出典だ、出典をよこせ!~謎の「シェイクスピア名言集」に勝手に挑む…
このnoteを書くまでのあらすじ
ある日たまたま見てしまった「シェイクスピアの名言・格言23選|心に響く言葉を厳選紹介」と称するページ。しかし、その23の「名言」には一つたりとも出典が書かれていなかったのだった…。
https://metalife.co.jp/business-words/2136/
これらは本当にシェイクスピアの書いた言葉なのか!?
戯曲だとしたらどの作品のどのキャラの台詞だ!?
偽物の「名言」が混じっている可能性はないのか!?
…ということで、私のように「(書いてない出典は)読めなぁぁぁい!」となる後人がいるかもしれないので、調べた結果をまとめておきます。なんか「名言」の訳がちょっと変なような…というのもあるのですが、私もそこまで詳しくないので省略。原文は基本的に下記サイトから引用しています。
https://shakespeare.mit.edu/
※記事内容に誤りがありましたらコメント等でご指摘ください。
ジェシカ「But love is blind and lovers cannot see
The pretty follies that themselves commit;」
シェイクスピア作『ヴェニスの商人』第2幕 第6場より
※訳文(?)が半端なところで切れている。
ロザリンド「Love is merely a madness, and, I tell you, deserves as well a dark house and a whip as madmen do:」
シェイクスピア作『お気に召すまま』第3幕 第2場より
※なんか半端なので訳文の後ろにあたるところを足しておきました。
道化(フェステ)「I say, there is no darkness but ignorance;」
シェイクスピア作『十二夜』第4幕 第2場より
これは完全に手詰まり。
まず検索しても他のサイトが一切出てこない。
「shakespeare creature dream」等のワードで検索しても目星がつかない。
少しだけ似た「人間は感情の動物である(Man is an emotional creature.)」という文言(出典不明)なら存在するようだが関連は不明。
https://jp.quora.com/人間は感情の動物である-という言葉の出典を教えて
O, how much more doth beauty beauteous seem
By that sweet ornament which truth doth give!
シェイクスピア作 ソネット No.54より
※日本語文が短くてイマイチ確証は持てず。
日本語で検索した結果、なぜか「Civilization6 (Civ6 シヴィライゼーション6) 攻略Wiki」へと導かれた。当該ページ より一部引用
…つまり、シェイクスピアではない別の劇作家の作品が元のようだ。下は他の参考Webページ。※Act III, scene 1, line 151. Count Basil (1798)
https://quotepark.com/quotes/1878030-joanna-baillie-the-brave-man-is-not-he-who-feels-no-fear-for-th/
キャシアス「Men at some time are masters of their fates:
The fault, dear Brutus, is not in our stars,
But in ourselves, that we are underlings.」
シェイクスピア作『ジュリアス・シーザー』第1幕 第2場より
LEWIS「Life is as tedious as a twice-told tale
Vexing the dull ear of a drowsy man;」
シェイクスピア作『ジョン王』第3幕 第4場より
マルヴォーリオ(手紙を読む)「some are born great, some achieve greatness, and some have greatness thrust upon 'em.」
シェイクスピア作『十二夜』第2幕 第5場より
※これたぶん迷言だと思うんですけど…。
伯爵夫人「Love all, trust a few, Do wrong to none:」
シェイクスピア作『終わり良ければすべて良し』第1幕 第1場より
マクベス「Present fears Are less than horrible imaginings:」
シェイクスピア作『マクベス』第1幕 第3場より
マクベス「Life's but a walking shadow, a poor player.」
シェイクスピア作『マクベス』第5幕 第5場より
※有名台詞なのに「a poor player」のところだけ訳文でカットされてて可哀想だったので足しておきます。
クレオン「One sorrow never comes but brings an heir,
That may succeed as his inheritor;」
シェイクスピア作『ペリクリーズ』第1幕 第4場より
タイモン「Must thou needs stand for a villain in thine own work? wilt thou whip thine own faults in other men?」
シェイクスピア作『アセンズのタイモン』第5幕 第1場より
※なんか半端だったので訳文の前にあたる部分も足しておきました。
クローディアス「When sorrows come, they come not single spies
But in battalions.」
シェイクスピア作『ハムレット』第4幕 第5場より
マクベス「The labour we delight in physics pain.」
シェイクスピア作『マクベス』第2幕 第3場より
偽名言。シェイクスピアが書いた言葉ではない。
下記は参考リンク。『Fakespeare: 5 quotes commonly misattributed to Shakespeare』
https://www.folger.edu/blogs/shakespeare-and-beyond/shakepeare-quotes-commonly-misattributed/
※以前に同様の「名言」を調べたときのツイート。
ロレンス「Wisely and slow; they stumble that run fast.」
シェイクスピア作『ロミオとジュリエット』第2幕 第3場より
シェイクスピア作『ルークリース凌辱』より…らしい。
私が作品未読のため下手に語るのはやめておきます。下は参考リンク。
https://www.goodreads.com/quotes/56164-what-win-i-if-i-gain-the-thing-i-seek
ベネディック「I must not seem proud: happy are they that hear their detractions and can put them to mending.」
シェイクスピア作『から騒ぎ』第2幕 第3場より
※なんか半端だったので訳文の前にあたる部分も足しておきました。
アントーニオ「Do not, for one repulse, forego the purpose
That you resolved to effect.」
シェイクスピア作『テンペスト』第3幕 第3場より
エミリア「They are not ever jealous for the cause,
But jealous for they are jealous:」
シェイクスピア作『オセロ』第3幕 第4場より
※訳文は岩波文庫の『オセロウ』(菅 泰男・訳)のものと思われる。
魔女たち「Fair is foul, and foul is fair:
Hover through the fog and filthy air.」
シェイクスピア作『マクベス』第1幕 第1場より
(おしまい)