新型コロナウイルスワクチンの特許は無償開放すべきか?

新型コロナウイルスワクチンに関する特許を一時放棄すべき、ということを米国のバイデン大統領が言っているようです。欧州はこれについてどうするか、議論するつもりだそうです。ドイツとフランスは無償開放に反対の立場のようです。ドイツはファイザーと共同開発したベンチャー企業のビオンテクがあることも影響していると思われます。

米国は、無償開放により、ファイザーのmRNAワクチンがより広まる、ことが目的のようです。しかし、欧州では、特許放棄は魔法の杖ではない、と言っています。

確かにワクチン接種が進まないのが、特許があるために製造できないなどの理由で足りず、命に関わる危機であれば、少なくとも他の生産能力のある企業に強制実施権を設定して、製造させることはあり得ると思います。この場合は通常はそれなりの使用料を支払うのが一般的でしょう。この制度は日本にもあります。

例えば、かつてのスペイン風邪のようにヨーロッパの人口の半分が死亡するような危機で、それが特許のために、製造量が不足するのであれば、その特許について、他の会社でも実施できるようにして、ワクチンを製造し供給させる必要があるかも知れません。

しかし、今、ワクチンが行き渡らないのは、果たして特許の問題か?という面があります。仮に特許を無償開放したとしても、アジュバントや、mRNAワクチンの製造方法にノウハウがあれば、実際には製造ができません。

それに、ワクチンの接種が進まないのは、ワクチンを拒否する人がいて、ワクチンにはマイクロチップが入っていて、支配される、という陰謀論を唱える人もかなりいます。

つまり、ワクチン接種が進まないのが、特許以外の理由であれば、特許を開放しても意味がありません。

それに加えて、今回のワクチンを開発した企業は、ベンチャー企業も関わっています。モデルナやビオンテクなどベンチャー企業にとっては、今回のワクチンで利益をあげないと経営が厳しいと思います。数百億円規模で臨床試験に投資しているはずですから。

ですから、特許を開放(一時放棄)するとしても、無償ではなく、通常実施権を設定し、そのライセンス料を低めに設定することで解決するのがよいと思います。それであれば、ワクチンも普及し、しかも、ベンチャー企業も開発費を回収でき、次の新薬開発にも投資できるでしょうから。

やはり、発明者、開発者のやる気を無くしたり、ベンチャー企業を経営危機に追い込むような無償開放はやるべきではない、と個人的には思います。


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