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「リチャード三世」

こんにちは。
あっという間に2月です。
1月は河内大和さん主宰のG.Garage///「リチャード三世」の稽古と本番の日々でした。
イギリスの俳優ベネディクト・カンバーバッチが血縁(16親等離れたはとこ)という「リチャード三世」ですが、今まで戯曲を読んだり、観劇はしていましたが、自分が扱うのは初めてでした。
確か、大学1年生の時に戯曲を読んで、その後、蜷川幸雄さんの演出の「リチャード三世」を日生劇場で見たのが最初だと思います。
その後、しばらく見ていなかったのですが、プルカレーテ演出版の「リチャード三世」を映像で見て、俳優の中嶋しゅうさんにシャウビューネのオスターマイヤー演出の「リチャード三世」を薦められていたので、シビウ演劇祭に向かう途中に寄ったベルリンで、朝から劇場に並んでオスターマイヤー版「リチャード三世」を当日券で見ました。

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他にも「ホロウ・クラウン/嘆きの王冠」というイギリスのテレビ映画シリーズで、最後に「リチャード三世」もあって、とにかくまあ色々見てはいたのですが、自分がやるのは初めて。
「リチャード三世」という作品に何が内包されているのか、ゆっくり考えるいい時間でした。

セリフを英語で読むと、リチャード三世のセリフは「Now」で始まります。
薔薇戦争という過去の争いがあって、「今」から始まるリチャードの疾走を経て、悲劇的な未来に向かって行くのですが、このリチャードの独白「Now」で始まるのがなんともかっこいいんですよね。
シェイクスピアのセリフは時間について語ってることも多くて、マクベスの「Tomorrow Speech」「明日、明日、また明日…」の台詞についてイアン・マッケランが語ってますが、この動画最高です。

あとはやっぱり「馬」ですね。
背骨が曲がってるリチャードが、人より早く走りたい、疾走するにはどうしても馬が必要だ、と言わんばかりの最後のセリフ「馬!」
「馬!」で終わる芝居なんて他には中々ないと思いますが、リチャードが死を目前に言うと、とてもいいセリフです。

リチャードにとっては折れ曲がった背骨と背中のこぶがコンプレックスとして象徴的ですが、誰しも人にはわからない、人には見せたくないこぶを持っています。
今回、主演の河内さんのリチャードは、そんなこぶを持ちながらも、なんとか幸せを掴み取りたい、悪事も厭わず、全力疾走していく人間らしさがあって素敵でした。

話は少し飛びます。
最近、リオネル・メッシ(サッカー選手)のドキュメンタリーを見ました。
メッシは世界最高のストライカーですが、試合中走る距離はチームでもかなり短いです。だけど、ゴールはたくさん決めます。
有名な話ですが、試合中のメッシを見ると、普通に歩いてることが多いです。一見、サボってるように見えますが、よく見るとずっと首を横に振って周りを見ています。
特に最初の10分間は無闇に走らず、ずっと相手の弱点を探しているんです。
で、弱点を見つけたら、走ってゴール。

また、話は飛びますが、
表現って「差」だな、と思うことが多くて、
例えば、早さの表現って、ただ1人で舞台上を早く走り回ってもいいですが、周りがスローモーションの中、それをやったらもっと早く見えますね。

最近、この二つのことが気になってて。
今回はそれを試そうと思って現場に入りました。笑

どうしても台本読んで、自分の役が決まったりすると、その役でやりたいことばかりを考えがちです。
もちろん、それでいいんです。
その上で、この現場で多くの人がやらないこと、差を見つける、ということを考る約2週間の稽古でした。
僕みたいに試そうとしなくても、役者のみんなは自然にやってるんでしょうけど、今回はそんなことに少し拘りながら、ラトクリフというリチャードの右腕という役をいただき、結構面白い役になりました。

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さて、
そして、またすぐ次の稽古です。
『I Call My Brothers』(スウェーデン)
作=ヨーナス・ハッサン・ケミーリ
原題:Jag Ringer Mina Bröder/英題:I Call My Brothers by Jonas Hassen Khemiri
何かが起こった。車が爆発した。私たちは犯罪者と犠牲者、愛と化学、妄想と現実の境界が曖昧になる。
スウェーデンの最も重要な文学賞を受賞するケミーリが、2010年ストックホルムの自爆テロに基づき書いた小説を戯曲化。

2月18日(金)19:00
2月20日(日)14:00

作:ヨーナス・ハッサン・ケミーリ 翻訳:後藤絢子 翻訳監修:小牧游
演出:小川絵梨子
出演:亀田佳明、浅野令子、近藤隼、万里紗、杉宮匡紀

【会場】上野ストアハウス
JR上野駅 入谷口から徒歩5分(改札からは8分)
東京メトロ入谷駅 1番出口から徒歩5分

【チケット】1,500円(当日精算/全席自由)
各回、受付開始は開演45分前、開場は開演30分前。

※残念ながら前売り券は売り切れてしまっているので、増席や当日券の情報はこちらからご確認ください。
https://iti-japan.or.jp/announce/8049/

こちらは全くシェイクスピアとは世界観がガラリと変わります。
スウェーデンの作家、ヨーナス・ハッサン・ケミーリさんが、2010年にストックホルムで起きた自爆テロをきっかけに書いた作品です。
2月はどっぷりとこの世界に飛び込みたいと思います。

それでは、また3月に!

近藤隼



近藤隼の記事はこちらから。
https://note.com/beyond_it_all/m/m469a63ef1392


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