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松本での演劇について

はじめまして。
長野県松本市に位置する、まつもと市民芸術館を拠点に俳優として活動している、近藤隼と申します。
松本市というのは長野県の真ん中にある、ここ。

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東京からは特急あずさ(狩人の曲『あずさ2号で〜♪』のあずさ)で2時間半〜3時間の距離ですね。
ここに2007年に移住して、かれこれ13年演劇をやっています。
今ではすっかり「二拠点」なんていう言葉も浸透していますが、当初はなぜ松本?どうして地方で演劇?という声が多かったように思います。
日本ではどうしても、文化活動も経済活動も東京一極集中ですね。
もちろん僕も東京でお芝居を上演したり、観たりすることも多いので、一概に悪いとは思いません。経済も文化も華やかで最先端、刺激の多い街、みたいな場所があるのはいいと思います。
ただ、東京と地方の文化・経済のバランスが変わるともっと面白いなと思います。
コロナ禍で、大きな会社が、自社ビルを手放したり移転するニュースが多いですが、そろそろその歪さが変わってくるような風も少し感じます。

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さて、まつもと市民芸術館は公共の劇場です。
「公共の劇場を拠点に」というのも色々な形があって、静岡のSPACや新潟のNoismは契約制だと聞いています。
僕らはTCアルプというカンパニーですが、契約制ではなく公演に応じてのギャランティ制です。つまり、年間の契約ではありません、カンパニー自体のルールも規則もありません。
芸術監督で演出家の串田さんを中心に作品を作っていますが、ゲストの演出家としてはこれまで、白井晃さん、小川絵梨子さん、森新太郎さん、木内宏昌さん、千葉哲也さん、等豊かな出会いに恵まれ作品作りをしてきました。

一方で、カンパニーメンバーは松本市のどこかでアルバイトをしつつ、演劇をしています。

松本で演劇をやっていて一番いいのは、お客さんの顔が見えること。山に囲まれた小さな街ですので、道を歩いていたり、スーパーで買い物をしてる時に声をかけられます。「今度の芝居も頑張ってね!」「こないだの芝居のあそこが好きだった」と。東京ではあまりそういう経験はできないように思います。

僕が13年間、松本という場所で演劇をやってきて課題を感じているのは、今の日本において地方の公共劇場が抱える劇団の意義が、あまりはっきりしていないということです。
演劇界全体としてや、文化産業全体としての明確な指針があるわけでもなく、地方の公共劇場同士の繋がりも薄く、各劇場が独自に考えて動いているだけのように感じています。

少し話が逸れますが、Jリーグが開幕したのは今から28年前の1993年。
僕は当時9才で、そのブームにそのまま乗った、まさにサッカー少年でした。その頃のJリーグや日本代表は弱く、まだW杯にも出場できないような状態でしたが、でも、そこから28年経った今、W杯に出場するのは当たり前で、見ていて面白いサッカーになりました。Jリーグのチーム数も増え、サポーターも根付き、地方に色々なチームがあって、随分活性化しました。
日本サッカー協会が力を入れ、歴代の選手やサポーターが、この28年間、日本サッカーを強くするにはどうしたらいいか考え続けた結果だと思います。

Jリーグには協賛で企業もついているし、同じ前提で考えられないことは分かりながら、演劇だとなぜ同じようにいかないのだろう、と考えることがあります。

東京でも地方でも、面白い演劇を作るカンパニーがいて、海外にもどんどん出ていけるような俳優がたくさんいる。そんな未来を思い描きたい。
僕も少し歳を重ねて、そろそろ下の世代に何をどう繋げて残せるか考えるようになってきましたが、50年、100年先のことを考えた時に、どう動くべきか、目の前のお芝居に追われながら、考えることが増えてきました。



近藤隼の記事はこちらから
https://note.com/beyond_it_all/m/m469a63ef1392


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