見出し画像

競馬小説・かなざわいっせい「ファイト!」を読んだ。

場外馬券オヤジが書いたハートウォーミングな短編小説集

ずいぶん前に読んだ気がするけど、最近再入手し読み直した、”場外馬券オヤジ”かなざわいっせいさんの短編小説集。

ファイト1
2003年発行

ひとつひとつの話は文庫版で十頁ほど。

それぞれの題名には主に90年代の名馬たちの名前がつけられている。
それぞれの馬の馬券を買った、あるいは思い入れを持った人たちのドラマを描いている。

目次。馬名が並ぶのを見るとまるで出走表みたい。

25年_ファイト3
ファイト3



オススメの話

オススメの話をいくつかご紹介。
(予想印を打つ形で、オススメより順番に。)


◎本命・オグリキャップ

九歳の女の子と盲目のおじいちゃんの物語。舞台は1990年有馬記念。ハートウォーミング系の話で、優しい人しか出てこない。

もう終わった、と言われたオグリキャップをパドックで見ているうちに、復活を確信したおじいちゃんは・・。

最後のシーン、本の表題である「ファイト!」のセリフにほろっとさせられました。

[好きな部分の引用]
西日を浴びて銀色になった葦毛のオグリキャップが、尻尾を左右に振ると、冬の光の小さな粒子が、その周辺にサラサラと飛び散り、そしてキラキラと輝きながら舞い上がったように、あたしには見えました。


◯対抗・ノースフライト

記憶喪失の男を愛した女と、男を待つ女の話。舞台は1994年のマイルチャンピオンシップ。ノースフライトとサクラバクシンオーの一騎打ちのレース。

これも心温まる話で、一騎打ちの勝敗に賭けた人間たちの思いが交錯して・・最後の居酒屋のシーンがまた泣ける。。


[好きな部分の引用]
3コーナーから4コーナーにかけてサクラバクシンオーが、すっと脚を伸ばした。仕掛け所はここしかないと狙っていたようなスパートだった。下り坂を利用して勢いをつけ、一気にノースフライトを引き離し、そのままゴールへなだれ込もうとしたのだろう。


△(連下)

連下。他にもいいなと思った話としては・・

△プリモディーネ(1999年桜花賞)・・急展開でシングルマザーになった真里マリのキャラが魅力的。なお、真里マリの由来は福永洋一最後の騎乗馬マリージョーイ。

△エアグルーヴ(1998年札幌記念)・・「世にも奇妙な物語」にありそうな不思議な話。タクシーの運ちゃんがいい人。配役するなら誰かなぁと考えたら、温水洋一の顔が浮かんだ。

△ティコティコタック(2000年秋華賞)・・これも人生急展開系。銀行勤めの主人公がケーキ屋に!?しかし、競馬にハマりすぎて妻を放置すると怖いことになる、という教訓のお話なのかも?

△ミスターシービー (1983年菊花賞)・・会社面接で競馬好きの話で盛り上がったのに不採用となってしまったエピソードに共感。真面目な場で「競馬好き」って、なかなか言うか言うまいか考えるんですよね。最後はちょっと出来過ぎかな、という気もしましたが・・。

△ナリタブライアン(1994年菊花賞)・・会社のお金を持ち逃げされた元社長の男と、喫茶店を営む妹の話。持ち逃げ男と銀座WINSで再会するシーンがいい。この持ち逃げ男も、つい配役を考えてしまう。あと、門仲の喫茶店とか北砂のアパートとか、出てくる地名がいやに具体的でまさか実話?なんて思ってしまった。

△ビワハヤヒデ(1993年有馬記念)・・勝ち馬はトウカイテイオーですね。しかし、二着のビワハヤヒデであることがこの話の肝ともなっている。馬券上手な女が実は・・という話で、良くできている。あんまり書いてしまうとネタバレになってしまうので・・。


☆(爆穴)

本命を食うぐらい面白かった、馬券オヤジ座談会(石川喬司・亀和田武・かなざわいっせい)。

・・楽しい座談会です。かなざわさんは当時、競馬ライター人気一位だったようです。やはり、競馬ブックの「八方破れ」は競馬ファンに支持されていたんだなー。


以上。今日の記事は「推薦図書」系でした。


(訃報)さようなら、ウメノファイバー

上記の記事と関係ないが、今日の午後、競馬を見ていたら飛び込んできた、「ウメノファイバー」の記事。

実は、思い出しながら書いている競馬歴の記事、次は1999年を書こうと思っていて、この年まともなG1の的中がウメノファイバーのオークスだけだったことに気づいた。

最近、競馬を始めて間もない頃の馬の残念なニュースが多い気がする、、

いいレースだった・・!!



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?