どんなテーマの漫画が描かれていないのであろうか?
【SPY×FAMILY】が、スパイ×家族×殺し屋×コメディ の掛け合わせで出来ているように、どんなテーマの組み合わせのコミックが多いのか or どんな組み合わせが存在しないのか、調べてみた。
最近読まれている漫画の傾向
ここ数年で数多くの少年マンガがアニメ化され、それを女子も好んで観るようになった。少年ジャンプに掲載されたから少年マンガであると言い切っていた時代はとうに過ぎてしまった。
ただ、ジャンルとしての少年漫画、少女漫画は、現在も残り続けていて、それぞれ凄まじい勢いで量産されている。はたして、どのように棲み分けられているのだろうか。そして、最近の少年漫画、少女漫画にそれぞれ特有な傾向はどのようなものだろうか?
数千冊の漫画の内容をこつこつ調べるのも悪くはないが、今回は漫画につけられているタグやキーワードが手掛かりにならないかと考えてみた。
幸いにも?電子コミック大手の「まんが王国」で紹介されているマンガには、一冊一冊にキーワードが割り振られている。たとえば、【SPY×FAMILY】だと、スパイ、家族、殺し屋、コメディというように、そのマンガの内容やテーマを示すいくつかのキーワード(単語)が掲載されているようだ。
このキーワードを使って、ジャンル分けされた少年漫画と少女漫画のテーマの違いを調べてみようと思い立った。
まずは、数千冊をサンプリングして「どんなキーワードが多いのか?」を調べたが、おなじみのキーワードランキングが分かるぐらいだった。少年は、アクション…、少女は、恋愛…といったものだ。
そこで、もう少し解像度をあげて「どんなキーワードの組み合わせが多いのか?」を調べてみることにした。
調べ方は単純に次のようにした。
ここにマンガが2冊あり、
マンガ1のキーワードがスパイ,家族
マンガ2のキーワードが冒険,家族,スパイ
であったとする。
キーワードの組み合わせを調べると、
スパイ,家族が2冊に共通していて
冒険,家族がマンガ2だけ
スパイ,冒険もマンガ2だけ
となっている。
この2冊のマンガの中では、スパイ,家族が 2回で、一番多かった。
これをひたすら全てのマンガについて行ってみた。
少女漫画の場合
まず、少女漫画ジャンルの人気上位のマンガについてキーワードの組み合わせをカウントし、図示してみると次のようになった。
数が多い組み合わせが左上に来るようにして、組み合わせの数の多いものほど赤くゼロに近づくほど青いグラデーションにし、全く存在しなかった場合真っ青にした。
少女漫画におけるテーマのレッドオーシャンとブルーオーシャンが、次のように広がっていた。一見、ほとんどの領域に青海原が広がっているように見えるが、組み合わせがまったくないエリア(真っ青のドット)が大部分を占めているわけではなかった。漫画の想像力は、非常にまれなテーマの組み合わせにも、しっかりと根をはっているようだ。
この図を眺めて、ブルーオーシャンとなっているテーマの組み合わせの中から面白そうなのを発見して新作漫画のアイデアを練るのもよいかもしれない、と思ってしまった。
この図は、文字が小さいのでキーワード上位30のところを拡大。
「くらし・生活」と「日常」や「ギャグ・コメディ」と「コメディ」など、類似したキーワードは、統合した。
少年漫画の場合
キーワードランキング上位でいえば、
少女漫画は、日常、恋愛、ヒューマンドラマ
少年漫画は、アクション、コメディ、SF
となっている。
毎日のように漫画は量産されてはいるものの、まだあまり描かれていないテーマが無数にあることが分かる。
たとえば、少年漫画だと、アクション×恋愛、アクション×ほのぼの・癒し
少女漫画は、日常×貴族・大富豪、ロマンス×育児、ロマンス×社会問題
といった組み合わせが、比較的空いている。
少年漫画のレッゾゾーン圏外のエリア( 11位から 40位)の濃淡を強調表示してみると、次のようになった。この中に描かれるのを待っている未知のエリアが潜んでいるかもしれない。
少年少女漫画のテーマの違い
少年漫画の頻出ワードの順位と少女漫画の頻出ワードの順位を線でつないで対応づけてみた。アクションなど線でつないでいないワードは、少女漫画の上位50位から外れたために表示していない。
これを眺めると少年漫画に特有なのは、圧倒的にアクションとバトル。スポーツ、冒険、ゲームも特有だ。一方、日常、学園、コメディが男女共通して上位を占めており、少女漫画1位の恋愛は、少年漫画にも13位に入っている。少女漫画は、純愛、年の差がわりと上位にいる。三角関係、先輩・後輩が続き、結婚、愛憎劇など少年誌の上位にはないワードがランクインした。それぞれ対立する関心事がリストアップされていて興味深い。
キーワード間の結びつきを見てみる
ここから以降は、少年漫画のみについて調べてみた。
ここまでの図はキーワードの組み合わせの数を調べて行列で表現したものだが、次にキーワードを丸で、キーワードの組み合わせの総数を丸と丸をつなぐ線で表現してみた。組み合わせの数が多いほど太く濃い色の線になる。
少年漫画のキーワードのグループを色分けしてみる
次にキーワードのつながりから7つのグループを見つけて表示してみた。
それぞれのグループは、ある計算で自動的に発見されたものだが、なかなか示唆的なところもあったので掲載した。上から順にキーワードのつながりの合計数が多い順に並べた。また、図が煩雑になるのを避けるためつながりの薄いキーワードは省略した。少女漫画のキーワードグループについては、チャンスがあったら作成してみたい。
図の活用法?
各グループの図を見ると、描かれたテーマ間の関係の強さが読み取れる。
馴染みのあるテーマが連結していることが分かる。
それでは、今回のテーマである「どんな漫画が描かれていないのか」を読み取るにはどうしたらよいだろうか?
各グループの間には薄い関係しかないので、異なったグループからキーワードを拾って組み合わせていくとよいかもしれない。3以上のグループを使えば、さらに空想の領域は広がっていく。
そうは言いつつも、受け入れがたい組み合わせだから描かれないのだ、という当たり前の事実にぶつかってしまい空想すら難しいケースがほとんど。そこを乗り越えてアイデア出しができればいいのであるが。
一方で、初めの方に取り上げた行列図のブルーオーシャンを眺めると、ところどころに薄い色が点在していることに気がつく。その離れ小島のような場所に興味深い漫画が存在しているかもしれない。
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