思われる。

無形資産 
- 選手は、ピッチ上での成功、パフォーマンスの向上による収益の増加、欧州予選の常連化のために、多額の投資を必要としていた。

フットボール・マネジメント 
- クラブの再配置、より野心的な目標、より多くの資金の利用、より優れた選手の採用などにより、フットボール・マネジメントを向上させるための投資が不可欠であると考えられる。

より優れたアカデミーを構築すること。そこから駆け出しの才能をトップチームレベルまで育成したり、収入源として他のクラブに売却できる温室を作る。才能の育成に成功したという証拠を示すことで、より優れた若いタレントの採用を容易にすることができる。

ビジネスマネジメントへの投資。ほとんどすべての新しいオーナーや投資家は、特に開発機会の中で、新しい方向性と経営が必要であると考えている。

モシリの功績は?


ほとんどの財務分析は、損益計算書から始まる。実際、フットボールの財務規則であるUEFAの''ファイナンシャル・フェアプレー''やプレミアリーグの''収益性と持続可能性''のルールでは、クラブの支出と正当な収入との関係を考慮している。

上記リンクはthe esk氏が今年5月に公開した記事。
「利益と持続可能性、そのルールとエバートンの立場」というテーマで分析されています。こちらも関連記事として是非。

念のため、これまでの記録を示しておこう。(2021年6月期の私の予測を含む)。緩和される要素もあるものの、それについては後ほど説明したい。

モシリは、多額の現金を投入することでクラブのバランスシートを改善した。当初はローンだったが、最近では株式に変更している。モシリは損失の補填、初期債務の返済、固定資産および無形資産(選手)への投資費用として、合計で最低4億5千万ポンドを投資した(ブラムリー・ムーアへの現在の建設工事に関わる支払いを除く)。

彼がバランスシートを改善し、ブラムリー・ムーアに関する費用について、かなりの割合を出資することを約束した結果、新スタジアムへの移転が現実のものとなったのである。注意しておきたい要素として、フットボールの成績不振、選手や経営陣の選択ミス、建設開始時期が当初の予定よりも遅れたこと、建設費のインフレなどが開発に影響を与え、資金調達コストが増加し、オーナーからより多くの資金を要求されたり、その3つが重なったりしたことが挙げられる。

財務面(2021年の見積もりを含む)では、モシリが着任した2015/16年を含めて、これまでに生み出した収益、その収益を生み出すためのコスト、そしてその資金調達の方法について分析した。

補足:上記の図では、Broadcasting Revenues(放送収益)とMatchday(試合当日の収入)に加えて、Commercial/Sponsorship(CMとスポンサー)から生み出した収益が記載されています。

上記の資金調達にかかる費用:

補足:続いて赤い円で示された上記の図。
Wages(給料、賃金)、
Other operating costs(その他の運営費)、Other costs(その他費用)→
Exceptional(例外的)、Amortisation(減価償却費)などを含んでいます。
Total cost/Including amortisation(総費用/償却費を含む)として計£1,680billionとなっています。

損失がどのように資金化されたか:

補足:3つ目の図から。
Aggregate losses(損失総額)
Funded by(資金調達)→
Player trading profits(選手の取引による利益)
Shareholder loans(株主貸付金)
External debt(外部負債)
によって賄われている形。

損失を上回る資金の増加により、バランスシートが強化される。選手の売買は、支出と収入の差を大幅に縮められる。しかし、最高の人材を確保したいというのは、モシリがクラブに着任して最初に主張したことの一つだ。

損失の規模を軽減するためとして、Covid-19は誰の危機管理計画にも含まれていないと思われ、ビジネスに大きな影響を与えた。

採用について


投資家が考えている戦略の最終的な4つの要素(選手への投資、フットボールディレクターを含むチームマネジメントへの投資、アカデミースタッフへの投資、ビジネスマネジメントへの投資)はすべて、あなたにとってリーダーシップを求めるチームが、うまく採用を行うかどうかにかかっている。

モシリの在任中の最大の弱点は、リクルートを成功させる能力である。失敗には2つの側面がある。
1つは、採用すべき分野(ピッチ内外の両方)であり、もう1つは、明らかに採用された選手たちだ。

不適切な選択の結果は明確で、時間の経過とともに露わになる2つの影響がある。
セレクションの不備はパフォーマンスの低下に繋がっている。パフォーマンスの低下は収益を減少させる。
不適切な採用決定を修正するには、経済的にも評判的にも大きなコストがかかり、そのコストは繰り返すたびに増加していく。最悪の場合、採用の失敗は莫大な負債を生み出し、修正する能力をも低下させてしまう。これが現在の私たちの状況。規制や過去の損失に縛られ、Covid以降の非常に厳しい市場環境の中で、既存のプレーヤーの負債を簡単に解消することができないのだ。

何故これほどまでに失敗してしまったのか?

謎めいているのは、投資家の役割であるこれらの要素が、なぜモシリによってこれほどまでにうまく実行されなかったのかということだ。採用と維持のプロセス、そのすべての要素に欠陥がある。フットボールは最終的には人のビジネス。成功するか失敗するかは、採用と人材確保の質にかかっている。5人の常任理事、2人のフットボール・ダイレクター、ハリスのような欠陥のあるディレクターの採用、そして取締役会、経営陣、アカデミーのリーダーシップを大幅にアップグレードできなかったことがその証拠である。

エヴァートンのトップチームでは、成績の悪いマネージャーやスタッフを解雇することにためらいはなかったが、ビジネスの他の部分では全く異なるアプローチがとられており、主要な役員や幹部のポジションは変更されず、変更があった場合には、内部の候補者を起用したり、ハリスのような外部の候補者を比較的迅速に解任したりしている。

モシリは財政面で気品さを持っていて、公平に見ても彼の資本提供の手段、株式への転換の方法、そのタイミングは模範的であり、自分の業務をどのように構築するかを知っている。USM(=モシリが会長を務め、ロシアに拠点を構える持ち株会社)との関係は、「友好的な」パートナーを利用する方法の典型的な例であり、簡単に見過ごすことはできない。

しかし、スタッフの採用、そしてパートナーの採用は、クラブにとって大きな問題である。モシリがビジネスのトップに立って、より良い人材採用の決断を下すまでは、クラブとしての変化を期待するのは現実的ではないだろう。

競争は激化しているが、減少はしていない

憂慮すべきなのは、このような企業の惰性がある中で、他のクラブが新しい投資家や新しい役員を惹きつけているという背景、現状があること。オーナーシップモデルとそのダイナミクスには大きな変化があり、オーナーが変わることで、プレミアリーグの役員室にはより大きな競争、そして新しい資本とアイデアの波が押し寄せる。
ここ数年では、マンチェスター・シティが新しい投資家を、リーズ・ユナイテッド、クリスタル・パレス、ウォルバーハンプトン・ワンダラーズが少数株主を迎え入れた。ウェストハム・ユナイテッドは今週、大成功を収めた投資家や起業家が27%の株式を購入して役員に迎え入れたばかりだ。
アストン・ヴィラは、我々と似たような状況に陥っているかもしれないが、重要な新しい投資家を迎えているし、もちろん、サウジアラビアが出資するニューカッスル・ユナイテッドには未知の可能性もある。
ブライトン&ホーヴ・アルビオンやブレントフォードのようなクラブは、現代的で新鮮、かつ分析的なスタイルでクラブを運営しており、そのスタイルはクラブが培ってきた歴史的なレベルを大幅に上回る結果をもたらしている。

これらのことは、既にトップ6のクラブが、優れた商業的パフォーマンス、そして最も重要な毎年の欧州での収益によって、大きな財務的メリットを享受していることを示している。

資本と経営にさらなる投資が必要

この6年間の結果として、エヴァートンの課題が浮き彫りになっている。
フットボールの発展、収支のバランス、つまり、より高いパフォーマンスのフットボールチームによって、そしてスタジアムの資金提供を通じ、持続的に収支バランス以上のポジションに戻ること。

投資家の視点から見たモシリは、これまでの管理方法と、彼に代わって実行する人を選択することに頼っていては、(運に頼っていない限り)異なる結果が得られないことを理解しなければならない。それは明らかなことだ。

そのためには、ビジネスに必要な人材を確保するための採用戦略を優先的に考えなければならない。

上述の財務結果、フットボール事業の業績、商業的な業績を見ると、人事異動の必要性は絶対的なものだ。さらに、Covidの世界では、競合他社は資本増強を行い、役員室に新しい人材を採用している。

ガバナンスの観点からどのような変化が必要かについては第1部でお伝えしたが、もう一度競争力を取り戻したいのであれば、取締役や役員レベルでの採用や人事を変える必要がある。採用を間違えることによるコスト(競争上および財務上の)は明らかであり、まったく持続不可能である。

投資の観点から見ると、今日の課題は2015/16年よりもさらに大きく、競争が激化しており、2度目の再開発を行う能力は、最初の試みがうまくいかなかったために低下している。


次回の第3部では、フットボール・ダイレクターのモデルがこれまでどのように機能してきたのか、あるいは機能してこなかったのか、そして何を改善すべきなのかを考えてみたいと思う。


💙

いよいよ、シリーズは第3部へ

いかがでしたでしょうか?
エヴァートンにおける、採用面についての指摘、財政状況など、the esk氏はこれまでも繰り返し訴えてきた事柄です。

私たち日本のファンにとっても、ピッチ上の問題に限らず、1度は疑問を抱いた分野のお話だと思います。

プレミアリーグという世界トップレベルの舞台、潤沢な資金を保有する大株主、多額の資金を費やしてきた移籍市場、近い未来に控える新スタジアム…その環境に身を置きながらうまく進展しなかった過去数シーズンの過ちが、どのように生まれてしまったのか、何故繰り返されているのか。そして、挽回のチャンス、機会は既に最終的な段階に入っているということ。

the esk氏による近年の集大成ともいえる分析が、私たちにとってぼんやりしていた問題や課題を浮き彫りにし、必要な要素が明らかになった第2部だったと感じています。

次回はフットボール・ダイレクターの視点にフォーカスする第3部。近日に公開が見込まれます。
次回も感謝の気持ちを込めてお届けできるよう臨みたいと思います。

今回もご清読いただきありがとうございました。

気に入ってくださり、サポートしてくださる方、ありがとうございます。 今後の執筆活動や、エヴァートンをより理解するための知識習得につなげていきたいと思います。