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【お仕事】女性誌『LEE』さんのインタビューと学習まんが制作についてのお話

集英社さんの女性誌『LEE』のWEBサイトにて、学習まんがについて取材していただきました。

『世界の伝記NEXT』の担当編集様がたが、シリーズの制作テーマや大事にしていることなどをお話し下さっています。
私は漫画を担当させていただいた『北里柴三郎』についての制作過程を取り上げていただきました。ラフも載せていいですか?と言われていたので、何が載るのかとドキドキしていましたが、漫画の中のあのシーンのネームでした。
縁側での叔母上とのやりとりは担当氏のお気に入りだそうです(笑)。

児童向け漫画は、意外な部分が意外な方面にウケてくれたりするので面白いですね。勉強になります…(笑)。
他のラフやイラストについても掲載許可を頂いていますので、後日またページをあらためてご紹介させてください。

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集英社版・学習まんが 世界の伝記NEXT『北里柴三郎』
(紙版、電子書籍版ともに発売中)

私は、子供の頃は漫画禁止の家に育って、唯一許されていた学習まんがが存在していたからこそ今があるようなものなので、恩返しのような気持ちで自分も楽しんで描かせていただいております。

インタビュー内にもありましたが、集英社さんの最近の伝記漫画は、その人物の生い立ち、特に子供時代の描写を大切にします(例外もあるかもしれませんが、少なくとも私が知る限り)。

子供にとって、大人になるまでの時間というのは、大人が思うよりずっと長いものです。
その偉人は子供の読者さんと同じ目線の頃はどんな子供だったのか、大人になるまでのその時間をどのように歩んできたのかを知って共感して欲しいという意図がそこにあると思います。
北里柴三郎も、最初から医学の道を志していたわけではなかったといいます。子供の頃はむしろ全く違う道を模索し続けていました。
その「なぜ?」の気持ちを大切にしたい、ということなのではないかと、私なりに考えながら制作に取り組んでいます。

北里柴三郎や渋沢栄一、津田梅子といった人物をご存じの方、また漫画を読んでくださった方はお気づきかと思いますが、約120ページの漫画にその偉人たちの子供時代を丁寧に描いた上で、その後の主な功績やその過程を一通り物語の中で収めようと思ったら、ページがまず足りないのです。
ですから、同じ人物を扱った別の漫画書籍では、子供時代はほぼカットしていることもあります。
これは製作意図やターゲットになる年齢層、重要視したい部分が出版社さんごとに違うということなので、どれが正解ということはありません。
ただ、私が近年制作に参加させていただいている集英社さんの児童向け学習漫画は、子供時代を丁寧に描いているというのが印象的な構成になっています。

ですから、たとえ有名なエピソードだとしても、後半はどうしても削らなければいけない事項というのが数多く出てきます。
歴史についてある程度知識のある大人の方であれば、児童向け漫画を読んで

「何故あの話を描かないんだ!すごく大事なのに!」

…という不満も、おそらく1つや2つではないと思います。
大河ドラマを楽しみにご覧の方なども、きっと毎年似たようなことをお思いのことでしょう。

今回『北里柴三郎』でも、実は総ページ数に対してだいぶ多めの原作シナリオを手元にいただきました。
最初に一通り目を通させていただいた時にまず思ったのは、
『これは面白い!でも絶対全部入らない…。』でした。

編集部さんのほうでもそれについては把握していたようで、子供時代以降はネームを作りながら、『どれを残して、どれを削るか』の話し合いを繰り返し重ねることで製作を進めることになりました。
本来は顔出し程度にでも出番があった著名人も、「一度きりしか出番がないのに説明が多く必要」などの理由でカットされてゆきます。

『実は、北里柴三郎はこんな人物とも接点があったんですよ』という話は、本来それだけでも興味深いものですが、それもある程度知識がある読者向けの作り方ですので、残念ながら児童書には向かないのです。

長与専斎なんかも本来はもっと凄い人なんですが、今回の漫画だけ読んでるとあまりそうは見えませんよね。初登場の時におもな功績などを含めた豆知識を入れるかどうかなども話し合って迷いましたが、今回はあくまで柴三郎の物語なので、話の流れを優先にということで今の形に落ち着いています。

そうやって大人の我々は、時には泣く泣く繰り返し情報を取捨選択した上で、最終的に本編で触れられなかったものは子供目線でも楽しめそうなものだけを残して、巻末のコラムなどでエピソードを紹介したりすることになります。

私がまず、漫画担当としての目線で残したいエピソードのリストを提出すると、編集部さんからはまた違う回答が返ってきました。
私はその作家性ゆえ、どうしてもシナリオ内にある家族や友人、恩師など重要人物との関わりやちょっとした意外なエピソード、またその行く末など、人と人との面白い話を是非知ってほしくて描きたいと思ってしまいます。

ですが、学習まんがの編集さんの視点は違います。
それがつまり、インタビュー中にもある「子どもに響くエピソードだけを残すようにしている」という部分に繋がってくると思います。

それらの回答を経て最終的な物語構成が決まった時、『はじめてこの人物に触れる人向けの本としてはこれで良かったのだ』と思いました。

私は、今回の本には収録されていない多くのエピソードを、原作シナリオを通して既に知ってしまっています。
そして、描きたかったけど描ききれなかった、読者の方々にぜひお伝えしたかったものの叶わなかった話というのも数多く存在することを認識しています。

その中のごく一部は巻末のコラムで少しずつ紹介されてはいますが、
後から考えてみれば、私が描きたかったそれらはその人物の主な功績とその過程というよりは、豆知識的なエピソードや人物同士の交流における話が多かったりしますので、今回の『北里柴三郎』を子供の頃に読んでくださった後、たとえば中高生や大人になってからのほうが響くエピソードに該当するのかもしれないと考えるようになりました。

ひとくちに児童書といっても、巻末コラムや注釈・解説など含めて大人の方にもお楽しみいただけるよう心掛けていますが、基本的には子供が読んで理解できる本として作られています。一度読んだらそれで完結する子もいれば、更に興味がわいた子は図書館やネットなどで色々調べたり、時には映像作品に触れるなどして知識を深めてゆくのでしょう。

ですが、新書などの大人向けの本格的な本へのステップに行くまえに、児童書の続きに読めそうな、中高生向けくらいの(学習)伝記漫画というのもあって良いんじゃないかと、今回書き残したエピソードを思いながら感じたりしました。それなら今回カットになったあれやそれも描けたのではないか、…と。

もしくはシナリオの川﨑先生に再構成していただいて、北里柴三郎の学習ラノベを出版していただくのは如何か…?など、心の中で様々な思いを巡らせたりしました。(勝手な妄想を…川﨑先生、申し訳ございません。)

今回、『北里柴三郎』を描くにあたって、3年後に一緒に新紙幣になる渋沢栄一と津田梅子も少しずつ独学で調べてみたのですが、どれも
「これどうやって120ページにおさめるんだ…」と目眩がしそうになりました。

史料が少ない昔の人物を学習漫画として作るのは大変なことですが、史料や写真までもが沢山残っている近代の人物というのもそれはそれで大変なものです。
渋沢栄一は言わずもがな、津田梅子に至っては、私は父親の人物像にまず興味が釘付けになって、そこから先に進まない有様でした。

あれもこれも面白いから!とか、中高生・大人向けの伝記漫画を~、ラノベとか〜?と、ちょっと編集さんにその辺りのお話をしてみたこともあるんですが、これといった反応はいただけなかったので、ウチでは想定していないという事なんだと思います。
よく考えてみたらここは児童書の編集部でした。なるほど当然の反応ですね(笑)。
口では色々言えても、いざ形にするという段になると簡単では無いと思いますが、いずれはそういった事にも取り組めたら楽しいと思うので、児童書に限らず常に新しいことにもチャレンジしていきたいものです。

最後に、『日本の伝記SENGOKU 豊臣秀吉』の監修でお世話になりました、歴史作家の河合敦先生が執筆された
北里柴三郎と福沢諭吉のお話を引用させていただきます。今回の漫画で軽く触れたエピソードも含まれていますが、その部分もより深く知っていただくことができると思います。

そしてこの二人の友情の話は、できることなら私も掘り下げて漫画に描きたかったです。大人の皆さん、是非読んでください!(No147に収録されています。)
https://www.fielding.co.jp/cr/magazin.html

↑こちらが漫画のシーン。ちょうど集英社の児童書編集部様が取り上げて下さいました。ありがとうございます!
合わせてお読みいただけたら嬉しいです☺️

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