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形式別に読む新幹線の絵本[0系編]

しんかんせんとつばめ

大石真ぶん、山本忠敬え『しんかんせんとつばめ』(偕成社,1973)
どこにも0系と書かれてはいませんが、新幹線の車両はこの形式一択だった時代です。山本忠敬といえば鉄道や自動車など数々の乗り物絵本を描いた人。ここでは文章のほうは『チョコレート戦争』などを書いた大石真が担当しており、「のりもの絵どうわ」というシリーズ名にふさわしいファンタジックな展開を見せます。
時代といえばカバー見返しに作者の住所が掲載されているのが驚きです。またうっすら描かれた東京駅丸の内駅舎の屋根が復元前のストレートな形状で、この頃は復元どころか高層ビルに建て替える話が出ていたかあるいはそれよりさらに前かと思うと感慨深いものがあります。運転士の隣に検査係がいるというのも想像がつきません。
奥付には協力として国鉄新幹線総局広報、新幹線車両設計事務所の名前が出てきます。なるほど他の列車との速さ比べ、総合司令所での運行管理、完全立体交差化での踏切事故排除、夜間の保守など乗り物絵本らしい解説と思いましたが、広報の意向だったのかもしれません。
童話らしくファンタジックな展開ですが、地の文で説明していることが事実ではないのはフェアではない気がして仕方ありません。

あさいちばんのしんかんせん

砂田弘ぶん、田代三善きりえ『あさいちばんのしんかんせん』(小峰書店,1981)
絵が切り絵というのが独特です。奥付のページにだけスケッチのような絵があるのがちょっと謎ですが。見返しに16両編成の内訳が書かれていますが、食堂車やビュッフェがあること以上に禁煙車が1号車だけなのが驚きです。たしかに母子が座る客席の窓下に灰皿が設置されていますし、食堂車のシーンにも灰皿が描かれています。
団地のベランダの男の子に汽笛を鳴らして挨拶するのはまぁいいとして、富士川鉄橋を渡るひかり号が富士山を見て「ごきげんです」というのに、ん?となり、その次のページで上りのひかり170号とすれ違って、大阪の天気についての会話を交わしているのにはひっくり返ります。知的生命体だったのか?!最初から一人称で語ってくれていれば、そういう設定なのだなと思うのですが。
新関門トンネルに本州と九州を繋ぐ海底トンネルとして1見開きを割いていて青函トンネルを北海道新幹線が通過する今から見るとなんてこともないのですが、当時としては画期的だったのでしょう。

しんかんせんでおいかけろ!

横溝英一『しんかんせんでおいかけろ!』(小峰書店,1997)
タイトルこそ新幹線を前面に出していますが、表紙で描かれている比重通りに主役というか主舞台ははやぶさです。はやぶさといっても東北新幹線ではありません。西鹿児島(現:鹿児島中央)行きのブルートレインです。1515.3kmの日本で一番長い距離を走る列車と紹介されています。扉奥付に「この本に出てくる列車ダイヤおよび発車番線は1996年10月の取材時のものです」とあるように、ある意味時刻表トリック的な展開の絵本、というよりは児童書です。1年生男子とその姉の6年生女子の二人旅ですが、姉が東京駅で乗り損ねてしまいこだまで追いかけますが・・・



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