見出し画像

プロフェッショナルの現在・過去そして未来〜Beyond VET 2021 Vol.9 開催報告~(後半)〜

こんにちは!Beyond VET事務局です。

前半に引き続き、3月末に行われたイベントの開催報告です。
このnoteでは後半のトークセッションについてお届けします。
イベント前編noteはこちら👇
https://note.com/beyondvet/n/ne8dca3a268a2


プロフェッショナルの現在

→栗原先生が『今どんなお仕事や生活をされているのか』についてお聞きしました!

山城:そもそもレジデントは給料が発生するのでしょうか?

栗原先生:します!なんなら、レジデントが一番重宝されます。これは、診断のモディファイト(討論)ができるのがレジデントしかいないからです。動物病院もレジデントがいないと回らないのでそこはきちんと給料が発生します。しかし、レジデントには最終決定権はないです。研究・診断が主な仕事になっています。

山城:今の先生の1日のスケジュールはどうなっていますか?

栗原先生:8:00 に病院がスタートラウンドを行います。 10:00ごろから実際に症例が来るのでその症例を診断したり、前日の症例でわからなかったものや珍しい症例に関して同じ画像診断のレジデントや専門医で検討します。17:00頃に昼の部が終了し、夜の部が始まります。
→オンコール(電話当番の先生)に変わる。オンコールは朝まで続く。


プロフェッショナルの過去

→栗原先生が『レジデントを目指したきっかけ』や『学生時代のお話』をお聞きしました!

山城:どうしてレジデントになろうと思ったのですか?タフツ大学の方から声がかかったからレジデントを目指そうと思ったのですか?

栗原先生:学生時代は放射線研究室所属で、先生の言うことに逆らえないし、意見出来ない人でした。日本の大学はいわゆる縦社会で、教授や上の人が偉いという認識が強く教員は遠い存在でした。
しかし、5年生の時にコーネル大学(ニュージーランド)に見学に行ったときに威厳のある年配の先生が留置※をものすごい丁寧に解説していた(基礎的なことでも教授直々に教えている)ことに衝撃をうけました。
「え、こんなえらい先生がこんなにちゃんと教えてくれるんだ・・・!?」
「英語全く出来ないけれど、ここで教育受けたい!」という思いが強くなり、6年生の時にコーネル大学に再び行くことを決意しました。
どうしてタフツ大学なのかというと、世界では画像診断が超人気なため、その分野で自分をとってくれるのはタフツ大学しかなかったからというのが正直なところですね(笑)。キャラ採用で入れたと思ってます(笑)。

※留置→動静脈内に留置針という細く柔らかい管を入れることで、注射や長時間点滴をしやすくするための処置です。

髙橋:画像診断とはどういったことをするのですか?

栗原先生:レントゲン、CT、放射線同位体などを用いる診断学です。日本では内科や外科とくっついているので、ペットが来院→診断→処置という流れが一体化していて、一人の獣医師がこれを行います。しかし、海外ではこの診断の分野が確立しているので、診断のみをします。薬を出したりなどは一切しません。

髙橋:獣医療はやはりアメリカの方が進んでますか?

栗原先生:日本が強いところもあります。例えば、脳の蓄積病(日獣の長谷川先生)などですね。特にピンポイントなところでは日本の方が進んでいます。

加藤:学生時代はどんな学生でしたか?

栗原先生:高校時代は野球に明け暮れてました。夏の引退ギリギリまで野球に没頭したため、テスト前にしかペンを握らないくらいでした(笑)。例を挙げると、最後の夏の大会の2日後くらいので9教科120点しか取れなかったです(笑)。担任には入れる大学がないとまで言われました。しかし、悔しさから受験までに7割5分まで辿り着き「このままなら一年後に獣医いけるから浪人しろ。」ということになり浪人を決意しました。元々獣医大学についても知らなかったのでここにきて初めて大学を調べ出しました。
犬猫の診療が強かったことから麻布大学(私立)に決定しました。
大学では1年生の4月から研究室見学を始め、画像診断に目をつけて、研究室見学に行った時には教授に驚かれましたね(笑)。バイト・部活・研究室を一生懸命やっていたので、6年間があっという間に終わっていました。


プロフェッショナルの未来

→『専門医の今後』や『先生がこれから何をしたいのか』についてお聞きしました!

加藤:今、未来の獣医学に対してアプローチしたいことはありますか?

栗原先生:海外は専門医が身近です。しかし、専門医だから偉いということはないです。専門家というと日本は神格化されやすいので、もっと身近にしていきたいと思っています。
また、女性の社会進出化を進めたいと思っています。アメリカでは特に女性が多い業界です。そういった想いもあってLIVESを設立しました。

大久保:日本で働いていたところからアメリカに行くことを決めたのはどうしてですか?

栗原先生:アメリカで専門医になるためには北米に行かないといけないと思ったからです。ヨーロッパはビザや文化的に日本人が入りにくいので・・・。

大久保:日本で今後獣医として生きていくには専門医を取る必要あると思いますか?

栗原先生:みんながみんな取る必要はないと思っています。興味ある人だけで良いと思います。専門医になると、その分野しか診れなくなるマイナス面があります。アメリカで専門医になるのは頭のいい上位5%だけで、日本はもっと少ないです。

〜最後にちょっとした小話〜
・海外は大体ルームメイト!
・ニュージーランドのlow gradeな場所に住んでいたけど、ニュージーランドはネズミが多い・・・🐭


参加者からの質問🎤

農工大6年生:レジデントの数や専門医の数ってどれくらいですか?
レジデントのポジションを探すにはどのような方法がありますか?

栗原先生:ニュージーランドでレジデントを探していましたが、ほとんどいなかったです。だから、アメリカで探しました。また、ニュージーランドの時に画像診断のアルバイトをしていました。
マッチングプログラム(VMRMP)っていうwebサイト(98%北米)で探せると思います!

農工大6年生:マサチューセッツの他に州の免許を発行してもらえる州をご存知でしたら知りたいです。
また、パラオでは日本の獣医師免許で働いている獣医さんがいらっしゃいますが、他にも日本の獣医師免許で働ける英語圏の国はあるのでしょうか。

栗原先生:パラオや東南アジアは青年海外協力隊(JAICA)で獣医師としては活動してる人がいると思います。今はコロナでやってないのですが、結構いるので探して聞いた方がいいと思います。

鳥大1年生:日本の6年とアメリカ の獣医学校も合わせた8年って国の獣医資格とった後は同じ立場として扱われるんですか?

栗原先生:アメリカでは獣医師免許を取得し、働くまでの流れが4年大学→専門課程4年→国試→州のライセンスという形になっています。
私は日本のライセンスを使用して、タフツ大用の州のライセンスを取得しました。通常日本のライセンスだけではアメリカで働けないです。ただ、レジデンス及び専門医のライセンスをとったら、国試をパスできます。
あとは、CPE※を通り、実技試験をパスすることでアメリカの獣医のライセンスを取得できます。
獣医大学がない州は過疎化しやすいので、ライセンスがなくてもアメリカの専門医の資格を取っただけで働けるところもあります。

※CPE:外国の獣医卒業生のための教育プログラム

宮大3年生:専門医を取得した後の具体的なキャリアについてどのように考えておられるのかお聞きしたいです。

栗原先生:専門医を取った後は働き方が大きく変化します。貴重性も高まると思います。なので、日本で普通に働いてる同僚と大きく変わってきて、比べれなくなります。

宮大3年生:専門医を取ったら、アメリカに残るのか他国に行くのか日本に帰るのか、どうお考えですか?

栗原先生:アメリカに残って、レジデントを育てるための教員を目指そうと思いっています。
そもそも、日本は専門医の扱い方をわかっていないです。専門医は1部のプロフェッショナルになるのに対し、日本では専門医は全てを網羅する超人だと思われる節があります。
アジアの専門医などが出来てきましたが、アメリカでは昔からレジデントの制度があり、その歴史には勝てないです。なので、アメリカの専門医を扱う環境を日本に作成するのは20-30年では難しいとも思います。文化の違いもありますしね。だから、日本には戻らないです。


まとめ

今回は栗原先生から、普段は聞けない貴重なお話をたくさんしていただきました!
「なんとなく海外に行きたい・・・」「なんとなく専門医って憧れれかも・・・」という方も、栗原先生のお話を聞くことで具体的なイメージがついてきたと思います。日本と欧米では獣医師の働き方も教育プログラムも大きく異なり、日本の獣医師免許では海外で働くのは容易でないこともわかりました。
これからの時代、獣医師のあり方も少しずつ変わってくると思います。その中で、自分たちが一人の獣医師としてどういった方向を目指していくのか、また、その方向に進むには何が必要なのかについてきちんと考えていく必要があると思いました。

栗原先生、お忙しい中朝早くからご参加いただきありがとうございました!


このようにBeyond VETはイベントも行っていますが、コミュニティとしても運営しております。ちょっと興味あるな!雰囲気だけでも知りたい!って方は、Beyond VET公式TwitterまでDMいただくか、beyondvet.info@gmail.comまでメールでご連絡ください。個別に対応させていただきます⭐️

Beyond VET事務局🐩



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?