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読後感は重いが、読んでよかった。〜鈴木忠平「虚空の人 清原和博を巡る旅」を読んだ。

昨日の夜、一章・二章を読み終わり、そこまでで約半分。
さっき、三章・四章・五章と読み終え、読了。

以下読書感想記事となりますが、最初ネタバレにならないよう書こうと思ったのですが、難しかったです。
これから本を読む方にはスルー推奨です。。

2022年7月27日発行

堕ちた英雄。

本の帯に「堕ちた英雄」とあります。
「堕ちた」というのはもちろん、2016年の覚醒剤取締法違反を指していると思いますが、清原和博の人生に大きな影を落とした一日として記憶に残るのは、やはり1985年秋のドラフトの一日。

この本でも、著者の鈴木氏は、あの一日、桑田真澄との関係が決定的にそれまでと変わってしまった日が、その後の清原に大きな影響を及ぼしてしまったのではと考え、PL学園のある富田林とんだばやしに赴き、当時のKKコンビを知る人たちに話を聞きます。

それが本の第二章で、個人的にいちばん読みたかった部分でした。
高校生時代や、もっと遡って少年時代の清原や桑田についてのエピソードは、知らなかったものばかりで、引き込まれて読みました。

思っていた以上に、桑田はストイックで、高校生離れした視座で人生を捉えており、清原は無邪気で裏表がなく、繊細な人でした。(少し、誇張され過ぎのような気もしたのですが。)


著者の逡巡と決心。

著者は、この本のもっとも重要な取材対象の一人である、清原、桑田を中学時代に見出し、PL学園入学へと導いた井元いのもと俊秀という人物に、「あなた、清原を食い物にしとるんじゃないか。」と言われたのをきっかけに、何度も清原和博と距離を置こう、彼について何か書くことはもう止めよう、と考えます。

しかし、結局は清原が持つ引力のようなものに引き寄せられ、インタビューを再開することを決心し、ついにこの本を書き上げ、また、最後には、「またいつ清原という人物を追い始めてしまうか分からなかったから」という理由で、あえて別れは告げなかった、と書いています。

いつか、清原のその後が、著者によって綴られるのかもしれません。


気になるグラブの行方。

また、1985年の夏の甲子園優勝後に、清原と桑田の間で交換されたというお互いのグラブについての挿話が出てくるのですが、清原はそのグラブを一旦桑田に返そうとして著者に預けるものの、どのような心境の変化か、著者がまだ桑田に渡せていないことを知ると、再び自分の手元に引き取ります。

このグラブの行方も気になります。

今、清原の手元にある桑田のグローブ。清原はそれを手にとるか、あるいは眺めるかして、何を思うのか。

それに気になるのは、桑田の手元にある清原のグローブ。
桑田は、清原について何を思うのか。

まあ、この本を読んでも感じたのですが、桑田真澄という人物は軽率に自分の考えを口にする性格ではないし、ましてやドラフトや、清原との関係について、これまで語ってきたこと以上のことを語ることはないのでしょうが・・。

清原さんには、桑田のグローブを手元に置いて、甲子園での輝きを忘れないでこれからの人生を歩んで欲しい、と、思うばかりです。


前作「嫌われた監督」との比較、読後感。

今作は、「嫌われた監督」を読んだときの、ミステリーを読んでいるようなワクワク感や、カタルシスはないです。

それはある程度、読む前からわかっていたとも言えるのですが・・。

読後感はやはり重いです。

思えば、清原和博ほど、もっともっと輝かしい人生もあり得たのでは?と一般の人にまで思わせる人物もいないのかもしれません。

奇しくも、まさに落合さんが、「清原は王さんの記録を超えられると思っていた」、というようなことを発言していたと思います。

それほどの人がこんなに苦しんでいるのを知ることは、本を読むだけなのにやはり気が沈みました。

しかし、本に出てくる清原を知る多くの人物が、清原を慕っていること、死なないで欲しいと思っていること、また多くの人にそう思わせる、今まで自分が知らなかった清原の人となりを知ることができ、応援したいと思えたことはよかったです。(読む前はどちらかというと無関心でした、、)。


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