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『十二国記』は最近、集中して本を読めていない人にこそ薦めたい。

なぜなら、私がそうだったから。そして、一気にはまりドーッと読んで「本を読むの楽しい!」と思い出せたから。私は、あらすじを書いて紹介するのがとても苦手なので、本編の内容についてはあまり触れないで、どう読み進めたかをツラツラと書かせてもらうことにする。

●ここ数年、長編小説を読めていない私が、 
 十二国記を読み始めるまで。

読み始めるまでに1ヶ月かかった。シリーズ全部を読み終わるまで(正確にいうとまだ読み終えていないけど)には2ヶ月くらいしかかからなかった。夢中で読んだ。小中高くらいまでは小説を読むのが好きで、よく朝までベッドの中で読み漁っていた。社会人になってチラホラと読んではいるものの、シリーズものを、しかもファンタジー小説を読むということがめっきり減ってしまった。そんな私が、この冬に夢中になって一気に読み進めた。本を読みたいな、と思っていてもなかなか購入する決心がつかない。特に読み進められる自身がないという方にこそ、このシリーズをオススメしたい。

昨年の10月。私は梅田のジュンク堂で素敵なポスターを見た。「麒麟、還る」と大きく書かれた真ん中に、黒髪の少年のイラスト。そのイラストがあまりに素敵で私は本棚の前に立ち止まり、目を離せなくなった。それは、人気ファンタジー小説「十二国記」の新作のポスターだった。

私は、そのポスターを見て「読みたい」と思った。この男の子に何があったのかを知りたいと思った。それほど、そのポスターに心を惹かれた。並べられた最新作『白銀の墟 玄の月』の一巻の表紙のイラストがまさにそのポスターのものだった。同時に一巻?と不安がよぎった。何故なら社会人になって、正直そんなに活字を読んでいない。何冊も読もうと思って買っては、少し読んでちょっと入っていけなくて置きっ放しにしている本が何冊もある。そんな自分がこの作品を読み切れるか?色々見ているとその最新作は四巻まである。読める気がしない。

十二国記という作品は耳にしたことがあった。人気のシリーズだ。何冊も出ているはずだ。アニメにもなっている気がする。表紙のイラストから察するに、歴史ファンタジーか中華系の世界観だと想像した。きっとややこしい漢字が多いに違いない。読めるだろうか。多分、無理だ。

●購入するまでに一番不安になったこと

先に書いた通り、十二国記はすごい人気のシリーズ作品だ。きっかけが無かったからこれまで読んでいなかったが、人気シリーズという点も二の足を踏んだ理由だと思う。

シリーズものというのは得てして、最初から読んだ方が確実に面白い。勿論、途中の1冊だけを読んでも面白いものだってあるのは知っている。しかし、大体は最初から読んだ方がつながりや登場人物の人となりなどをしっかり楽しめるはずだ。そもそも、私が目を惹かれたポスターには、「麒麟、還る」と書かれていた。恐らくこの男の子が麒麟であろう。そして、還るというからには、元々いたところから何処かに行っていたに違いない。そして、「還る」という文字から察するにその行っていた、または行かされていた何処かから満を持して還ってきたのだこの新作では。ということは、私はこの男の子が最初何処にいたのかという物語と、何処かに行った物語を読まなければならない。長い。新作に辿り着くまでに、なんかたくさん読まなければならない気配しかしない。絶対に無理だ。

そもそも、最新作の側に並べられたシリーズがすでに多い。どれから読めば良いのか解らない。そして、「1」と書かれた帯が巻かれた作品の表紙には男の子がいない。この作品には出ていないのか。シリーズ的に読んでいくなら、私は「1」から読めば良いのか。でもその近くにある「0」の帯が巻かれたものは何だ。「0」って何だ。スターウォーズ的なあれか?遡ってスピンオフ的なあれか?それは結局いつ読めば良いんだ。パニックである。そもそも「1」の帯が巻かれた作品が既に上下巻である。どれだけ読めば最新作に辿り着くのか。

私はその日、どうしても購入する決心が着かず側に並べられていたジュンク堂の店員さんが作ったチラシを貰って店を後にした。

●読む!と決めたきっかけ

その後もしばらくは気になりながらも、本屋でチラチラと見るだけの日々が続いた。ジュンク堂で貰ったチラシでなんとなく読む順番も解った気がした。しかし、読み始める決意だけが固まらない。何せ最初の一歩である「月の影 影の海」が上下巻なのだ。この数年長い物語を読めていない私にはハードルが高い。

そうやってグズグズとし続けている間に、たまたまtwitterで私と同じような人のつぶやきを見た(貼ろうと思ったんですが、いかんせん11月くらいのツイートなので、見つけられませんでした)。

「ネズミが出るまで頑張れって言われたから、十二国記を読もうかな」

ちょっと言い回しが違うかもしれないが、大体こんなこと書かれていた。この人は私と同じように読もうかどうかを悩んでいるのだ。そして、お知り合いの方に、この言葉で薦められたのだ。親近感が沸く。

と、同時に上下巻だけどおそらくネズミってやつが出てくるまではしんどいのだな、と察する。そして、ネズミが出てきたらサクサク読めるのであろう。ネズミ?ネズミって何?疑問はいっぱいだが単純なことに、私はこのツイートを見てネズミが出てくるまで読んだらサクッと読めるのか。上下巻でも行けるかもしれない。なぜなら、どこまで頑張れば良いかが解ったから。ネズミさえ出てきたらもう大丈夫だということが解ったから。悩んでいても仕方がない、読もう!そう決めた。私はジュンク堂に行き、「月の影 影の海」を上下巻共に買った。そして遂に十二国記を読み始めたのだ。

●読み始めたら止まらない

ちなみに「月の影 影の海」には、私が読もうと決めたきっかけになった黒髪の男の子は出てこない。一切出てこない。何となく解ってはいたけど、本当に出てこない。それでもサクサクとどんどん読み進められた。面白かった。なんというか、上巻は主人公の陽子がひどい目にあう。ずっとひどい目にあっている。踏んだり蹴ったりどころか突き落とされるレベルで辛い。とにかく辛い。辛いまま上巻が終わり、下巻に入る。下巻に入ると、早々にネズミが出てきた。これで陽子はもう大丈夫だ!そう思ったがその先も中々大変だった(お話的にね)。しかし、その頃にはもう私はすっかり陽子の虜である。下巻に入った段階で、私はシリーズの続きを本屋で購入した。この先は、1冊読み終えては、次の本を読み進めつつ新しい1冊を購入し備える日々が続いた。私の気になっていた黒髪の男の子は2作目である「風の海 迷宮の岸」で出てきた。しかしその頃には私は、最初の主人公である陽子の虜であったため「何だよ陽子の話じゃないのか」とすら思っていた(そう思ったのも束の間で読み始めたらすぐその物語に夢中になっていたけれど)。

とにかく、出てくる登場人物にすっかり魅せられる。だからどんどん続きが読みたくなる。十二国記は冠する名前の通り「十二の国の物語」だ。話によって国が変わりその物語の主人公が変わって行く。その国の時代が読み進めていくにつれてどんどん繋がっていく。好きになった人たちがどんどん繋がっていく。好きな人が増えていく。それが嬉しい。あっちもこっちも気になるし、あっちもこっちも好きになって仕方がないのだ。

●私が読んだ順番

十二国記は、現在は新潮社で刊行されている。シリーズは10作ほどあり中には上下巻や最新作に至っては四巻で構成されている。長い旅だ。基本的には本の帯に記載されている順番通りに読めば問題はないが、私はジュンク堂で頂いたチラシの情報を元に自分が読み進められそうな順番を決めて読んだ。


ここに、私が読んだ順番を記しておこうと思う。どの順番から読んでも好きになるとは思うが、私は自分の読んだ順番が解りやすくて良かったなと感じた。

①⽉の影 影の海
 最後には陽子のファンになります。大丈夫。
②風の海 迷宮の岸
 新作の表紙の黒髪の男の子が出てきます。すぐ好きになります。
③東の海神 ⻄の滄海
 陽子を助けてくれた人が出てきます。好きになります。
④風の万里 黎明の空
 陽子の物語です。好きになります。陽子かっこいい。
⑤黄昏の岸 暁の天
 もうみんな好き。
⑥白銀の墟 玄の月
 「麒麟、還る」の重みがすごい。
⑦図南の翼
 元気な女の子が出てきます。気づいたら好きになってます。
⑧華胥の幽夢
 美しい短編です。悲しい物語もあります。
⑨魔性の⼦
 シリーズを読んでいなかったら、ただただ怖い。
 でも大丈夫。我々は麒麟のことが大好きだから。
⑩丕緒の⿃(今、読んでるところです)
 法や国の在り方について考えてしまいます。

ちょっとアホみたいな感想を添えていますが、本当にそうなってしまうと思うので、もう読んでください。詳しいストーリーは新潮社のHPをご覧ください。

⑨魔性の⼦は、十二国記のプロローグ的な物語で刊行自体も一番早いが、何も知らないで読んだらホラーの要素が強い。なので、ホラーが苦手な私は最後の方に回した。⑤黄昏の岸 暁の天の後に読んでいただければ、起っている事象の意味が解るのでオススメです。ホラーがお好きな方は最初にどうぞ。⑧華胥の幽夢と⑩丕緒の⿃は短編集だ。とにかく麒麟が気になるという、私と同じせっかちな皆様は、後回しでも大丈夫だと思う。先に読んでいてももちろん続く部分があるので大丈夫。

●ずっと十二国記が気になっていたという方は、読んでしまいましょう。

最初に懸念していた長編を読めないのではないかという考えは杞憂でした。一気に読んでしまいました。今、後回しにしていた「丕緒の⿃」を読み進めています。これを読み終えたらもう次に読むものがないという寂しさが心に沸いています。困ったもんだ。

正直、国の制度とかややこしい役職の名前とか難しい漢字とかは思っていた通りでした。難しい読みが頭に入ってこないこともたくさんありました。ルビがふってあるので、きちんと読めるんですが、3ページ先でこれなんだっけ?って思うことがちょいちょいありました。でも問題ありません。ガンガン読めます。読みが不安でも、漢字の形でなんとなく何を意味していたかが思い出せるので、ガンガン進めましょう。いえ、自分は読みを確認しながら、という方はちょこちょこ戻りながら「そうでした!そうでした!」と納得して読み進めましょう。好きな登場人物の名前はすぐに覚えてしまうのでいけます。問題ありません。

今年はまた短編集の新作が出る予定のようです。その前に、踏み込んでしまいましょう十二国記へ。楽しいです。熱中して物語の世界に入りたい方は十二国記、オススメです。

タイトル通り、最近集中して本を読めていないことを寂しく感じていた方にこそ、十二国記を読んで欲しい。ものすごく好きになると思います。私はすっかり新作が楽しみです。

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