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マッシング【ビール用語辞典】ビール造りの最初の工程であり、最も大事な工程。クラフトビールがより楽しくなるコアな知識

今回から実際の作業についてです!

前回まででビールに使う材料について解説してきました。今回からは実際のビール醸造工程について解説していこうと思います。
実際の作業については過去記事にて動画付きで解説していますので是非ご参照ください。

また、ビール醸造の材料はこちらからご購入いただけます!!

マッシングとは

ビール醸造を始める時、一番初めにしなければいけないのが【マッシング】です。マッシングとはアミラーゼという酵素が働きやすい温度のお湯にモルトを投入し、アミラーゼの力でモルトの中のデンプンを発酵可能な糖へ分解することです。ビール造りにおいて一番最初の作業であり、ここを失敗するとそもそも発酵することができないため、最も大事な作業の1つでもあります。

デンプンは単糖類の仲間の一つである「グルコース(ブドウ糖)」がタテ ・ ヨコに 200~ 1000 個つながってできています。アミラーゼにグルコースの連結を断ち切らせ数種類の糖分を作ることができます。

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それらの糖分は、「グルコース(ブドウ糖)」「マルトース(麦芽糖)」「マルトトリオース(麦芽三炭糖)」「デキストリン」などがあり
上図のように、マルトースはグルコースがヨコに2個つながってる状態、
マルトトリオースはグルコースがヨコに3個つながった状態の糖分です。
デキストリン以外は、 いずれもビール酵母によって発酵します。
デキストリンは7個以上のグルコースがタテとヨコに複雑につながったアミロペクチン(アミロースとともにデンプンの成分をなす多糖)の破片で、 ビール酵母では発酵できません。

αアミラーゼとβアミラーゼ

ビールの品質はウォート(ビールになる前の液体)の品質、特に可発酵物質で決まるといってもよいです。アミラーゼには、「アルファ・アミラーゼ」と「ベータ・アミラーゼ」の2種類があります。
アルファ・アミラーゼはグルコースの連結部をどこでも無差別に断ち切ることができます。
ベータ・アミラーゼは連結が切れた端っこからしか切断できません。
可発酵糖分(マルトース)を作り出す酵素は、主にベータ・アミラーゼといわれる酵素によって作り出されます。同時にアルファ・アミラーゼはその助手的働きをします。
アミロースの分解においては、まずアルファ・アミラーゼが中間の連結部をいくつか大まかに切断し、次にベータ・アミラーゼがその切れ端から順にグルコースやマルトースなどを切り出していきます。

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60℃近辺では アルファ・アミラーゼとベータ・アミラーゼが一緒になってデンプンの グルコース連結を細かく断ち切るため、マルトースやマルトトリオースなどの発酵性糖分の生成量が最大となります。
しかし、65℃に温度が上がってしまうとベータ・アミラーゼの活力が低下しはじめ、アルファ・アミラーゼが断ち切った後のフォローが十分に対応できなくなります。
その結果、発酵性糖分の生成量がやや減少し、反対に非発酵性糖分(デキストリン)の生成が増えます。
70℃近くになると、ベータ・アミラーゼの活動が6割程度まで低下します。ですが、アルファ・アミラーゼの活動は依然として旺盛であるため、
とくにアミロペクチンの1- 6結合付近のグルコース連結を切断し続けます。
その結果、発酵性糖分の生成が抑えられ、非発酵性糖分(デキストリン)が大量につくりだされます。
つまり、糖化温度が70℃に近くなればなるほど非発酵性糖分が増えビールにボディ感を与えてくれ、逆に60℃に近ければ近いほど発酵性糖分が増えすっきりとした味わいのビールになります。
※1- 6結合・・・多糖類の単糖間の結合様式。α型に配置した1位と6位の炭素間でできる結合

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マッシングの種類

1、シングル・インフュージョン・マッシング(単温マッシング)
一定の温度(62℃~70℃)で30~60分で(糖化)、低温ほど高アルコール、温度が高いほどフルボディになります。最後に77℃まで温度を上げ終了。

2、ステップ・インフュージョン・マッシング
温度によって変わる酵素の働きに合わせて麦汁の温度を調整する方法です。
50℃を30分保ち(糖化)、62℃~70℃を20分~30分、次に70℃を15分、最後に77℃まで温度を上げ終了。
シングル・インフュージョンマッシングに比べタンパク質が減り濁りの少ないビールができます。

3、デコクション・マッシング
麦汁の一部を別の仕込み釜に取り煮沸して、仕込み釜に戻すことにより、槽の温度を段階的に上げる方法。
二つを合わせることにより、風味と深いコク、色を引き出すことができます。

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マッシング時の水質

●ビール醸造に適した水の条件
1.酸性であること。理想はpH5.2~5.4
2.ミネラル成分が適正量含まれいていること。
 カルシウム・・・・・50~100ppm
 マグネシウム・・・ ・10~20ppm
 ナトリウム・・・・・75~150ppm
 硫酸塩・・・・・・・75~150ppm
 亜鉛・・・・・・・・微量
 その他・・・・・・・銅、マンガン、スズ、炭酸塩など微量値

3.下記の水は使用することができません。
●塩素などで殺菌された水(塩素を処理すればよい)化学薬品や化学肥料で汚染された水
●サビ、 コケ、 カビなどを含む水


pHと酵素の関係
●糖化酵素が最も活発に活動するpH値は、4.8~5.2の範囲
pH ・・・・・・・アミラーゼ活動効率%
4.8  ・・・・・・98
5.0  ・・・・・・99
5.2  ・・・・・・100
5.4  ・・・・・・95
5.8  ・・・・・・85
6.2  ・・・・・・65

●麦芽から抽出されるリン酸や塩化物により糖化液のpH値を下げるので、仕込み水はpH5.2~5.4がベストになります。
【例】クリスタルモルトを10%混ぜた場合、モロミのpH値が0.3低下し、20%の場合は0.5低下
●pH5.5以上で糖化すると、できたビールの麦芽風味がボケたものになり、ホップの苦味が重くなり、ホップの風味も効かなくなってしまいます。
●pH値が高いとプロテナ―ゼの働きが悪く、透明に澄んだビールができにくくなってしまいます。
●酸、カルシウム、マグネシウムの添加による仕込み水のpH補正をしなければいけません。
 ―硫酸(H2SO4)による補正
 ―85%リン酸による補正
 ―エプソムソルト(硫酸マグネシウムMgSO4・7H2O)による補正
 ―チョーク(炭酸カルシウムCaCO3)による補正
 ―石膏(硫化カルシウムCaSO4・2H2O)またはその代替え(塩化カルシウムCaCl2・2H2O)による補正
※プロテナーゼ・・・アミノ酸残基をつなぐペプチド結合を分割させることで、長いタンパク質鎖をより短い断片に消化することに関与している。
※ペプチド結合・・・アミド結合のうちα-アミノ酸同士が脱水縮合して形成される共有結合。

プロテインレスト

粉砕麦芽を45―60℃(最良55℃)の温水に投入。55℃の温水で麦芽のタンパク質をイーストの栄養分となるアミノ酸に分解する酵素が活性化しますので麦汁のアミノ酸化が進むことをプロテインレストと言います。
プロティナーゼ(タンパク質分解酵素)およびペプチダーゼ(ベブチドをアミノ酸に分解する酵素)の活動です。
麦汁中にあるタンパク質をアミノ酸に分解します。
タンパク質は麦汁の濁りを引き起こすため、プロテインレストは麦汁の透明度の向上に影響します。
また、アミノ酸は酵母の栄養になるため、発酵を助けるといわれています。しかしながら、現在購入できるモルトのほとんどがアミノ酸などの発酵に必要な栄養素を豊富に含んでいるため、プロテインレストはビールを綺麗にしたいとき以外は不要ともいわれています。

次回はスパージングについて!!

次回はマッシングが終了した麦汁を取り出す工程【スパージング】についてです!

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