クラインガルテン(滞在型市民農園)

クラインガルテンはご存じだろうか?
ドイツ語で「小さな庭」という意味で、滞在型の市民農園のことだ。これが日本にも沢山作られていて大人気だそうだ。

中でも愛知県の離島、佐久島にあるクラインガルテンは、車の乗り入れが島民以外禁止されていて船でしか渡れず、また島内にはコンビニはおろか肉屋、魚屋、八百屋などの商店も一切なく、自動販売機もほぼない。自分で育てたものを調理するか、地元の漁師から分けて貰うしかない。そんな不便さもあってか日本の他のクラインガルテンより入居倍率が低く、今年入居された家族の招きで行ってきた。

うなぎで有名な愛知県西尾市の一色港から船で20分。車は乗り入れできないので一色港に無料で止めてきた。港から車で5分、徒歩で15分くらいに新しくできたばかりの集落があった。それがまた斬新なレイアウトだった。

1LDKくらいの間取りの小さな家が、中央の管理棟を囲むように円形に存在し、各家には100坪ほどの庭が付いている。縁側を降りればもう畑だ。「管理棟」管理する所ではなく、みんなで行事をしたり共同調理をする場で、大鍋や餅つき機など調理用具が一通り揃っている。

小さな家も大きなロフトがあって空間的にはすごく広く四人家族くらいは余裕で住めるのではという広さ。収納が工夫されていて使いやすい。農具も中央管理棟に一通り整備されていて、手ぶらできても農作業ができる。

縄文時代は、中央に共同スペースがあり、それを囲むように個人の住居が円形にあったと言われている。確かにクラインガルテンは営利事業であり、古民家ではないし自給自足までは志向していないが、わたしが感心したのは縄文と同じ生活のデザインだ。

田舎で血縁によらない大家族を創るにも、大きな家に共同生活では、窮屈に思う人もいるだろうし、農地も共同だと、さぼる人も出てきて不満も出てくる。寝泊まりと農地を個人所有にすれば各人がやりたいようにやれる。その上で隣人の協力もすぐ仰げる。

実際、居住者みんないい人で、島内に店が無いので、どこかの家が居酒屋になり深く付き合えるという。わたしを招いてくれた家族の娘さんが障がいを持つ方で、家出をしては入退院を繰り返すという生活で薬もたくさん飲んでいたそうだが、断薬のため山奥で1年間一緒に生活した後、ここに来たという。

実際ここに来たら、みんなが娘のことを気にかけてくれて、いなくなると一緒に探してくれたり、時間を取って娘の相手をしてくれたりと本当に来てよかった。小さな島だから遠くに行くこともないし、変な誘惑もなく、お金も使わないからそんなにいらない。

佐久島クラインガルテン
https://sakushima.com/guide-top/kleingarten/

世界が行き詰まっている今、日本の縄文時代の生活・価値観が世界中で注目されている。

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