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僕が見たアメリカ[1] ~これだから異国の生活は面白い~

藤井拓哉(英語講師)

中学3年の夏。ある土曜日の午後、父が突然僕の部屋にやってきた。日頃から冗談ばかり言っている父が珍しく真剣な顔をしている。
「おい、アメリカに行くことになったぞ」
冗談には聞こえない。受験勉強を必死こいてやっていた僕。
「マジで?じゃあ、受験勉強はもうしなくていいってこと?」
とポロッと本音が……父は激怒した。

確かにアメリカでは苦労した。
アメリカ人の英語は容赦なく、日本の中学校のリスニング教材の3.5倍ぐらいの速さだった。
主語の I や you すら聞き取れない。だから毎回聞き直す。おかげで ESL (English as a Second Language  英語を第二外国語として学ぶ生徒たちが英語を学ぶクラス)の中では、誰よりも Pardon? / Can you speak more slowly? の発音は上手だったと思う(ちなみに、僕の周りにいたネイティブは Pardon? は使わず、 Excuse me? / I’m sorry? / Say what? / Huh? などをよく使っていた)。

しかし、英語を学ぶのは楽しかった。
受験の場合「英語を勉強すればするほど、点数が上がる」というものだと思うが、僕がアメリカで経験したのは「英語を勉強すればするほど、友だちが増える」というものだった。
これが自分には合っていた。
何より、アメリカ人と話していて、自分(日本)の常識が全く通じず「なんじゃそりゃ!」と思うその感覚が面白かった。
ここでは、そんなお話をしていきたいと思う。

ついついビビっちゃう英会話


僕が出会った多くのアメリカ人は態度がストレートであった。
別にこちらが悪いことをしているわけでもないのに、I’m sorry.  と言いたくなってしまう。そして、圧がすごい!(汗) 例えば、こちらの言ったことが理解できない際、相手は

What? Say that again? (何? もう一回言って)

とよく言っていた。日本であれば「ごめん、もう一回言ってくれる」など「理解できなかったのは、あなたがいけないのでなく、私がいけない」といった雰囲気が言葉に現れたりするのだが、アメリカでは(もしくは英語という言語は)あまりない。確かに日本語でも「え?」や「何?」といったかなりカジュアルな表現もあるのだが、英語の場合は

Huh?

と、これが日本語の(ブチギレMAXの時に使われる)「はぁ?💢」とよく似ているため「え?キレてんの?😱」とよくビビったものだ。

このように、同じ表現でも、国が違うだけで全く違った意味を持つ。これは実に面白い! だからこそ、ただ文法や単語を覚えるのではなく、言語の深い意味や、その国の文化を知ることは重要なのだと思う。

藤井拓哉(ふじい たくや)
1984年生まれ。父親の仕事の都合で3歳~6歳までと、15歳~24歳までをアメリカのオハイオ州で過ごす。オハイオ州立大学、同大学院で教育学を学び、日本語の教員免許とTESOL(英語を母国語としない方のための英語教授法)を取得。帰国後は、宇都宮大学で英語講師を務め、数学、化学、生物学、物理学を英語で学ぶ「理数系英語」の講義を定期的に行い、2010年と2013年にベストレクチャー賞を受賞。現在は、筑波大学、筑波技術大学で英語講師を務める。

「日本における英語教育格差是正」を目標に「全て無料・登録不要」で学べる「基礎文法学習」「英検対策」「TOEIC対策」など多数の英語教材をホームページ上にて作成、公開中。

著書に『たくや式中学英語ノート』シリーズ全10巻(朝日学生新聞社)、『たくや式どんどん読める中学英語』シリーズ(朝日学生新聞社)、『MP3CD付き ガチトレ 英語スピーキング徹底トレーニング』シリーズ(ベレ出版)。TOEIC 955点、TOEFL 101点。

ホームページ:https://withyoufujii.com/
Twitter : @gachitore1


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