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-第3部, エヴァートンのオーナーシップとリーダーシップ;フットボール・ダイレクターについて- 月刊NSNO 増刊号 / エヴァートンFC ブログ


「Part III, Everton’s ownership and leadership; the director of football」

第3部, エヴァートンのオーナーシップとリーダーシップ;フットボール・ダイレクターについて

月刊NSNO 増刊号 / エヴァートンFC ブログ
 (2021年) 
Written by the esk
Translation by BF

第3部 原文は以下より。


これまでの記事

第1部


第2部


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-第3部,エヴァートンのオーナーシップとリーダーシップ;フットボールダイレクターについて-
2021年11月20日 by the esk

フットボール・ダイレクターについて


これまでの連載では、第1部でガバナンス、第2部でリクルートについて述べてきた。今回の記事では、エヴァートンでのフットボール・ダイレクターの役割について考察したい。興味深いことに、私たちのダイレクター・オブ・フットボール・モデル(以降DoFモデルと翻訳します)の問題の多くは、第1部と第2部で提起した問題に起因している。

現状として、CEOやCFOとは異なり、フットボール・ダイレクターが何をするのか、どのような責任を負うのかは定義されていない。ヨーロッパのフットボール界では30年以上前からこの役割が定着しているにもかかわらず、である。この役割は、うまく実行されている場合、オーナー、会長、CEO、その他の取締役によって定義され、それぞれの状況に合わせて調整されているように見える。定義の欠如、明確な境界線の欠如、そしてその結果としての説明責任や責任そのものは、フットボール・ダイレクターの役割に反対する人たちが、その役割を置かない理由としてよく使う。しかし、実際には、フットボールクラブの運営は、これまでのようにトップチームのコーチやマネージャーだけが担当することでは成り立たない。

現代のフットボールクラブでは、フットボール・オペレーションを指揮する上級者が必要とされる。役割が定義され、その定義が守られなければならないからだ。それができなければ、クラブは競争していく上で不利な立場に置かれてしまうのではないだろうか。

私にとって、それはフットボールクラブの中で最も重要な幹部の役割。もし、それが大胆な主張のように思われる場合は、マンチェスターシティのチキ・べギリスタイン、またはリバプールのマイケル・エドワーズ、それぞれのクラブへの影響と貢献度を見てほしい。

では、この役割には何が含まれるのか?

「私は車輪の真ん中に立っています。私の仕事は、7つの部門をまとめ、それらのスポークをつなぐことです」
ダン・アシュワース(ブライトン&ホーヴ・アルビオン、テクニカル・ディレクター)


これは決して網羅的なリストではないが、私にとっての''役割''について、重要な構成要素は以下の通り。

・ボードメンバー(取締役会のメンバー)であること

・短期、中期、長期的な野望と目標を決定し、取締役会と合意する。

・トップチームの監督に関わらず、またすべてのレベルにおいて、特徴的なクラブスタイルとプレー哲学を創造、開発、維持する責任を負う。

・必要な予算(移籍予算、賃金予算、施設予算、バックルームのスタッフのレベルと予算を含む)を合意する。

・トップチームにおいての監督と主要な関係者であり、パートナーであること

・すべてのレベルにおいて、スカウティングとクラブのスカウティングネットワークに全責任を負う。

・クラブ内外の移籍に関する全責任を負い、移籍に関する主な交渉相手および主要な連絡先となる。

・U-23、アカデミー、その他の育成チームとそのコーチングスタッフに責任を持つ

・医療、栄養、スポーツ科学を含むパフォーマンス部門の責任者


このような役割を成功させるためには、役割を担う人物が必要とされる才能を持っていることを前提に置く。株主、会長、その他の取締役が適切なスペースを提供すること。フットボール・ダイレクターへの完全な委任を可能にするために個人に対して十分な信頼を持たなければならない。もちろん、彼らは常に協力的であるべきで、会長や主要株主が交渉や話し合いに関与することもあるだろうが、基本的にはフットボール・ダイレクターの責任でなければならない。会長がお気に入りのエージェントを使って選手を購入(または売却)したり、大株主が数回見ただけで選手を購入したりすることは、現代のフットボールクラブを運営する方法とは言えない。

もしあなたがDoFモデルに投資し、業界をリードする候補者を採用するならば、彼らにその役割を果たすための自由裁量権を与える以外に何かする必要があるだろうか?

モシリ - DoF・モデルのファン

モシリは、DoF・モデル(少なくとも彼のバージョン)の大ファンだ。
2016年の夏、彼の大きな優先事項の1つは、まだ選ばれていない「ハリウッド」監督のそばに、ハイレベルで定評のあるフットボール・ダイレクターを据えることだった。当時セビージャに所属していたモンチは、マルセル・ブランズと同様に強く要望されていた。ブランズはPSVアイントホーフェンでのプロジェクトを完成させたいと考えていたが、アプローチのタイミングが合わず、モンチはモシリのクラブのビジョンに納得しなかった。おそらく、組織や役割に対する理解が不足していることにも懸念を抱いていたのだろう。

どういうわけか、モンチやブランズからスティーブ・ウォルシュになってしまった。しかしウォルシュには敬意を払って言いたい。彼はエヴァートンの人々から非常に不当な評価を受けていると思っている。彼はフットボール・ダイレクターとしては決して適切ではなかったが、優れたスカウトマンであり、例えばゲイェのような選手を選ぶのに長けていた。しかし、エヴァートンでの彼の役割は明確に定義されておらず、実質的な権限もなく、クーマン、ケンライト、モシリの3人組を相手にしなければならなかった。彼らは実際に自分たちがフットボール・マネージャーを演じる機会と、付随する莫大な予算に目がくらんでいた。

彼らがボラシー、シュナイデルラン、ウィリアムズ、クラーセン、サンドロ、シグルズソンを手に入れ、加えてルーニーを戻した一方で、ウォルシュはハーランド(ドルトムント)、ロバートソン(リヴァプール)、マグワイア(マン・ユナイテッド)を、彼がスカウトした選手や、すでに知っていた選手として推薦したが、主にクーマンに拒否されたのだ。

補足:写真左がウォルシュ。右が先日バルセロナを退任したクーマン。少し前に、エヴァトニアンの間でも話題になったウォルシュのスカウティング。現在価値が高騰した3名の候補、マグワイアとロバートソンは当時共にハル・シティの主力。2人合わせて2,000万ポンド、ハーランドはたった400万ユーロで獲得できる算段があったものの、クーマンはそれを拒否したとウォルシュ自身が語りました。


もし、2016年にフットボール・ダイレクターの役割がしっかりと確立され、適切な権限と責任が与えられていたら、どれほど違ったクラブになっていただろうか。2016年から2018年1月までの過剰な買い物や規律のない買い物を止め、鋭いサインをすることができた人物だった。

ただし、採用は一つの要素に過ぎない。もしフットボール・ダイレクターに移籍を管理する権限がないとしたら、他の分野の責任はどうなるのだろう?フットボール哲学の開発はどうなるのか?アカデミーの再構築と再開発は?適切なスカウティングネットワークの開発は?プロのスポーツ組織に必要なすべてのサポート(医療、福利厚生など)を維持し、最高の人材を維持し、新しい人材を惹きつけるための構造を構築することは?

モシリは就任時に、才能を維持することが重要だと述べていた。しかし、彼らはそれを完全に怠っていた。原因のひとつは、監督選びはもちろんのこと、フットボールクラブの運営方法にあるのではないだろうか。
ルカクは退団する前の1年間、自分のためにならないことをしていたが、後になってみると、晩年にクラブを軽蔑するような態度をとっていたのは、それなりの理由があったのかもしれない。ダン・アシュワースが観察したように、フットボール・オペレーションは1人の個人が管理すべきだった。

マルセル・ブランズ


マルセル・ブランズをどうするか。一見すると、彼は人が期待するすべての属性を持っている。ゲームの世界では尊敬されているし、欧州フットボールの知識でも知られている。非常に構造的で、タフな交渉者で、優れた実績を持ち、人脈も広い。

では、彼の効果を明らかに低下させている限界とは何なのか?彼自身なのか、彼が受け継いだ環境なのか、それともエヴァートンが組織として管理されている方法なのか、それゆえに彼が果たすことを許されている役割なのか。

確かに、彼が引き継いだ状況は、バランスの悪いチーム、厳しくなる一方の財政状況、クラブに望まれていないが他では真似のできない契約をしている多くの選手など、信じられないほど困難なものであり、彼の時間を相当に割かなければならない。トップチームの選手と23歳以下の選手を常に入れ替えてローン市場を利用することは、必要ではあるものの、彼のリソースとスキルを非常に非生産的に使っている。良い面としては、彼がいくつかのスキルを持って悪い手を打ったことは認められているくらいだろうか。

私の知る限り、モシリはブランズの大きな支持者であるようだ。彼は、彼の資質と、彼が運営する高い基準を認めている。しかし、私が先に述べた役割の定義を取るならば、ブランズは彼のスキルが保証するような多くの分野での権限や責任を持っていないことは明らかである。

もしあなたが、ブランズはエヴァートンのすべての運営に関する権限と責任を持っているのか、というシンプルな質問をすれば、その答えは非常に明確な「ノー」となるだろう。

では、なぜ彼らは多額の費用をかけて一流のフットボール・ダイレクターを採用したのに、彼を必要なだけ効果的に使わないのだろうか?なぜ、ベニテスと一緒に働いている彼に、「全体的な」改善のための絶対的な権限を与えないのか?

オーナーがいまだにリクルートの決定権を持ち、会長が独立してフットボールの問題に関わり、アカデミーがクラブの中のクラブとして運営されているような状況は、完全に機能不全に陥っている。さらに、元選手を重要なコーチ役に採用するという理念は、明らかにマルセル・ブランズからは生まれないものであり、私たちは第1部と2部で提示した議論に戻ることになる。
ガバナンスの重要性と、貧弱なリクルートのコスト。

フットボール・ダイレクターを最大限に活用する


この3つの要素、すなわち、ガバナンス、貧弱なリクルートのコスト、そしてフットボール・ダイレクターの役割と活用が、全体的な不振の鍵を握っている。おそらく、フットボール・ダイレクターの活用、その有効性、そしてそのリターンと生産性の最大化は、ガバナンスを改善した上で、取締役として優れた人材を迎え入れることなしには達成できないだろう。

しかし、モシリがガバナンスと人材採用に取り組む準備ができていないとしても、我々の業務遂行方法を比較的早く改善するには、フットボール・ダイレクターに権限、責任、パフォーマンスを発揮するスペースを与えることだ。その決断によって、クラブはより良い状態になると確信している。モシリができる決断は、その一例に過ぎない。

次回は、財務と資金調達モデルについての第4部をお送りする。

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私たちの疑念と3つの要素、そして第4部へ

第3部はダイレクターのブランズと、その役割を定義するために必要なこと、あるいは整っていないクラブの現状を指摘したものでした。

今、私たちが疑問に感じているマルセル・ブランズの役割。

彼が現在の職務について以降、ファンが期待した、描いていた理想の姿とは、現況を見ればかけ離れたものであるということは明確です。

きっとブランズ自身もそう感じていて、一貫されたオペレーションではない空間の中で、あらゆる構造的な障害と向き合っているはずです。

おそらく、期待していた役割を果たしていないことに、すでに諦念の構えをとらざるを得ない、深妙な面持ちの方も多いでしょう。

不振の要因として挙げられた3つの要素が明確となり、次回は財務と資金調達のモデルについて執筆してくださいます。点と点が繋がってきた中で、新たにthe esk‬⁩氏がどのように現在のクラブを斬ってくれるのか、楽しみに待ちましょう。

今回も最後までありがとうございました。

気に入ってくださり、サポートしてくださる方、ありがとうございます。 今後の執筆活動や、エヴァートンをより理解するための知識習得につなげていきたいと思います。