途中で見るのをやめようと思った映画『ザ・ケーブ』
正直、見るのが辛くて、「もうここまでにしよう」と何度か思った映画。
でも最後まで見たのは、若い女性小児科医であるアマニや、彼女と一緒に働く医師たちの、命を懸けた抵抗を見届けたいという思いから。
見終わってもまだ消化しきれない気持ちを、ここに書きます。
直視するのがつらすぎる、シリア・東グータ地区の現実
夏に続く今年2回めのオンライン難民映画祭『WILL2LIVE』。
内容が難民だけにハードだけど見ごたえのある映画が上映されていて、見るのにはちょっと覚悟が必要。
特にこの『ザ・ケーブ』は、悲しくなるシーンが多くて、見ているのが辛かった。
シリア内戦で包囲された東グータ地区。
毎日のようにやってくる戦闘機の爆音、跡形もなく破壊され、黒煙を上げる街並み。
爆音のあとには、血を流して病院に担ぎ込まれる人々。
中にはまだ幼い子どもたちの姿もあって、痛々しくて見ていられなかった。
やり場のない怒りと無力感に襲われる
どうしてこんなふうに、罪のない人たちが爆撃に怯えて、洞窟(ケーブ)に隠れて息を潜めて生きなくてはいけないのか。
まるでゲームか何かのように、まるで蟻を蹴散らすように、簡単に人の命を奪い、街を壊していく。そんな非道をどうしてできるのか?
毛穴が逆立つような怒りが湧き上がってきて、それからそこに住む人たちや子どもたちを思って涙が出た。
その東グータに住む人々を、文字通り命を懸けて助けているのがアマニを中心とした医療チーム。
彼らの心の葛藤や苦しみも赤裸々に描かれていて、胸が締め付けられる。
こうして映画を見ているだけでも辛いのに、成すすべもなく、目の前で理不尽に命が失われていくのを見る彼らの心の痛みはどれほどなのか……。
地獄の中で光る希望もある
常に爆撃や化学兵器に怯える地獄のような日々でも、子どもたちと接する時のアマニの柔らかい表情や会話が微笑ましくて、少しホッとする。
「なんで生きているの?」と問う少女に対して、「大事な存在になるため」と答えるアマニ。
「私達は大事な存在にならなきゃ」
希望が見いだせない荒廃した世界だけど、でも子どもたちは可能性のかたまり。生きてさえいれば。
アマニは、子どもたちに束の間の心の安らぎや笑顔を与えて、同時に生きる希望も伝えているのではないかな。
シリアで内戦に怯える子どもたちや、世界中で故郷を追われた子どもたちが、逆境の中でも自分が大事な存在であるということを信じて、たくましく生きていくことを願わずにはいられない。
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