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炎上から賞賛へ。たった一つの画像が発したブランドストーリーとは

かれこれ5年前になりますが、2016年アメリカ大統領選の最中にSNSで爆発的にエンゲージメントした事例を解説します。
なぜ、今か。それは、昨今の日本において、ジェンダーや民族差別の問題が活発に議論される土壌が出来上がってきたことを感じるからです。
こうした流れの中で、一つでもソーシャルグッドなアクションが増えるよう過去の事例に学びを得られれば幸いです。

※エンゲージメント数:「いいね」やシェア、コメント、リツイートなどFacebook、Twitter、Instagramでの総アクション数に加え、対象コンテンツについて取り上げた記事やSNS上における口コミなどの総数。スパイスボックスの独自ツールにて計測。

爆発的にエンゲージメントを獲得したのは、世界有数の米国のOLD NAVYが公式Twitterにポストした、たった一枚のセール告知画像でした。

一見、何の変哲もない、幼い子を持つ家族をターゲットにしたセール告知です。なぜこのTweetが爆発的にエンゲージメントしたのでしょうか。

黒人の母、白人の父

このセール告知では異人種家族を描いています。この事によって、「異人種結婚を推奨することで白人を絶やすつもりか」「わざわざ異人種家族を採用することは理解できない」などと、アメリカ国内の白人至上主義たちを中心に怒りを買い、一時炎上状態となりました。

このままであれば炎上した事例で終わってしまいますが、事態はそうは動きませんでした。こうしたネット上の人種差別的発言に対しOLD NAVYが、「我々には多様性を受け入れる誇らしい歴史がある」と反論したのです。この毅然とした態度に対して、共感を覚えた多くの異人種家族が、自分たちの家族写真を「#LoveWin」のハッシュタグと共に一斉にリツイートしはじめたのです。

多民族国家が抱える人種差別問題へのメッセージ

ドナルド・トランプ氏による過激発言に注目が集まったアメリカの大統領選挙でも、しばしば議論の的となるように、アメリカにおける宗教や民族の多様性は、常にさまざまな議論を呼び、それが社会問題化することも頻繁にあります。

今回のコンテンツがシェア拡散された最大のポイントは、さまざまな立場の人々がさまざまな意見を持つ人種差別という社会問題に対してOLD NAVYがはっきりとブランドの態度を示したことにあります。多くの人々が関心を持つイシュー(社会課題)に対して、ブランドとしてどのようなメッセージを発信するのか、そのイシュー自体に真摯に向き合うブランドの姿勢が、今回のクリエーションのコアになっています。

社会のイシューとブランドメッセージをリンクさせる

時にエンターテイメントとして、コンテンツの面白さを追求することは、“多くのユーザーに見られる”ためには必要なことです。しかし、ブランドが真に伝えたいストーリーがシェアされ、ユーザーによって共感することを目的とした場合、インプレッションは意味がありません。ブランドの考え方や伝えたいストーリーを、すでにソーシャル上で顕在化しているイシューに重ね合わせて発信することが有効なアプローチになります。

OLD NAVYのTweetが、どこまで事前に計算されたものなのかはわかりませんが、異人種家族を発端に広く支持を得ることで、結果的に爆発的なエンゲージメントが生まれ、認知と好意形成につなげることができました。

胸を打つストーリーに必要なことは、否定されることをも受け入れながら、ブランドの態度をはっきりと示し、勇気を持って伝えたいことを述べる姿勢です。その事があればブランドストーリーが熱烈な支持を生む原動力となっていきます。たとえ、それがたった一枚の画像でも。

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