知っていたことでも。
生き物なんてもんは、生まれたからにはいつか必ず死ぬ。
そんなこと百も承知、重々わかってる。
ただそのわかりきっていることを乗り越えるのは、本当に本当に苦しく悲しい。
これから遠くの旦那の実家へ向かう。
危篤なのは実家の犬だ。
犬と暮らしてない人は、たかが犬と呆れるだろうか。
でも一緒に暮らせば家族。
ちょっと種族が違うだけで、自分が産んでないというだけで、我が子であることには変わりないのだ。
『犬』とか、『飼う』とかそういう概念ではなくて、ただ愛する家族なのだ。
「お義父さん、大丈夫かな‥?」
そう言う私も他人事ではない。
うちにも犬と猫がいて、迎え入れた時から何度も覚悟しては泣いたこと。
いつかはその日が必ず来る。
私にも、旦那にも、この子たちにも。
そんなこと、誰もが知ってること。
そう、当たり前のことなんだ。
でもいつか、その当たり前のことで、
私は身の裂けるような苦痛を味わうだろう。
そしてその思いをこの子たちにはさせたくないので、何があっても最後まで生き残ろう。
ここから4時間。
最期に会えるかな、苦しんでないかな、
義父と義母は大丈夫だろうか。
消えていく命はあっても、生きている者には明日が来て、生きていくしかないなんてことも、百も承知のことなんだけれど。
その日が来ること、知ってたんだけれども。
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