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10. エマさんとベンさんのFC

 さっそく本題に入りましょう。

 映画『僕が跳びはねる理由』における、「アメリカ編」のエマさんとベンさんの話です。(他にインド・イギリス・シエラレオネ編があります)

 ここでは単刀直入に、映画の中での二人のFCの特徴を記述してみます。

 まずエマさん。茶色の髪を結んだ色白な女性。エマさんは映画で見る限り、普段はフレンドリーにニコニコしており、気持ちを落ち着けるためか、ときどき音楽を流したり、おもちゃで音を鳴らしたりという行動を取っています。ところが、FCのときになると途端に辛そうな様子に変わるのです。

● エマさんのFC
・FCはファシリテーター(介助者)が文字盤を持つスタイル。
・文字盤はステンシル(文字の形に穴が開いているもの)ではなく、普通の紙をラミネートしたものを使っている。
・エマさんの母親がファシリテーターを務めるとき、母親はエマさんの右側に座っている。母親は右手で文字盤を持ち、左手をゆるく握って空中に浮かせている。
・ファシリテーターの母親はゆるく握った左手を、入力させたい文字のある方向に動かす。エマさんの文字盤を指す右手は、母親の左手を追いかける。
・母親は握った手の中で親指を上下に動かしている。これで文字の細かい場所(縦の位置)をエマさんに伝えているのかもしれない。
・エマさんはFC中、よく「ノーモア…ノーモア…」という言葉をつぶやいている。字幕では「もうおしまい」と訳されていたように思う。それを言うと「嫌なこと」をやめてくれると分かっているのかもしれない。(英語が分かる人なら、もっと他の言葉も聞き取れるかもしれません)

 次はベンさん。メガネをかけた大柄な男性。映画の中では寡黙に微笑し、いつも穏やかそうに見えます。しかしベンさんの母親によると、そんな彼でも暴れてしまう時期があったそう。パンフレットによると彼は23歳ですから、思春期を経て落ち着いたということなのかもしれません。ガタイが良い方なので、その頃は周りの人はきっと大変だったのでしょう。

● ベンさんのFC
・FCはファシリテーター(介助者)がステンシル(文字の形に穴が開いている)文字盤を持ち、その穴にを棒のようなもの(鉛筆?)を差し入れるスタイル。
・ベンさんはFC中も穏やかな表情は変わることなく、非常にリズミカルに、迷いなく文字を指す。しかし実はだいぶ間違った文字も指している。かたわらにいるファシリテーターは、指された文字を逐一読み上げるが、間違った文字を指した場合にはなぜかスルー。
・たまにどうしても正しい文字を指してくれないことがあるのか、ファシリテーターが「最後はE」などと正解を言ってしまっている場面がある。
・ベンさんはFC中、文字を指すのに合わせて「…アス…アス…アス」という言葉を言い続けている。たまに「トゥ」とも言う。これはおそらく、文字を読み上げるファシリテーターに合わせて同じことをしてあげているのではないだろうか。「アス」や「トゥ」、また、それに類似する語は英語によく出てくるので(例えば「S」「us」「too」など)、頻出語句をチョイスしているのかもしれない。
・FCをしていない場面でベンさんが「アス…アス…」とつぶやいていることは基本的にないが、例外としてFCをやっていた直後には同じことをつぶやいている。映画ではアメリカ編の冒頭などでその様子が見られる。この場面ではエマさんの「ノーモア」も口から出ている。これは撮影した場面の順序が入れ替わっているためと思われる。(服装などから状況がFCの場面と連続していることが分かる)

 ……以上が映画館で2回、ネット配信で1回この映画を見た私の感想です。映画を見ていない方、また、見ていてもそんなに細部まで観察していなかった方には少し分かりにくいかもしれませんが、その点はご容赦ください。

 長くなってしまったので今回はここまで。

 続きはまた。