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ベルリン酒場インテリア考

「ベルリン酒場探検隊レポート」

今回は趣向を変えて、ベルリンの酒場におけるインテリアについて考えてみたい。
これまでベルリンで訪れた酒場は30を優に超えた。この経験から酒場のインテリアの大まかな傾向が見えてきたので、ここにレポートを提出する。

レポート提出者:久保田由希

ベルリンの酒場は「昭和」か「西洋アンティーク」

プロフィール記事「ようこそベルリンの酒場へ」でも書いている通り、われわれベルリン酒場探検隊が考える酒場とは、ドイツ語で「クナイペ (Kneipe)」と呼ばれる店である。おしゃれなバーやガストロパブは対象ではないことを前提とする。

これまで訪れた経験から言えることは、歴史が長い酒場が多いということだ。創業100年を超える店も珍しくない。当然この場合、経営者は何回も代替わりしている。家族間で継がれることもあるが、そうでない者が後継者になることもある。創業者が何十年も続けている店もある。逆に言えば、この時代に新たに酒場を開くのは難しいということだろう。

つまり酒場の多くは、最近できたものではないということだ。そのため店内の調度品は、創業時のスタイルを保ったものや、数十年の月日を感じさせるものが見受けられる。平たく言えば「昭和」か「西洋アンティーク」だろう。創業十数年の酒場ならそこは「昭和」、100年を超える店ならば「西洋アンティーク」的空間が広がっている。
以下、空間を印象づける代表的な品を挙げてみよう。

ティファニーランプはレトロな薫り

ティファニーランプとは、アメリカの宝飾店「ティファニー」創業者の長男ルイス・カムフォート・ティファニーが手がけたステンドグラスによるランプである。厳密に言えば、現在販売されている品はティファニー氏のオリジナルを模したものなので「ティファニースタイル・ランプ」であるが、ここでは一般的な名称ということで「ティファニーランプ」としておく。

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(さまざまな酒場でのティファニーランプの使用例)

このティファニーランプを酒場で見かける場合が多い。これまでの経験からすると、2割ぐらいだろうか。
酒場以外の場所でこのランプを見ることがなかったので、この確率は高いと言えないだろうか。じつは酒場探検を始めるまで、「ティファニーランプ」という名称があることを知らなかった。

なぜこのランプが酒場にあるのか。見かけるたびに聞いているものの、今のところ有力な手がかりは得られない。

推測できるのは、酒場の創業当時に流行っていたのではないかということである。ティファニーランプのデザインは、ヨーロッパでは19世紀から20世紀に流行したアール・ヌーヴォー(ドイツではユーゲントシュティール)様式だ。ティファニーは19世紀後半にアメリカで自身の会社を設立し、アール・ヌーヴォー様式の作品を制作している。歴史ある酒場はこの時代に生まれている。そのとき店内に置かれたティファニーランプが、のちの酒場のインテリアにも影響を与えているかもしれない。
(以上推測である)

アール・ヌーヴォーがヨーロッパで流行った19世紀末から20世紀は、日本では明治時代の終わりに当たる。大正時代はアール・ヌーヴォーというよりもアールデコのようだが、ティファニーランプを見て「大正浪漫」「昭和レトロ」という言葉が浮かんでも、あながち見当違いでもあるまい。

ちなみに、静岡のハンバーグレストランチェーン「さわやか」でも、このティファニーランプが店内で使われているという報告を日本から受けた。

テーブルセンターの存在感は大きい

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テーブルセンターとは、テーブルの上に敷く小さな布である。レース製のこともある。
小さな面積だが、じつはあるとないとでは大違い。小さな布1枚を敷いただけで、一気にレトロ感が増す。花柄やレース製だとより一層効果的で、なおかつ、テーブルが木製あるいは木目の化粧合板だと、昭和感が倍増する。

かわいいカフェとは微妙に異なる白いレースのカーテン

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白いレースのカーテンと聞くと、ロマンティックでかわいいインテリアを想像するであろう。しかし、ベルリンの酒場のそれは、微妙に違う。やはり「昭和」(厳密に言えば昭和30〜40年代か)という言葉が似合うと思う。

堅牢な木製の椅子

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比較的古い酒場の傾向として、木製の椅子が使われている。写真のような木の椅子は、飲食店で使われている典型的なデザインである。どうだろう、昭和を感じないだろうか。座面に敷いた柄物のクッションもいい味わいだ。

今後も酒場活動を重ね、考察を深めていきたい。

ベルリンのさらなる秘境酒場の開拓と報告のために、ベルリン酒場探検隊への支援を心よりお待ち申し上げる。