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『長野電鉄』を克服する

このような良く分からないお出かけの原因は、祖父にあった。毎年、お盆の時期(今年は都合が悪く8月上旬)に曾祖母に祖父と会いに行く。少し離れた所に住んでいるので、今までは車で行っていた。その車内では、祖父がマシンガンのようにトークを繰り広げ毎回耳が壊れてしまい頭を悩ませていた。
曾祖母の家を改めて地図で確認すると、なんと長野電鉄の沿線に住んでいたので今回、電車で行くことにした。とはいえ、私は長野電鉄が苦手であり、乗ることに抵抗があった。曾祖母宅の最寄り駅までの運賃を調べてみると、その運賃は、長電1日フリー切符とほぼ同額であった。それならば、フリー切符を使って長電を乗り倒したほうが得である。そう考えて、曾祖母の家は一つの経由地に設定し、私は1日長電を乗り倒すプチ旅に出た。
今回は、写真多めで書いていこうと思う。
①長野駅にて
出発は長野駅から。フリー切符を買いホームへと向かう。改札前では、野菜や卵などが売られているなんとも奇妙な駅だ。

長電フリー切符を買った。
いまだに手動改札の駅である
「こんど」と「つぎ」の区別は考えれば考えるほどややこしくなる。

②長野電鉄8500系で長野→延徳
相変わらずに古い車体が待機していた。

元東急8500系。現:長野電鉄8500系として活躍している。

乗車率が高く、車内の写真が撮れなかったのだが冷房設備がなんとも面白かった。冷房と扇風機が天井についており、風が循環する仕組みになっていた。電車に扇風機がついているとは、いつの時代の話なのか…。
この列車は、抑速ブレーキを装備していないため信州中野までしか運行できない。(後述)
車内にはSOSボタンもない。あせた色のロングシートに座り、とても令和とは思えない車両である。
曾祖母の家へ向かうため、10時26分長野駅を出発し11時12分に定刻通り延徳駅に到着した。
延徳駅にて
曾祖母の家でお寿司を食べ、少し話を聞いたりした。

畑が広がる。
曾祖母宅までの道中、日影が一か所もない。

延徳駅舎はとても趣があった。かつては、長野市へ生き帰りする人や湯田中のほうへ温泉に入りに行こうとする人などで栄えたのだろうか。割と立派な駅舎だった。

駅の前はロータリーになっていて敷地は広い。
延徳駅舎。立派な一軒家みたい。
待合室。
高社山をのぞむ駅
湯田中行きがやってくる。

③長野電鉄3000系 延徳→夜間瀬
長野電鉄の運行区間は、信州中野から湯田中までは県内でもトップクラスに急勾配な区間として有名である。
したがって長野駅から延徳まで乗車した8500系には勾配用のブレーキが装備されていないため運行できない。
普通電車で湯田中まで行こうとするならば、この3000系に乗っていくしか方法はないのである。

改めて、3000系(夜間瀬駅にて)

さて、何処に行こうかと列車内で考える。いきなり終点の湯田中に行くのは少しもったいない。そして、この1日フリー切符には特急料金も含まれているとのことなので、せっかくならば特急にも乗りたい、とすると帰りは湯田中からでないと帰れない…などといろいろ考えた。
停車案内を見て考えた。候補に挙がったのは、「中野松川」、「信濃竹原」、「夜間瀬」、「上条」この4駅だった。だが、この4駅すべて下車することは時間的にも不可能だった。駅に入る瞬間に直感的に決めようと思い「中野松川」は見送った。「信濃竹原」はすごく魅力的であったが見送り、「夜間瀬」で下車した。
④夜間瀬駅にて

非常に景色の良い駅だった。
一日平均乗車人数は70人となかなか多い(2018年現)
登り坂の途中にある
待合室
小川がある
大小の川がいくつかある。
駅の前にあった激渋食堂
普通の標語なのに、堂々と名前を書いていて恥ずかしい
駅周辺にある「豊受社」 神社だろうか

長野電鉄は、信州中野から湯田中までの区間、運行本数が非常に少ない。ここからは、計画を立てないと帰るのが夜遅くなってしまう可能性も出てきたので時刻表を睨む。
帰りの特急を決め、逆算していくと、上下各1本ずつ乗れそうだった。となれば、先ほど惜しくも下車しなかった「信濃竹原」に行ってみようとなり、急遽下ることにした。

信州中野行き。乗車率は非常に低い。

⑤長野電鉄3000系 夜間瀬→信濃竹原

3000系の車内。貸し切り状態だった。
夜間瀬-信濃竹原の車窓。

⑥信濃竹原駅にて

思っていた通りこれまた渋い駅だった。
待合室
渋い。
懐かしい運賃表示も残る。
湯田中方向の待合室は入れなかったので写真が上手く撮れなかった。


一日平均乗車人数は28人と少ない。(2018年現)

40分くらい時間があったので、周辺を散策。驚くほどに、何もない。ぶどう畑が一面に広がる。一か所、有限会社竹原鉄鋼という鉄鋼所があった。
景色はよく、高社山の眺めが雄大であった。

素晴らしい景色に感動する。
駅周辺
きれいな山々

★長野電鉄の地理的なことについて
今回、曾祖母宅がきっかけで長電フリー切符を買ったがもう一つそうするきっかけになったものがあった。それは、人から借りた「地図から信州が見えてくる」という一冊の本だった。その本の最初に、『県内の最も急勾配の鉄道-長野電鉄旧山ノ内線』というタイトルで紹介されていた。特に中野松川~湯田中間は急勾配であり、その中の「中野松川」、「夜間瀬」、「上条」はあまりに急勾配な駅で「停車場」ではなく「停留場」扱いになっているそう。(なお、普通「駅」=「停車場」である。)

夜間瀬に停車中の列車。急坂にホームがあることがわかる

実際、そんなに急勾配な駅なのか自分の目で確かめてみたかったのもあった。

信濃竹原駅長野方向に向かって撮影したもの。

上の写真、線路が余っているように見えるのは『脱線ポイント』と呼ばれるらしい。これは、長野方向に設置されているから、湯田中から急斜面をすべるように降りてきて、万が一ブレーキが効かなかった場合はここでわざと脱線させるらしい。このことを知ったとき、なんとも危険な対処法…とも思った。
実際に、この『脱線ポイント』も見ておきたかったので、満足した。

⑦長野電鉄3000系 信濃竹原→湯田中
さて、話を戻して。
再び3000系で終点の湯田中へと向かった。

信濃竹原駅にて。湯田中へと向かう。乗車率は低い。

正直なところ、湯田中にはさっぱり興味がなかった。別に風呂に入りたいわけでもなく最後は特急で帰りたかったのでわざわざ湯田中へ向かったのである。

⑧湯田中駅にて

湯田中駅舎。

ホテルの送迎の人で賑わっていたのも束の間。あっという間に人がいなくなってしまった。特急で帰る時間まで2時間45分もあったので近くを歩く。この長い時間を風呂にも入らず、猛暑の中で街を歩く気にもならなかったが仕方がない、ひとまず歩き出した。

湯田中温泉街
綺麗な川と山
いい眺めだった。
川辺で一休み。トンボがたくさんいた。夏の衰退を感じさせる。
風がさわやかだった。
神社もあった。「湯宮神社」
「動き岩」という言い伝えがあるらしい。
湯宮神社の案内。少し読みにくい角度で撮影してしまった。
神社の一角に金刀比羅宮
その説明書き
青い栗が落ちていた。
駅に戻ってきた。
待合室に入ると、冷房が入っていた。ありがたい。
折り紙があった。誰が欲しがるのだろうか(外国人向けかもしれない)

そうこうしているうちに特急が入線していた。

⑧長野電鉄2100系 湯田中→長野

2100系
正面。
方向幕。
車内半分は進行方向逆向きの席、通称「集団見合い席」。欧米発らしい
なぜ欧米文化を取り入れてしまったのか…
冷暖房吹き出し口。飛行機みたい。
荷物収納棚も飛行機みたい。

元成田エクスプレスであるから、車内は飛行機に寄せられているような気がした。B737を連想させる。
それにしても、元成田エクスプレス車両が長野の単線を特急として走っているとは、なんとも面白い光景であることに改めて気づかされた。

車窓。乗車率があまりにも低い。
車窓。

あまりスピードも出さずコトコト揺れるので、うつらうつらしていると信州中野に着いた。
長野県内で「信州」がつく唯一の駅名、それが「信州中野」である。個人的に、「信州」というと中・東・南信のイメージなのだが…(これをいうと北信の人たちが怒るかもしれないが…)

信州中野駅
「桜沢」→「都住」間。田園地帯が広がりきれい。
長野市と須坂市の境である村山橋

あっという間に長野に到着した。

⑨振り返る
私はもともと長野電鉄が嫌いであった。その主な理由として「老朽化」があった。しかし、今回いろいろな駅を巡ったり景色を見ていて、その考えは間違っていたと思わされた。逆にあの田園地帯を真新しい電車が走っていたら奇妙だし、何もないところにピカピカの駅舎が建っていたらどう考えても周りと不釣り合いだろう。長野電鉄は、やはりこのまま趣を残しておいておいたほうが良いと思うようになった。とはいえ、駅を毎日使う人や電車通勤の人の中には新しく使いやすくなってほしいと思っている人が多いと思われる。「観光」と「生活」の差である。自分も、登下校で時々長野電鉄を使うときは、本当に設備の古さ(待合室からベンチまで)を感じ、新しくなってほしいなあと思う時が大半だった。
今後、「趣」も頭に入れつつ長野電鉄を利用したいと思えるようになった。

★いやらしい話
今回、長電フリー切符を2070円で購入した。
果たして、元を取ることはできたのだろうか。
①長野→  延 徳:880円
②延徳→夜 間 瀬:330円
③夜間瀬→信濃竹原:170円
④信濃竹原→湯田中:190円
⑤湯田中→ 長 野:1190円
⑥特急料金    :100円(激安である)
       合計:2860円
810円得をしたことになる。
長野→湯田中を往復で利用するときはフリー切符を買ったほうが安く済む。長野と湯田中を往復すると2380円だが、1日フリー切符だと2070円。310円安く往復できる。
ぜひ、おすすめの切符である。

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