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編集記者として道具に対するこだわり

まずは原稿手書き時代

 みなさんは仕事で必要になる“道具”をどのように選んで使っているでしょうか。私が最初に編集記者の仕事に就いた昔、まだPCが普及していない時代でしたので、原稿は会社支給の鉛筆で手書きするのがあたりまえでした。しかし、この鉛筆がどうにもめんどくさい。鉛筆の芯先が、すぐ丸まってしまうのです。いちいち鉛筆削りの場所へ行って、何本かまとめて削ります。筆が乗っている時には、この作業だけで思考が止まってしまいます。削りカスがたまっていたら、それを綺麗にして捨てる作業も伴います。

 こうしたストレスに我慢ができず、さまざまなペンを何本も何本も試した結果、最終的には硬度Bの0.9ミリ芯のシャープペンに行き着きました。どの硬度か、何ミリ芯か、手になじむペンはどれかなど、相当な本数を購入しました。当時は、こうした特殊な芯が使えるシャープペンはどこの文具店で売っているわけではなく大型店だけ。しかも、製図用がほとんどで、1本あたりの価格もかなり高かったです。若かった私には相当な金額でしたが、結果的には最終的に購入したシャープペンを何年も快適に使い続けて、原稿のパフォーマンスも上がりました。ただし、一番下っ端だった私が、ほとんど鉛筆削りのカスを捨てなくなったので、周りから痛い視線を感じることもありましたが。

 当時、こだわっていた仕事道具はあと2つありました。1つは取材の時に書き留めるノートです。会社支給のノートはありましたが、ペラペラの紙で時折ページが外れてしまうこともあったので、ノートもペンと同様にいろいろ試して自分に合ったものを常に探していました。もう1つは、テープレコーダーです。たしかまだICレコーダーが普及してなく、テープから後にMDレコーダーを使った記憶があります。いまは無理ですが、当時のほとんどの取材ではメモだけで原稿が書けていましたが、長時間の取材やセミナーなどでは、録音していました。最初の内は人に借りていたのですが、自分のものではないため、機種が変わると使い勝手が異なり、録音を失敗することがあったのです。そのため、これも自分で購入して使うことになりました。

 これらの経験が、道具にこだわるようになった私の原点だと思います。仕事のパフォーマンスを上げるために日常的に使う道具は、自分自身で見定めて、自分が購入して使うべきだと。自分で購入するからこそ、いろいろな情報(当時は雑誌ぐらいでしたが)を入手してから、必然的にかなり慎重に選ぶことになります。金額がかさむ場合もありますが、それは「自分に対する将来的な投資だ」と考えていました。

デジタル時代でのこだわり

 そして、世の中はPC、インターネットが普及していき、デジタルの時代になり、仕事で常用する道具も大きく変わりました。古い言い方をすると、この時の三種の神器は、「PC、ICレコーダー、デジタルカメラ」でした。もちろん、これらは会社からの支給や備品として使うことができましたが、スペックが満足できなかったり、使い勝手が悪かったりするので、アナログ時代の道具へのこだわり通り、すべて自分で購入して使ってきました。とはいっても最初の内は「手を真っ黒にしながら手書きで原稿を書かなくて済む! 消しゴムを使わずに原稿文字の削除やカット&ペーストができる!」と、デジタル化の恩恵をその程度で喜んでいましたが。ただし、こうした道具へのこだわりは、仕事がら製品レビューの記事なども手がけていたので、それに役立ちました。

 しかし、デジタル時代になるとどの製品も金額が張ります。PCの場合、ハードウェアだけでなくソフトウェアも選ばなくてはなりません。特に“新しもの好き”にとっては、この3製品以外にも欲しいものはどんどん出てきます。そんなとき、ある編集長が「世の中になかったモノやイノベーティブだと思ったモノが出てきたら、借金してでもすぐ買うんだよ!」と言っていたことが忘れられません。まあ、この言葉が現代で通じるかどうかはわかりませんが、たしかにいまでも私はそのような行動をしているかも知れません。つい最近もとんでもなく高額なモノを購入しました……。

 こうした「自分で使う道具は自分自身で購入して使うべき」という長年のこだわりは、いまでも持っています。いまもPC、ICレコーダー、デジタルカメラは特にこだわっています。そして、以前は後輩たちにもこのこだわりを説いてきましたが、スマートフォンやタブレットなどが普及したいまだと、この考えも通用しなくなってきていると感じているので、人に強いるのは止めています。また、セキュリティなどの面で企業によっては私物の製品やソフトウェアなどの利用が禁止されているケースも多いので、道具へのこだわりがあっても使えない人も多いでしょう。

 それでも私は、可能な限り、こうした道具へのこだわりを続けると思います。どこかの場面で実際にいま使っている道具を紹介しようかと思っています。

 そいじゃあ、また。

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2005年1月にシーネットネットワークスジャパン(現 朝日インタラクティブ)に入社し、2007年7月に「CNET Japan」編集長に就任。2019年5月から編集長兼任を終了して編集統括を引き続き務める。

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