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【インタビュー】世界で実践 "解決志向アプローチ" を日本へ

紛争解決教育のこれからを考える、インタビューシリーズ。今回はソリューションランド代表の竹之内裕一さまにお話を伺いました(似顔絵を頂戴しました)。

竹之内様-背景白


ーーーまず紛争解決教育に携わられるようになった経緯は何でしょうか...?

私はカウンセリングを学ぶ中で、解決志向アプローチ(ソリューション・フォーカスト・アプローチ)に出会いました。


解決志向アプローチについて学び続ける一方で、カウンセリングのなかで解決志向アプローチを実践したり、広める活動をしたりしています。


世界で実践される 解決志向アプローチ


この解決志向アプローチ(SFA)を用いた“紛争解決”の取組は世界で様々実践されています。その一つが英国で実践されているサポートグループアプローチ で、ここでは小学生を主に対象に、“加害者”と“被害者”と“傍観者”を一つのグループとして、“被害者”/困っている生徒を支援する(解決後の状態に近づける)というとてもユニークな活動となっています。


このサポートグループアプローチは、1990年代中頃にSue Youngさんという方が、自分自身がいじめ事件に直面したことを機に生み出されたと言われています。このアプローチに関しては、下記のSue さんのインタビュー(一部抜粋)をご参照ください。


簡単に言うとサポートグループは特に小学校におけるいじめに関しての苦情の申 し立てに対して行う、解決志向に基づく方策(ストラテジー)です。 これは“解決の鍵”のとても良い例だと思います。なぜならそのシンプルであるがゆえに 幅広い状況への適用が可能だからです。 困難を抱えている生徒にはその時点で付き合うのが難しいのは誰か、その難しい場面で周囲にいたのは誰か、その友達は誰かを聞きます。 どんなことが起きたのかについては全く話を聞きません。その生徒には、事態が良い方向 へと動き出すことを約束し、挙げられた名前の生徒の中から何人かを選んでグループを結成し、そのグループがあなたを助けてくれるわよと話します。その生徒にはどんな些細なことでもいいので良くなったことに着目しておいて、1 週間後に話を聞くときに報告してほしいと伝えます。サポートグループは名前の挙がった、理想的には5人から8人の生徒で構成されます。グループとは問題を抱えた生徒とは別々に会い、対象となる生徒が学校で幸せになることを目標として支援するように求めます。その生徒がどうして幸せではないのかについての説明は一切しません。その面接を誰がリードするにせよ“いじめ”という 言葉は一切使わないこと、対象児童に起きている出来事に対するいかなる判断もこのグル ープには持ち込まないことが大事です。

出典:http://www.solutionland.com/interview/sue_young.pdf


また、ハワイでは、ローレンさんが、犯罪の “加害者” と“被害者” がそれぞれ新しい関係をどう構築していくかを支援する、修復的司法の活動にも取り入れています(『解決のための面接技法』第4版 インスー・キム・バーグ著 金剛出版 294P 参照)。


これは単に加害者を罰すれば終わりではなく、例えば、教室での“いじめ”や、“虐待”のあった家族など、その後また同じ場で一緒に時間をともにする場合に、とても有効なアプローチとなっています

さらにこれをフィンランドのベン・ファーマンさんが彼女とともに、謝罪と許しというテーマで発展させてもいます。


ここでは謝罪のための手紙を書くことで許しに近づく方法が紹介されています。


いじめを「禁止事項」ではなく「ゴール志向」で捉え直す


加えて、そもそも“紛争”が起きないことが一番であり、そのためには、例えば“いじめ”といった紛争(問題)がどんなもので、なぜ起きるのかの原因を探るのとは別に、では、“いじめ”のないクラスの状態(解決)とは何か? それをどうやって作っていくかに焦点を当てる活動もアメリカをはじめ世界各国で広がっています。これは、WOWW(Working On What Works)アプローチと呼ばれているもので、日本でも目白大学の黒沢幸子先生が日本の実情に合わせたアプローチ (『解決志向のクラスづくり 完全マニュアル―チーム学校、みんなで目指す最高のクラス!』 黒沢幸子著 ほんの森出版 参照)へと組み替えて作っておられます。

こういったSFAを基本としたアプローチも日本でさらに広がってくれることを願っています。


ーーーありがとうございます。紛争解決教育における授業の評価方法・学習効果の測定に関してはどのようにお考えですか?


私自身は実際には授業をしていませんが、評価や効果の測定は、生徒がそれを段階的に定義して、自分たちが今そのどの段階なのか生徒自らが評価・測定することがあっても良いのではないかと思います。そうすることで生徒が取組むモチベーションも上がり、成功の手柄を自分のものとすることができると思います。


ーーー確かに。先生に決められるのではなく自分で決める。自分で自分の成長のロードマップを書くこと自体も、普段とは違う思考が求められて刺激になりそうですね。最後に、紛争解決教育を行う上で大切だと思うことを教えてください。


紛争状態について説明する時間、例えば“いじめ”とは何かを説明したり、それを再現したりするのは、その副作用としてのリスクもあると思いますので、そうではなく、そもそも、紛争「解決」とは何か? それは例えば教室がどうなることなのか? の部分を考える時間もあると良いなと思います

“いじめ”が無いという目標は、目標として抽象的で(これはしてはいけないは理解できても、何をすればよいかが無いため)取り組みにくいのではないかと考えます。


ーーー確かに、人と争ったり、いじめたりしている時って、自分を守ることや自分が勝つこと、優位に立つことに必死になってしまいがち。本当は自分たちが何を求めているのか、何をしたいのかを、教育者から問うのは大切なことかもしれませんね。〜してはいけない、という命令ではなく、質問を通じて自分で考えさせる。新しい視点をご教示いただきありがとうございました。



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