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未経験でWebデザイナーとして採用されるなら「ポートフォリオ」は作るな

はじめまして、藤野裕太と申します。ベルキーファというWeb制作会社を営んでおります。
初めてnoteに投稿します。

※ここでの「ポートフォリオ」とは「架空のサイト作成やバナー模写など、自らの訓練成果を蓄積し、求人応募時に会社へ提出するのが主目的の資料」を指します。

掲題に入る前に、私の経歴を軽く紹介します。

・大学(経済学部)卒業後、一部上場企業のITシステム部に入社
・26歳、Webデザイナーを志し独学を開始
・28歳、小さなWeb制作会社に入社
・29歳、趣味で作ったWebサイトがきっかけで、プロ野球チーム公式サイトのデザイナーに抜擢される
・30歳、後に少し大きくなるWeb制作会社に、創業社員として誘われ転職
・32歳、自分の会社を作って独立

と、順調に職歴を形成できたと自分では思っています。(しかし独立後の成長は極めて緩やか)

そして2020年に新しく会社を作ったのを機にTwitterを始めたのですが、そこにはWebデザイナーを志すたくさんの若者がいて嬉しく思ったのと同時に、いわゆる「ポートフォリオ」を作るのに一生懸命になっている方も多いことに気づき、この記事を書くことにしました。

私が思うに、未経験でWebデザイナーの採用を勝ち取るのに「ポートフォリオは不要」です。
そう考える理由をご説明します。



Web制作会社の面接官は何を見る?

Web会社の面接官は、日頃から良いネタは無いかとプロが作ったWebサイトを朝から晩まで巡回している人たちです。仕事として扱っていますので真剣に見ています。
当然目が肥えていますし、自分で作れてしまう人なのかもしれません。

ここで仮説を立てます。
そんなWebサイトマニアと呼ぶべき面接官が、初心者が勉強目的で作ったポートフォリオを見て「これはすごい!採用!」などと思うはずがありません。
意識せずともプロが作ったものと比較をしてしまうのでこれは仕方ありません。

突出して優れたものであれば話は別ですが、面接官を唸らせてしまう程の人は、おそらく一般的な就職活動はせず、企業から誘われたり、個人で仕事を請けたりしているはずです。

仮説2です。
面接官は経験上「Webに興味のある若者は、デザインでもコーディングでも教えれば何でもすぐに吸収する」ことを知っているので、未経験者の面接において「現時点でどれだけWeb制作の腕があるか」はそれほど重視しません。
最低限のタグが書ければOK、くらいに思っているかもしれません。

評価するとしたら、人柄、思考、会社の色に合っているか、などだと思います。

仮説が正しいとすると、せっかく頑張って作ったポートフォリオは、武器としてそれほど有効ではないどころか、質によっては逆効果さえあり得ます。


では何を提出すればよいのか

Web制作会社の求人に応募する際には何かしらの作品提出は必要でしょうし、そこに手ぶらで挑むことを私は勧めているのではありません。

ポートフォリオの代わりに「PV(閲覧数)を得る工夫を施した 自作のWebサイト」を提出しましょう。

これをご覧になっているWebデザイナー志望の方は、Webサイトの最も大切な役割はなんだと思いますか?
私は「訪問者に有益な情報を提供する」ことだと考えています。

作ったサイトが有益か否かは、PVがわかりやすく示してくれます。
そして、Web制作の腕が上がるのは「どうやったらたくさんのPVが得られるか」を意識し行動したときだけです。

残念ながら「ポートフォリオ」を見る人は面接先のほんの数名でしかなく、見てもらえるのは先方に提出した際の1回きりです。ことが済めば見る理由がなくなります。

ご自身のポートフォリオを見て「なんか迫力が無いな」などと感じたことがある人は多いはずです。
それは不特定多数の人に見てもらう目的が無いためです。人が来ないので活気が無いのは当然です。まるで人のいないシャッター商店街です。

せっかくなら、多くの人に見せる前提で作ったほうが何百倍も有意義です。PVという貴重なデータが得られるからです。

大学受験の模試を受けるように、今の実力を数値化しなければ良いWebサイトは作れません。PVは学力偏差値と同じです。

PV数を得る工夫を繰り返し実践していれば、おのずと自信もついてくるものです。

そして面接時には「私はWeb業界で働くために、基礎的な制作技術のほか、コピーライティングやUIやSEOなどを独学し、これだけPVが得られました」と堂々と自分をアピールすることができます。私が聞けばその場で採用したい旨を伝えることでしょう。

どんなWebサイトを自作するか

私は当時好きだった「阪神タイガース」をテーマにWebサイトを作りました。全部で200ページは超えていたと思います。

PVを得るために、

・どんなページが好まれるか
・ページ移動しやすいかどうか
・クリックされるバナーデザインはどんなか
・SEO的なキーワードはどうか
・検索流入以外にPVを得る方法はないか
・効率良い制作手順はないか

と、制作現場と全く同じ目線で自分のサイトを更新していました。とにかく作るのが楽しくて仕方なかったです。

数値を振り返りながら「反省・改善の循環」を作り出し、PVを眺めては一喜一憂の毎日です。

PV数は確か1日最高で5,000前後だったと思います。自慢できる額ではないですが月10,000-15,000円くらい広告収入もありましたし、ファンになってくれた閲覧者さんと会ったことも何度かあります。つまり、Webサイトとして機能していました。

そして、こうした積み重ねが実を結び、未経験ながら制作会社に採用され、そのとき設定した「プロ野球チームの公式サイトを作る」という目標も早々に達成することができたのだと思います。ちなみに作ったのは楽天イーグルス公式サイトです。

私は「好きこそものの上手なれ」という言葉が好きです。これをご覧になっている方も、ぜひ自分の趣味の分野でWebサイトを作ってみましょう。

公開した初日に、PVを得る難しさを実感し途方に暮れるはずです。しかし大丈夫です。方法はある程度確立されていますし、それに挑戦して少しずつでも乗り越えたとき、Web制作者として大きな自信が生まれます。ポートフォリオを作るだけでは得られない学びと喜びが山ほどあります。

どんな会社を選ぶか

これをご覧になっているWebデザイナー志望の方は「とにかく業界に入り込み、階段をのぼりたい」と思っている方が殆どだと思います。
そうでしたら「家から通いやすい、小さな制作会社」を選びましょう。

その理由というのも、私がまさに小さなWeb制作会社を経営しているため、下記の視点で人を選ぶことがあります。

・近くの人のほうが交通費が安く済む
・腕のよい経験者にふさわしい案件が少ない

というやや悲しい理由で「未経験を含む、経験の浅い人」を欲している小さな会社は多いと思います。(これも仮説です)

小さな会社でも、採用されれば即経験者に変身できますので、もし働いてみて物足りなさを感じたら、そこで技術を吸収し尽くして、次の段階へ移行しましょう。

私が若い頃にはそうましたし、雇用する立場になり縁ができたスタッフも同じように当社を踏み台にして、別の制作会社へ移ります。

私はこれを気にしないどころか、むしろ嬉しい気持ちになります。
なぜならこれが私の「経営者としての今の実力」と受け止めており、あわよくば、辞めたスタッフの人生にほんの少しでも好影響を与えられたかもしれない、と思っているからです。

そして、Web業界に限らず就職自体がそんなものなんだと思っています。キャリアアップに遠慮は不要です。

もちろん、水が合えばその会社で頑張れば良いのです。

応募の仕方

いわゆる転職サイトからの応募では、ライバルがたくさんいるため、なるべく避けたほうが無難です。

転職サイトから情報を得て、その会社の公式サイトから応募をしてみましょう。だいたいは求人ページがあるはずです。
別の入口からきた人だと、それだけで印象が変わりますし、応募資料もじっくり見てもらえる可能性が生まれます。

求人フォームがない場合は、info@ や、recruit@ など、それっぽいアドレスに資料添付でメールしてみるのも良いと思います。

もちろん正規の応募方法でないため、先方に負の印象を与えてしまう可能性もあるのですが、うまいこと言い訳を添えれば大丈夫です。意図をそのまま伝えても良いかもしれませんね。
ライバルを出し抜くためにはこのくらいの気概が必要です。

これらは当時私が考えていた就職攻略法ですが「PVのある自作サイト」があったので、小細工なしに真正面から応募してすんなり採用されました。2社受けてどちらもその場で内定を頂けました。今思えば経験者向けの選考も突破出来たかもしれません。
ですので、ポートフォリオは不要だと思います。

まとめ

若い時間は貴重です。「Web業界に転職する」という目標を早くに達成するには、効率的に時間を使わなくてはなりません。

周りと同じことをしていては、時間と労力を使ったわりに、得られるものが少ないことがほとんどです。工夫は多いほど良いです。

本記事が、Web業界への転職をさくっと決めるための参考になれば幸いです。

お読み頂きありがとうございました。

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