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走りたい


5回目のランナーは、走って考えを昇華してしまいたい。

開業は辛い。
臨床だけをしていた頃は
臨床だけが辛かった。

金はどこからかもらえればよかった。
金が降ってくると思っていたわけではないけれど
そのくらいの態度だったと
今になって思う。

ストレスが多い。

同期で早くに開業した医者が信じられなかった。

私より少し若くて
整形外科だった。

明るくて力強くて
よく笑ってよく飲む…、
整形外科医に典型的な彼の
facebookの昔の投稿を読み返してみたら
「でも辛いこともあった」
とカラッとした
ひとことが添えてあった。

大学の時には近しい間柄でもなく
挨拶程度であった。
卒業して研修が終わり留学から帰ったある日
開業の道を先に進む先輩として
私は彼に自分の開業を報告をした。

毎日ストレスだ。
そういう弱音もつい書いてしまった。

「そうだよね。開業はストレスあるよね。
でも夢もあるよね。」

あのfacebookの笑顔でこの言葉を口にしている姿を
頭に浮かべてみたら
自分の中にまだ笑う力が残っていることに
気がつけた。

ありがとう。

走るよ。私は。

君のように笑ってはいられないけれども。
君のように大きな家に住んで
広い庭でバーベキューをやるわけには
いかないけれど。

使い方にも慣れてきた
Apple Watch
を操作する。

大雨のあとの
信じられないほどの澄んだ空気を吸って
君の住む街へ続く
空の下で。

青が美しい。
そこから漏れた純粋な気体。

走りたい。

そうしなければ忘れられない。
忘れられるわけはない。
すこし距離を置ければよい。

悲しくもない。
残念なのかもしれない。
何が残念なのだろう。

信号は赤です。

Apple Watchが喋るのか
信号が喋るのか。

少しの段差で足を挫かないように。

たったの数段で命を落とす者もいる。

それが医者の場合だってある。

若くて
体力があって
大病院のオーナーで
家族を私を患者を励ます
整形外科の可能性もある。

「ドッキリ」という
札を持って
現れてくれたら…

友達が言った。

別の友達は
安らかに横になっていた、
嘘ではなかったと言った。

残念なのは
置いてきぼりになった私自身だ。

脳死から
たったいま亡くなったメールが届いた彼のことさえ
考えられない。

弾む息。
苦しくても走れ。

もっと苦しかったに違いない。

Rest In Peace

どうぞ
安らかに。

夢はないけれど
君のおかげで
タイムが縮まった。

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