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7. FCは本当にインチキなの?【クレバー・ハンスのお話】

 さて、ここに至るまで一つの問題に触れてきませんでした。

 それは「FCとは本当に疑似科学なのか?」という問題です。

 しかし、それを語るには下準備が必要です。次の二つの物語をさらってから問題の中心に向かいましょう。

 物語の一つは、『クレバー・ハンス』。19世紀末のドイツに現れた、人語を解する馬の話。

 もう一つの物語は『ハリー・フーディーニ』。ポケモンの名前の元ネタにも抜擢された、同じく19世紀末の高名なる手品師。

 一見、どちらもFCとは関係がないように見えるでしょうが、私はこの二つこそ、FCを理解するための重要な知識だと思っています。

 さて、まずは『クレバー・ハンス』のことから語っていきましょう。この馬は人語を理解するとして有名になりましたが、さすがに言葉を話せたわけではありません。その代わり、人間の質問に見事に答えられたのです。例えば算数の問題を出題されれば、ひづめで地面を叩くことにより、正解の数を示してみせます。調べてみても飼い主が指示をしている様子はなく、ハンスの能力は本当のように見えました。

 しかし、さらに調べてみると隠れた事実が明らかになりました。ハンスは出題者や観客の無意識の反応を読み取ることで、「ここで鳴らすのを止めれば『正解』だな」と判断していたのです。そのため、出題者や観客の姿を遠ざけた実験を行ってみると、ハンスは「正解」を答えることができなくなりました。

 これはハンスの飼い主がトリックを使っていたわけではありません。ただ純粋にハンスが人間の無意識の表情や動作を見事に読み取れる馬だったのです。実験では人間が「ハンス」の立場になって「問題に答える」テストも行われましたが、その人間もまたハンスと同じように、出題者の反応を見て「正解」を出すことができたそうです。

(※ エピソードの説明は Wikipediaの『賢馬ハンス』のページを参考にさせて頂きました)

 ちょっと長くなってしまったので、手品師の話はまた次回。