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べてるの家のオンラインマガジン「ホップステップだうん!」 Vol.257

・「第3回子ども・子育て当事者研究交流集会」
・続「技法以前」206 向谷地生良 「対話」を学ぶ
・子どもたちと土づくりワークショップ
・「北のバラバラな日々」(11)笹渕乃梨
・The View from Nowhere - どこでもないところからの眺め - 002 向谷地宣明 「サイドバック」
・【マンガ】ぱぴぷぺぽ すずきゆうこ「貢ぐ 苦労」


まだ少し先ですが、23年2月25日(土)に「第3回子ども・子育て当事者研究交流集会」をします!

今回、子どもたちの研究発表者を全国から募集することになりました。

そこで、
・親以外とも研究したい
・研究について教えてほしい

など、こんな応援がほしい!の子がいたらこちらまでご連絡ください。

【発表申込み・ご相談】 E-mail:urakawa.bethel@gmail.com

発表したいけど、まとめ方がわからない方、応援が必要な方は下記のメールまでご連絡ください。
「子ども・子育てネットワークゆるふわ」の仲間たちがまとめかたなどについてご相談にのります。

子どもが研究したい気持ちがあることが大前提となりますが、研究経験者と一緒に研究したり、何か必要な応援がありましたら、子ども子育て当事者研究ネットワークのみんなと応援する気持ちでいます。

今回の全体テーマ「けっこう人生わるくない」と、「かわいくてまあるい私たち」は、それぞれが「ままならないママ」に子どもたちがかけた言葉から選ばれました。
交流集会の最初にこの言葉の詳しいエピソードが紹介される予定です!楽しみにしていてください!

写真は、先日横浜の子育て当事者研究会が行われているときの、下着姿で戦い続ける子どもたちです。

写真・文:江連麻紀


続「技法以前」206 向谷地生良

「対話」を学ぶ

コロナ禍にあって、私は幸いにも念願であったオープンダイアローグの基礎トレーニング(2021/3-2022/2)を経て、現在はアドバンストトレーニングコースを受講(2022/10-2024/09)しています。
このコースは「対話実践の社会実装をより積極的にすすめ、ひとりでも多くの方にサービスを提供していけることを目指すという観点から、日本国内でのトレーニングコースやワークショップ等でファシリテーターとして学習を推進できる人材を育成する」ことを目的としたもので、基礎トレーニングと併せると3年余りにわたる研修です。

主にメンタルヘルス領域でソーシャルワーカーとしての実践を続けてきた私ですが、これまで、幾多の研修やトレーニングを経験してきた私にとって、多くの若手の受講希望者がある中で、定年を迎えた私が、このようなケアに関する本格的な学びの機会を与えられたことを大事にしたいと思います。そして、何よりも、この経験を私自身の対話実践の集大成として、残された働きに活かしていきたいと思っています。

「三度の飯よりミーティング」というべてるの理念に象徴されるように、べてるの歩みは、常に対話の可能性を模索する歩みでもあります。
しかし、この歩みは、「対話」の機会と、今を語る言葉を見失い、途方に暮れる多くの場面、出来事の中で、かがり火のように大切にされてきたものです。今、思い出しただけでも、緊張で心や身体にしびれが走るような山ほどの経験があります。

哲学者の鷲田清一氏の綴った「対話の可能性」の中で、対話について次のように記されています。

「人と人のあいだには、性と性のあいだには、人と人以外の生きもののあいだには、どれほど声を、身ぶりを尽くしても、伝わらないことがある。思いとは違うことが伝わってしまうこともある。対話は、そのように共通の足場を持たない者のあいだで、たがいに分かりあおうとして試みられる。 そのとき、理解しあえるはずだという前提に立てば、理解しえずに終わったとき、『ともにいられる』場所は閉じられる。けれども、理解しえなくてあたりまえだという前提に立てば、『ともにいられる』場所はもうすこし開かれる。対話は、他人と同じ考え、同じ気持ちになるために試みられるのではない。 語りあえば語りあうほど他人と自分との違いがより繊細に分かるようにうなること、それが対話だ。『分かりあえない』『伝わらない』という戸惑いや痛みから出発すること、それは、不可解なものに身を開くことなのだ」

鷲田清一 せんだいメディアテークパンフレットより

この短い言葉には、対話をめぐる様々なジレンマ、難しさ、神髄、可能性が込められています。 そして、オープンダイアローグの対話実践の学びには、一貫として、「私と言う他者との対話」と「他者と言う私との対話」の両面があることに気づかされます。往々にして、私たちのように対人援助について、学び、トレーニングを受けてきた多くの専門職は、「私」が不在のままに、目に前のクライエントに対する操作的、支配的、権威的なかかわりを身につけ、その構造故に、互いに消耗する現実に目をつむってきました。

その意味でも、このたびのオープンダイアローグの学びの経験は、当事者研究の理解と進め方にとっても、大切な契機となるような気がしています。

向谷地生良(むかいやち・いくよし)
1978年から北海道・浦河でソーシャルワーカーとして活動。1984年に佐々木実さんや早坂潔さん等と共にべてるの家の設立に関わった。浦河赤十字病院勤務、北海道医療大学教授を経て、現在同大特任教授、社会福祉法人浦河べてるの家理事長。著書に『技法以前』(医学書院)、ほか多数。新刊『べてるの家から吹く風 増補改訂版』(いのちのことば社)、『増補版 安心して絶望できる人生』(一麦社)、『弱さの研究』(くんぷる)が発売中。

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