「ありがとう」の力で世界を平和に

ビープロダクションの作品は平和学習で使っていただくことも多いので、特に「平和」に関するイベントは必ずチェックしていて、先週は「平和って何?」をテーマにした株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長 田口さんとピープルポート株式会社代表取締役社長 青山さんによるトークイベントに参加してきました。


ひと言ひと言が追い風のように前向きに心を揺さぶる素敵な内容だったので、わたしなりにまとめながら内容を書き留めてみます(でも網羅的でもなく、正確でないかもしれないので、時間がゆるす方は下記の動画をご覧ください)


1. 誰かが悲しむのを、もう見たくない

「いきなりなのですが、平和という言葉をグーグル検索したらどんな画像が出てくると思いますか?」という青山さんの問いかけからイベントはスタート。


(「いいですね〜」と田口さんが笑顔で合いの手)


話を聞いている人たちがこたえを次々に書き込む。チャット欄には「子供の絵」「空」「平和記念公園」.....といろいろな言葉があらわれる。それから「こたえは後ほど」と一旦話題が変えられ、青山さんの生い立ちの話になった。


共働きの両親のもとで育ったという青山さんは、祖父母から "身近なひとが特攻隊で亡くなった話" や "友達が目の前で爆死した話" など、戦争体験談をよく聴かせてもらったのだという。そして「人が悲しむのを見るのはすごく嫌だった。だからお前の時代には戦争するなよ」と教わったそうだ。


2. 悲しみが続く世界で、わたし達にできること


さて「お前の時代」はきたわけだが、いまわたしたちは戦争をしていないだろうか?


いまの日本は、いわゆる国際紛争に "直接的には" 巻き込まれていないと言えるかもしれない。ただ、日本のそとをみわたせば今でも紛争や内戦はリアルタイムで起きていて、たくさんの人が苦しんでいる。


「だったらいま戦争で苦しんでいるひとのために世の中の仕組みを変えたい」


青山さんはこの想いを起点に、紛争や内戦があって母国から避難してきた、いわゆる難民のひとたちが働けるように事業を立ち上げた。それがZERO PC と呼ばれるものだ。

「難民の彼らを助けることが "直接的に" 紛争解決になるかというとそうではない。だけど、難民申請のために日本に来ているのは、いずれ国の将来を担う若者で。彼らが生活をちゃんと立て直すことができて、心に余裕を持って誰かの他の人のために生きられるようになったら、未来の平和構築につながる」

青山さんのなかで事業と平和はこう繋がっている。



3. 困っている人を助ける「ビジネス」


青山さんいわく、難民申請のために日本に来る人たちは、おもに3つの困難を抱えているという。

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・不安定な在留資格

・経済的貧困

・社会的孤立

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1つ目は不安定な在留資格。毎年1万人を超える人たちが難民申請にくるため、申請の結果を待つのにおよそ4−6年間かかる。また、結果を待つ間の在留資格は半年ごとに決められる。したがって"いつまで日本いられるかわからない" 不安定な状況が続くのである。さらに彼らは異国で暮らす準備をして来ているわけではなく日本語もわからないため、仕事を探し、生計を立てるのも困難だ(2つ目の経済的貧困)。さらに友人や知人もいないため社会から疎外された状況に陥ってしまう(3つ目の社会的孤立)。


この状況をどうにか変えることはできないのだろうか?


難民のひとたちにもできる仕事を作れないだろうか?


このように誰かにとっての「困っていること」から思考する姿勢はボーダレス・ジャパンが大切にしているスタイルなのだという。田口さんは「市場自体が大きくなっていれば、どこかで自分の取り分を得られるわけだから、一般のビジネスは成長市場に入っていく。だけど僕らは "マーケット" という視点からは入らない」という。そうではなく、社会の中でどのような問題が起きているか?そしてその原因は何なのか?を深掘り、その解決策に事業をリンクさせる。ビジネスは二の次であると強調した。


「難民のひとたちが抱える困難をどうにかできないか?」を起点に事業を考えた青山さんは、パソコンのリユース事業に行き着いたという。機械を蘇らせる修理の仕事であれば、日本語はいらない。だから難民のひとたちの雇用創出ができる。


4. 「お互い様」の関係をつくる


「日本語がいらないこと」以外にも、パソコンのリユースを選んだのには重要なワケがあるという。それは「環境問題の解決に貢献できる」からという理由だ。現在の日本では、パソコンを廃棄をする土地にも限りがあり、廃棄物の処理能力にも限界があるにも関わらず、毎年300万台という大量のパソコンが廃棄され続け、そして同時に新しいパソコンが作られている。


このような状況のなかで、難民と呼ばれるひとたちに「環境負荷の少ないパソコン」をつくる仕事を担ってもらったら、彼らが持続可能な社会に貢献しているという認識を生み出すことができる


難民のひとたちに「ありがとうと言える何かがあったら、彼らへの見方が変わるのではないか」これがパソコンのリユース事業の戦略を支える仮説であり、願いだ。彼らが環境にいいことをすることで、自分が暮らし、いずれ自分の子孫が生きる地球に何かいいことをしているという認識ができる。"ありがとう" という感情が湧く。こういう意識は「難民が日本や世界に受け入れられていくうえで重要なこと」だという(青山さん)。


5. 言葉を通じて考える、「平和」の本質


自由の反対は不自由。平等の反対は不平等。では平和の反対は何か?


イベントのなかで「平和の対義語は?」という質問がだされた。「混沌」「亀裂」「理不尽」「無関心」「争い」「暴力」「不自由」「日常がないこと」「強欲」「奪い合い」など、答えは多岐にわたった。青山さんは「平和はそのくらい広い意味を持つ。だからこそ平和が見えないんだと思う。人は争っているとき、明確な敵がいるとき、相手を倒そうとする。でも、じゃあ平和ってなんなのか?というと(中略)多様すぎて一つ括るものを作らないとその正体がわからない。だからハトのような象徴が必要だったのかもしれない。」とコメント。


6. 「日本が世界のリーダーになって欲しかった」


それからイベントでは田口さんに対して "日本人として平和に対してできることはありますか?"という質問がされた。田口さんの答えは、


「平和で世界に貢献すること」だった。


「日本の憲法については色々言われてはいるけれど、世界に稀にみる憲法であって、今の憲法だからできることもある」という。以前、シリアで内戦が起きて避難民がたくさん出たときに田口さんは「シリア難民のための会社を作った」のだという。シリア難民と一緒に活動してきた時に、田口さんはある人から 


ほんとはアメリカじゃなくて日本が世界のリーダーになって欲しかった。日本は "我が我が" ではないでしょ。"みんなにとって"ハッピーな世界を作るのが日本人のやり方でしょ。だから日本がパワーを持ってくれればよかったのに。」


と言われたことが印象に残っているのだという。そして「軍事力競争にお金を費やすのではなく、経済友好条約をたくさんつくること。経済的に友好な関係の国同士なら、助け合いも生まれる。こういうかたちの "ナイストライ" をする国になりたい」と語った。


7. 「人」のほかに、何か言葉が必要だろうか?


最後に、青山さんが事業の展望と今後の夢を語ってイベントは幕を閉じた。"難民申請中のステータスの人たちには、移動の自由がない。でもそういうひとたちのなかには、能力のある、素敵なひとたちがたくさんいる。だから僕は、世界中に法人を持って、彼らがビジネスパーソンとしてあちこち訪ねられるようにしたい"


そんな夢が込められた会社の名前は、"People Port"


直訳すると「人々の港」だ。これには特定の国籍や人種に属する人だけのものではなく、偏見や差別の伴った「〇〇人」というレッテル付きではなく、純粋に「ひとりの人間」として尊重するという意味が込められているという。


ひとりの個人として生きることができて、評価をされて、どこへでも自由に旅ができる。そういう風に人々が行き交うところを、世界中につくっていく。


ピープルポートという言葉には、そんな夢が描かれている。



#ボーダレスジャパン #ボーダレストークス



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