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ダイアログ・イン・サイレンス〜静寂の世界で感覚を研ぎ澄ませる体験〜

 真冬にもかかわらず、2月20日は20度を超える暖かさで、春と間違えそうな日、静寂の世界で感覚を研ぎ澄ませる体験をしてきました。 浜松町駅から徒歩6分ほどで竹芝桟橋方面に向かい、芝商業高校を過ぎて左折すると、アトレ竹芝があり、その1階のダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」が会場でした。

入口のモニュメント

 ダイアログ・イン・サイレンスは、1998年にドイツで開始され、フランス、イスラエル、メキシコ、トルコ、中国など世界中で100万人以上が体験したエンターテイメントです。日本では2017年から期間限定で開催されており、今回は2月25日(日)までですが、席がわずかとなっているため、興味がある方は早めに予約することをお勧めします。

 普段人見知りする私ですが、到着すると、ろう者であることを伝えると、すぐに筆談や手話での対応に切り替えてくれ、対応に慣れている様子でした。開始時間の30分前に到着していたため、暇を持て余して会場をうろついていたところ、友人でサイレンス・インタープリター(SI)の純じゅんさんが現れ、緊張がほぐれました。大変ありがたいことでした。彼は、次の出番に備えて待機していたのでした。

SIの純じゅんさんと記念写真

 私の回のアテンドは、ろう者のじんちゃん、サイレンス・インタープリター(SI)は聴者のちんるさんでした。最初はSIによる音声と手話によるガイダンスがありました。補聴器を使用している人は、それを外すのがルールで、デフリンピックと同じです。その後、音を遮断するヘッドセットを全員が装着しました。私自身、ヘッドセットの使用に慣れていないため、これも新鮮な経験でした。

 いくつかの部屋で、それぞれのテーマに沿って、アテンドのリードで表情やアイコンタクト、ボディランゲージなど、声を出さずにコミュニケーションを取る体験をしました。ろう者のじんちゃんの豊かで魅力的なボディランゲージにより、初めはおどおどしていた参加者も次第に引き込まれ、中盤には積極的に反応していました。また、参加者一人一人が多様でユニークなコミュニケーションをとる様子が非常に興味深かったです。最初は目を合わせることに躊躇していた人も、次第にしっかりと目を見るようになり、その変化が印象的でした。(ネタバレになるので、これ以上の詳細は割愛します)

 参加者の感想で印象的だったのは、「全身や皮膚で感じることができた」という意見でした。音声や言葉以外で、相手が発するものを受け取ろうとすると、これまでに経験したことのない受け止め方となります。それが新しい対話のきっかけになっていると感じました。

 私自身はろう者であり、視覚優位で生きているので、無言でのダイアログには慣れているつもりでしたが、予想外の設定が続き、それぞれの場面で不慣れさを感じてしまいました。しかし、このシチュエーションではろう者としてのアドバンテージが大いに活かされることはなかったものの、お互いを信頼し、積極的に歩み寄ることの重要性を学びました。不思議なことに、疲れは感じましたが、それは心地よい疲れでした。ジムトレーニング後に感じる疲労感に似た爽快感がありました。

 以前から興味があり、アテンドの方にも声をかけられていましたが、人見知りもあってなかなか参加のきっかけをつかめませんでした。しかし、私の会社の障害者や支援者の有志が集まり、社内システムのアクセシビリティ向上に取り組むコミュニティがあります。このメンバーで、特に視覚障害者が中心となって「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」への参加することになったのですが、私はろう者であるため、制約上参加できませんでした。しかし、「ダイアログ・イン・サイレンス」への参加を通じて、お互いに体験を報告し合えると良いと思い、参加しました。

 「ダイアログ・イン・サイレンス」は、聴者だけでなく、ろう者や難聴者にもぜひおすすめしたい体験です。興味を少しでも持たれたら、是非とも竹芝へ足を運んでみてください。きっと新しい対話のきっかけを掴むことでしょう。そこから、また新たなコミュニケーションスタイルが生まれることを願っています。

あらゆる人が楽しくコミュニケーションできる世の中となりますように!