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-第1部,エヴァートンのオーナーシップとリーダーシップ;優れたガバナンスの重要性- 月刊NSNO 増刊号 / エヴァートンFC ブログ

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「 Part 1, Everton’s ownership and leadership: the importance of good governance」
-第1部,エヴァートンのオーナーシップとリーダーシップ;優れたガバナンスの重要性-

月刊NSNO 増刊号 / エヴァートンFC ブログ
 (2021年) 
Written by the esk
Translation by BF

はじめに

本稿は、the esk氏(Twitterアカウント:@theesk)の連載コラムの第1弾を翻訳し、「NSNO増刊号」としてお届けします。
the esk氏は、''生涯エヴァートンファン''として客観的な目線でクラブを分析。クラブのビジネスモデル、ガバナンス、マニフェストなどを通して根本的な問題と向き合っています。主に、執筆活動、ポッドキャストなどを通して自身の見解を発信されています。

今回の記事を初めて読んだ時、私自身も同様の疑問を持つファンとして非常に興味深いものでした。是非とも遥か東の島国から応援する、多くのエヴァトニアンの皆様と共有したい。その思いが高まり、ご本人許可のもとで稚拙ながら翻訳に臨ませていただく運びとなりました。

快く承諾下さったthe esk氏に、感謝の気持ちを込めてお送り致します。それでは、どうぞ!

原文は下記のTwitterリンクより。


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-第1部,エヴァートンのオーナーシップとリーダーシップ;優れたガバナンスの重要性-
2021年11月9日 by the esk

優れたガバナンスの重要性

私は、近年のエヴァートンにおいてピッチ内外のパフォーマンスを明確に分析し、クラブのオーナーとリーダーシップが果たしている役割を明らかにしたいと考えている。

今回の第1部について。ガバナンス(=統治・支配・管理を示す言葉)についての重要性が、特に直近6年間とそれ以前の数10年間でどのように位置付けられてきたかを見ていきたい。

まず、ガバナンスと企業業績の間には絶対的かつ、明確な関係がある。あらゆる商業分野において、最高の経営を行なっている企業が、最も優れたガバナンス基準を行使しているという、広く詳らかな証拠があるのだ。これは決して偶然の産物ではない。

ここ数ヶ月、エヴァートン・フットボールクラブのパフォーマンスについて、ピッチの内外で疑問の声が強まっている。ファルハド・モシリが実質的なオーナーとなってから、6年目の最終四半期を迎えようとしている。その今、中核的な「商品」であるフットボールチームと、その経営陣のパフォーマンスに加え、オーナーとしてのモシリの役割、取締役会や経営陣について多くの質問が寄せられている。

他の企業と同じように、フットボールクラブは単独で成立することはできない。実際には、ステークホルダー(=直接、または間接的に影響を受ける利害関係者)と有意義な関係を築く必要がある。
フットボールクラブ、特に私たちのような長い歴史を持つクラブは、ファン主導のレビューにもあるように、地域社会に溶け込み、どの町、都市、地域においても基本的な部分を担っている。多くの場合、その地域の幸福度(または不幸度)を何よりも雄弁に物語っている。リヴァプールのようなフットボールの盛んな都市では、クラブは他のどの機関よりも地域や地元のアイデンティティを定義している。そのため、クラブはその重要性と義務を認識しなければならず、フットボールクラブがいかにしてに運営されているかは、その場所を取り巻く人々、特に地元や国内、そして海外を問わずファンにとって重要なことだ。その責任(つまりそのパフォーマンス)は、オーナーとディレクターの肩にかかっているのだ。

フットボールクラブを分析する前に、公平を期すため、Everton in the Community (=エヴァートン・フットボールクラブ公式の慈善団体。コミュニティ開発や、地域・社会を通してチームの魅力を広げていく役目を担う)はこの分野での活動に優れていることを述べておきたい。その成功と重要性を認めないのは野暮というべきだろう。しかし、現在流行している言葉を使えば、慈善団体の業績とフットボールクラブの業績を「混同」すべきではない。両者は、異なる法的アイデンティティ、経営構造、そして全く異なる目的を持つ。2つの独立した法人であることに間違いない。

ガバナンスとは何か?

では、まずガバナンスについて説明する。ガバナンスとは何か?それは、"企業が指示、管理されるシステム "と定義できる。指示されることと支配されることの区別は非常に重要だ。オーナーと取締役は、ガバナンスの中で2つの異なる役割を担っているからだ。

取締役会は、会社のガバナンスに責任を負う。しかし、ガバナンスにおける株主の重要な役割は、取締役を任命し、適切なガバナンス構造が整備されていることを自ら(株主)が納得することである。

ガバナンスにおける株主、またはオーナーの役割は、企業の業績、将来の戦略、貸し手にとってのポテンシャルを、新しい投資家にとっても魅力として伝えるために必要不可欠だ。新しい投資家、言い換えれば後継者計画も重要で、それによってエヴァートンが将来どのようなタイプのオーナーを惹きつけ、獲得できるかが決まるといえる。

ガバナンスが不十分であると判断された場合、株主には、自分の(私たちの)クラブを統治する適切な取締役会を採用しなかった責任がある。この連載のテーマになるかもしれないが、取締役の採用は、問題を解決するものであり、一方で問題を生み出すものでもある。
取締役の採用を間違えたり、新しい独立した人材の採用を怠ったりすると、ビジネス全体のパフォーマンス低下を招いてしまう。経験の浅い、効果のない、あるいは単に野心のない取締役は、貧弱な戦略を生み出し、その戦略の良し悪しに関わらず、戦略自体が適切に実行されているかどうか確認する能力がない、と捉えるのが普通だ。

エヴァートンを成功した持続可能なクラブにし、フットボールの発展に貢献する組織にすること。

この目的に対して、私たちが不適切であると考えた場合。株主が同意したと仮定して、目的達成のために取締役会に変更を加えることは、株主の責任となる。

この点において強いて言うならば、モシリはクラブ、少数株主、その他すべてのステークホルダーに対する義務を完全に怠っていると言っても過言ではないだろう。

優れたガバナンスの主要な原則とは何か?(フットボールクラブの場合に修正したもの)

取締役会のリーダーシップと会社の目的 - 

成功するフットボールクラブは、効果的で起業家的な取締役会に率いられている。その役割は、クラブの長期的な成功のためのリソース(=資源、資産)を提供し、株主に価値を生み出し、ピッチ上での成功のためファンの目標を達成し、地域社会や環境に貢献すること。クラブの長期的な成功には、自国やヨーロッパでトロフィーを獲得し、最高のクラブチームと競争することが必要だ。

目的を達成するために十分な資源を生み出すこと - 

会社が設定した目的を達成し、それに対するパフォーマンスを測定するため、必要な資源を確保することは取締役会の法的責任であることは明らかだ。また、リスクの正確な評価を可能にする効果的なコントロールのフレームワーク(=枠組み、体制)を確立することも取締役会の義務である。

目的、価値観、アイデンティティ - 

クラブの目的、価値観、アイデンティティを確立(または維持・改善)することは、理事会の責任だ。これらの重要な要素を確立することにより、戦略が決定される。もし取締役会が目的、価値観、アイデンティティを決定しなければ、どのように戦略を構築し、実行することができるだろうか?
同様に、もし目的、価値観、アイデンティティが組織外の人々に明らかでなければ、取締役会はどのように責任を負うことができるのか。

法的義務 - 

取締役会は、クラブが株主、ステークホルダー、そしてもちろん従業員に対する責任を確実に果たさなければならない。

理想的な取締役会の構造と役割

「したがって、取締役会の立場は、オーナーと経営者の間をつなぐ役割を果たし、オーナーに代わって会社を指揮・管理することです。言い換えれば、オーナーがそのような権限を与えるのは、取締役会がオーナーシップの縮図として機能することを可能にするためです。」- ジョン・カーバー

会長-

会長は取締役会を率いて、会社やクラブを指揮する上での全体的な効果に責任を負う。理想的には、在任期間を通じて、客観的な判断力を発揮し、オープンな議論の文化を促進すべきだ。さらに会長は、建設的な取締役会の関係と、非執行役員を含む取締役の効果的な貢献にも責任を負い、取締役が正確でタイムリーかつ明確な情報を受け取ることを保証する。また、会長は主要株主との取引においても主要な役割を担っている。

常務取締役と非常勤取締役 - 

ベストプラクティス(=最良のやり方)では、常務取締役(つまり、クラブが執行取締役として雇用しているもの– CEO、CFOなど)の組み合わせが必要だが、最も重要なのは非常勤取締役である。

そして、さらに良い実践としては、独立した社外取締役を採用すること。独立したとは、以前の雇用関係や契約関係がなく、重要な株主やステークホルダーとの関係も含まないことを意味している。彼らの役割は、他の取締役の利益のために、監督と外部の専門知識をもたらすことだ。

非常勤取締役は、取締役としての責任を果たすために十分な時間を確保すべきである。彼らは建設的な異議申し立て、戦略的ガイダンス、専門家の助言を提供し、最も重要なのは経営陣の責任を追求することだ。

取締役会のリーダーシップと、会社のビジネスにおける経営陣のリーダーシップとの間には、明確な責任分担があるべきだからだ。

エヴァートンの劣悪なガバナンス構造

「エヴァートンの役員はフットボール界で尊敬されていると信じています...そして、私たちの役員は他のクラブが憧れる存在であることも知っています。実際、2、3日前に、ある有名なフットボールクラブが私にこう言いました。''我々が何か問題を抱えているとき、エヴァートンの役員ならどうするだろう?彼らはいつも正しいことをするからね''と言っていました。」

「質の高さがものを言います。」

ビル・ケンライト(エバートン・フットボール・クラブ会長)は、2021年1月のクラブ年次総会でこのように発言した。

残念ながら、エヴァートンの場合、取締役会はベスト・プラクティスに従っていない。役員のみで構成されており、取締役会とビジネスのリーダーシップの間には隔たりがないからだ。これは、エヴァートンのガバナンスモデルにおける極端な弱点であり、この問題に取り組むことは、ファルハド・モシリの直接的責任である。

取締役会が何をするのか、何をすべきなのか、何を決定する必要があるのか、その要素は非常にたくさんあるが、現状として全員が役員である小規模な取締役会を持つことによって損なわれている。  
個人の業績を客観的に分析するのは誰か?誰が戦略の客観的な分析を行うのか?適切な意思決定を行うために必要となる、強固なチャレンジを提供するのは誰か?報酬や賞金を決めるのは誰か?プロフットボールは常に変化し、動きの速い世界だ。あらゆる課題(と機会)を抱えながら経営者であり続けるために…十分な能力、スキル、野心を持つ人を誰が決めるのか?

改善するには?

組織として向上するために重要なこと。ピッチの内外で真の競争力を持ち、ヨーロッパでトップチームとして返り咲き、素晴らしいアカデミーを構築し、新スタジアム、ブラムリー・ムーアを無事に成功させる…。
アイデンティティ、商業的魅力、ブランドを成長させるために、モシリは行動しなければならない。彼はまず、我々のガバナンスに目を向け、役員レベルのモデルや構造、個人では成し遂げられないことを認識する必要がある。

圧倒的な証拠(フットボールのパフォーマンス、財務のパフォーマンス、ゲーム内での地位の低下)に直面しても改善しないことは、大株主である彼自身だけでなく、小株主、ファン(最も重要)、そしてフットボールクラブに価値を見出すすべてのステークホルダーに対して、重大な過失を犯すことになる。彼だけが、行動する力と権限を持っている。リーダーであるモシリは、今すぐにでも実践しなければいけないのだ。


今回は、オーナーと取締役会が直面している課題について考えるシリーズの第1回目。今後は、財政状況、商業的パフォーマンス、フットボールダイレクターのパフォーマンス、リクルート、そしてモシリの役割について見ていく予定だ。


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続きは第2部へ

今回は序章にあたる「第1部」を翻訳させていただきました。読んでいるだけで目を覆いたくなってしまいますね。現状には、もどかしい気持ちが募るばかり。ピッチでのエヴァートンの状況と、ガバナンス面における貧弱さにはリンクする部分が多いことを改めて実感する次第です。次回第2部はエヴァートンの財政状況、主に過去5シーズンの採用費用と救済策について検討、論及してくださるとのことです。

課題に対して、より詳細に、論理的に、きっとクリティカルな分析をしてくださることと思います。お楽しみに。現地のファンを代表して、発信してくださる活動に感謝。

この度、記事を翻訳するにあたり、ほんの少しthe esk氏とやり取りをさせていただきました。
過去に来日経験があり、東京、大阪、京都などを訪れたそうです。Twitterでは、時折アジア系の料理を作った写真を披露されたり、来日された際の記憶を「素晴らしい思い出」と語ってくださいました。嬉しい限りですね。

また、続編についてもこちらのnoteで近日ご紹介できたらと思います。

最後までありがとうございました。


気に入ってくださり、サポートしてくださる方、ありがとうございます。 今後の執筆活動や、エヴァートンをより理解するための知識習得につなげていきたいと思います。