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その言葉、200円の価値じゃない。

「お釣りはいいです。」

この言葉がこんなに残ると思わなかった。

言ったのが若い男性だったからだろうか。
最後のお客さんだったからだろうか。
次の作品も期待してますと応援してくれたからだろうか。

先日東京ビッグサイトで開催されたCreema主催の巨大クラフトイベント、Handmade in Japan Fesの最終日の閉店間際のこと。

「やりましたねぇ、最高ですねぇ。」
とニヤけながら近づいてきた彼に、
「やっちゃいましたよ、最高でしょ?」
いつものように軽い感じの接客をする。
接客というか普通に会話だな。

30歳くらいかな、日曜にスーツでスマートな彼は何者なのかは知らないけれど、私の作品とやり口を面白がって、すぐにミニトートバッグを買ってくれた。
18:00間際、最後のお客さん。

2800円で3000円のお預かり。
200円のお返しです。

だけど、この「お釣りはいいです。これからも期待しています。」でこの200円は私の中で一気に価値が膨らんで行く。
そしてプライスレスな感動という価値としてしっかり胸に残った。
同時に私の中での彼の印象も。

なんて素敵なことをスマートにする人なのかしら。
この人はきっとどこでも上手く行くだろう。
みんなを幸せにして、その大きくなったブーメランをきっと受け取ることだろう。

チップの文化のない日本では会計はぴったりが当たり前。
お店側として若干のサービスがあっても、今どきお客さんが自分の意思で多く払うことは珍しいと思う。
ましてや若い人が。

私は凄くハッとした。

ハッとしたし、カッコイイなと思った。
ちょっとしたこと、ちょっとした金額。
だけどこれが私に出来ただろうか。
お店側としてじゃなく、自分がお客さんだった時に。
こういうスマートな応援。
正直思いつきもしなかった。

男はそういうとこカッコつけたがるんだよ。
夫は言う。

それでもいいじゃない、200円でこんなにカッコついて相手を幸せな気持ちに出来るんだから。
素晴らしいことじゃない。
素晴らしい選択だ。
どの立場から言ってんだよという感じだけれど、私が彼の身内だったらこの選択を称えたい。
見返りはお金じゃないかもしれないけど、素晴らしい気持ちであり、素晴らしい投資だと思う。

もちろんお釣りをもらうのは当たり前なので、みんなにこう言ってもらいたいわけではない。
200円余計に欲しいわけでもない。

ただ私は、ちょっと感動したんだ。



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