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水平線

早朝、森戸海岸の先の海岸で泳いだ。海水は透き通っていて、水平線はいつもより広く見えた。ちょうどいい岩に横になって小一時間眠った。浄化やデトックスを超えて、生まれ変わったような気がした。どんなふうに?と問われるのは好きじゃない。私がそう感じたことだけでよいのだから。誕生日に友人がくれた透明な球体のピアスを、今日はじめて付けた。

フジロックが終わった。キム・ゴードンは、かっこよすぎた。サーストン・ムーアとの離婚後、悲しみにくれた心情を語った、インタビュー記事を読んだ時には、こちらまで泣きたくなるほどだったけれど、思いっきり見事に、創造的で新しいキム・ゴードンだった。夏のやらなければならないことを終えた。海から上がった4時間後、ニューグランドホテルのカフェで、見える系の先輩女性から開口一番、モテキ(死語) がくるわよと言われた。正確に言えばモテキというより、運命宿命ツインレイ級なやつがガツンとくる。と、やはり黒いアオザイで来て、間違いなかったと思った、それは全くもって意味不明なんだろうけど、意味なんかどうでもいいと思った。そもそもモテキという概念が分からない。と言ったら、アプリやSNSで、加工写真にはじまり、必死にリプライやDMをがんばっているご婦人から、あなたってほんと感じ悪いと、舌打ちされたことを思い出したけど、何て返したかは覚えていない。未だに、そのご婦人はXに張り付いて、がんばっているらしい、おきばりやす。

そろそろギラついて本気出しちゃうか。と言うと、先輩はゲラゲラと笑って、あーほんっと最低で最高だよあんたは…逸材よと喜んでいた。少しだけ錆びた、クラシックな回転ドアから外に出ると、横浜の港特有の湿度を感じた。この山下公園通りを、自転車で走っていた頃の私のことが遠い昔に感じた。鎌倉に戻る時の京浜東北線は、ひともまばらで、車内の床に映る水平な影が一際美しかった。

透明な球体にもその様は写っていたとおもう。

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