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ベルリン、東京、酒場の今日

すっかりご無沙汰してしまった。ベルリン酒場探検隊である。
世界各国に暮らす物書き仲間によるリレーエッセイ「日本にいないエッセイストクラブ」としての参加である。前回走者については、文末をご覧いただきたい。リレーエッセイのこれまでの記事は、マガジンにまとめられているのでこちらもご一読いただければ幸いだ。

さて、リレーエッセイ7周目のお題は「最近はじめたこと」である。
最近のいいニュースまずは取り上げたい。

レポート提出者:久保田由希

 祝!ベルリンの酒場、屋外限定営業再開

昨年2020年11月からテイクアウトとデリバリーを除き全面営業停止になっていたベルリンの飲食店だが、今年2021年5月21日から屋外のテラス席に限って再開されたのである! この中には酒場も含まれている。
折しも22日から24日までは三連休、しかも天気に恵まれたとあって、屋外でビールを飲む喜びにあふれたベルリンの友人たちからの知らせが相次いだ。ついにこの日が来たのだ。日本に帰国している隊員久保田も感極まるものがあった。

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(写真はコロナ禍以前のもの。この光景が戻りつつある)

ただし、テラス席での飲食については条件がある。24時間以内に出たコロナ陰性証明、ワクチン接種証明、コロナ罹患後の快復証明のいずれかが必要だ。さらに同じテーブルに着席できる人数や世帯数に上限がある。店側にもテーブルの間隔や来客の連絡先リスト作成など細かい規則が課せられている(しかし、実際にそれらをすべて実践できるかは、また別の問題だ)。知人の飲食店オーナーは「細かくてスタッフのオペレーションが大変」とこぼしていた。

ベルリンでは高齢者はずいぶんと接種が進んでいるようだが、若い世代では1回目の接種が済んだ人は医療関係者など一部のようだ。そのため、テラス席で飲むためにわざわざ陰性証明(街角に無料の迅速検査ブースがあり、並んで待てばすぐに検査できて結果がわかる)を取ったという話を多く聞いた。自分もベルリンにいたら、たぶん同じだっただろう。なんせ11月からずっと飲食店を利用できなかったのだ。鬱になってもおかしくない。

テラス席限定営業再開になったのは、「7日間指数」(過去7日間の人口10万人あたりの新規感染者数)が100を切ったからである。この基準はドイツで統一されており、各市郡がそれに則り、制限を強めたり緩めたりしている。ベルリンでは7日間指数が100を切ったためテラス席営業が再開になったわけで、全国一律での再開ではない。

ドイツでは「◯◯の数字が××になったら△△する」といった基準づくりが明確で、それに則って措置が展開する。考え方が理路整然としている。往々にして措置の内容が細かく、誰もがそれに従う、あるいは理解できるかは別として、少なくとも政府の考え方と行動は首尾一貫しており、納得はしやすいと思う。

酒場とはなんぞや

一方、東京である。
東京は2021年5月27日現在緊急事態宣言が発令中で、5月末日まで続く。そして、どうやら6月まで延長されるのではないかと囁かれている。
ちなみに、5月20日から26日までの東京の7日間指数は、独モルゲンポスト紙によれば31である。ベルリンは5月19日から25日までで33だから、その数値はずいぶん近づいてきた(7日間指数を調べるには独モルゲンポスト紙のインフォグラフィックが見やすい。
https://interaktiv.morgenpost.de/corona-virus-karte-infektionen-deutschland-weltweit/ )。

緊急事態宣言下での東京の飲食店には、休業要請が出されている。もしくは酒類の提供を中止するならば、20時までの営業時間短縮要請となる。東京の酒場はシャッターを下ろしたり、テイクアウトをはじめてみたりと、各々が懸命に考え、行動している。

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隊員久保田は近年めっきり酒量が減り、アルコールがなくても困ることはない。私にとっての酒場の魅力はその雰囲気や、その場で過ごす時間にある。だから、アルコールなしでも営業を続けてくれればうれしい。ノンアルでもまったく問題ない。

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しかし、そうではない人もどうやら多そうだということが、今回の緊急事態宣言でわかった。いつもは大賑わいの酒場が、宣言を受けて酒を出さずに営業しているが、ガランとしているのだ。密かに酒類を提供している店は、どうも混雑している様子。ノンアルサワーではダメだ、ということなのだろう。

ある酒場では、シャッターに「酒類が提供できないのであれば、意味がないので休業します」という旨の張り紙がしてあった。
ある店の主人は「料理は酒に合うものを出してるんで、酒がないとね……。なんとか営業はしてますけど、これが続くようならお客さんはもう戻ってこない」と悲鳴を上げていた。
酒のない酒場など、酒場ではない。そう考える人も多いのだろう。酒場の意義は、人それぞれだ。

こうした現状で、酒場探検隊として思うことはいくつかある。

酒場のある光景が消えてほしくない。だから現在営業中の酒場は応援の意味も込めて行く。テイクアウトは、スーパーよりも飲食店を利用する。
・酒場に行くときは一人または同居の家族とだけ。友人とは行かない。
・同居の家族と行くときは会話は控えめに。手指消毒はきっちりと。
・混んでいる店には入らない。
・都の要請には根拠が曖昧だと感じる部分がある。たとえば「飲食店営業は20時まで」だ。ウイルスは時間帯で変わるわけではない。昼でも大人数でぺちゃくちゃと喋りながら飲食をすれば、リスクは増える。たとえば吉野家が22時まで営業したところで、おそらくリスクは増えないだろう。リスクを基準に考えるのならば、営業時間や酒類の有無ではなく、同席する人数の制限やテーブル間隔に基準を設けるほうが合理的なのではないか。この「合理的判断がされているとは思えない要請」を耐え難く感じるのは、私がドイツ帰りだからだろうか。

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(酒場のある光景が消えてほしくない)

今回はいつもの探検隊レポートらしくなかった。早くまた以前の調子に戻りたいものである。


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前回走者、アルゼンチン在住奥川駿平さんの記事はこちら。

コロナ禍の運動不足で筋トレをはじめた方も多いだろう。いったん筋肉が付きはじめると、やめられなくなるようである。ジムで鍛える奥川さんがYouTubeで減量食動画を見つけ、最終的にアルゼンチンで本格牛丼を作り、さらなる深みにハマっていく様子が、ガチムチ筋肉動画サムネイルとともに綴られている。

今回のリレーエッセイ「最近はじめたこと」は、われわれ酒場探検隊がアンカーだ。次回より新たなテーマで再び奥川さんからスタートするので、お楽しみにお待ちいただきたい。

  

ベルリンのさらなる秘境酒場の開拓と報告のために、ベルリン酒場探検隊への支援を心よりお待ち申し上げる。